ライバルが照らすアイドルたちの新たな魅力──携帯ゲーム機ならではの“燃えるアイマス進化形”:「アイドルマスターSP」レビュー(1/3 ページ)
アーケード、Xbox 360で好評を博した「アイドルマスター」が、満を持してPSPで登場した。ライバルとの出会いが紡ぎだす新たなストーリー、アーケード以来の蓄積によって洗練されたシステムとグラフィック。これは単なる移植ではない、アイドルマスターのひとつの到達点だ。
3タイトルが同時リリース
2月19日、PSP用ソフト「アイドルマスターSP」が、バンダイナムコゲームスより「パーフェクトサン」「ミッシングムーン」「ワンダリングスター」の3バージョンで同時リリースされた。携帯ゲーム機の容量的制約とゲームとしての充実度を秤にかけて、では3つに分けましょうという決断は大胆というしかない。今回は3作全ルートをプレイした上でのレビューを(ネタばれは控えめで)お届けしよう。
上記の通り、3バージョンごとに登場するキャラクターが違っている。ゲームとしては単体でも遊ぶことができるが、アイドルマスターSPはストーリー性がかなり強化されているので、ひとつ買ってみて気に入った人は、安心して3本そろえるといいだろう。どれを買ったらいいか分からない人は、公式サイトの“アイドル相性診断”を試してみてもいいかもしれない。
初心者向けはどれか? と問われれば、比較的性格が素直な女の子がそろい、ストーリーも王道色が強いパーフェクトサンが、一番オススメではある。筆者の場合はアーケード版で“髪が長くてかわいい子がいる”というレベルで選んだ如月千早が性格的にはなかなかの難物で、初回は見るも無残なプロデュース活動に終わった。だが、その経験が忘れがたいものになり、未だ一番好きなアイドルは千早だったりするので、まずはパッケージを見て、一番ティンときたものを買ってみると、それが案外運命の出会いであったりするかもしれない。少なくとも、いずれ劣らぬ密度のストーリーと楽しさを提供してくれるのは間違いない。
アイドルマスターSPはアーケード版とXbox 360版のハイブリット
さて、ここからは少し濃い目に、アイドルマスターSPをレビューして行こう。「アイドルマスター」は2005年7月末にアーケード向けの大型筐体として正式稼動を開始。その後、2007年1月に家庭用に舞台を移してXbox 360版アイドルマスターが発売され、2008年2月にはライブシミュレーターに特化したXbox 360用ソフト「アイドルマスター ライブフォーユー!」が発売。そして2009年2月、アイドルマスターSPが満を持して登場、という流れだ。
アーケード版の初代アイドルマスターに、Xbox 360向けの新曲と、新キャラクター・星井美希などの要素を追加したのが、Xbox 360版アイドルマスターだ。Xbox 360版は単なるベタ移植ではなく、グラフィック面での圧倒的な向上や、新キャラクターの星井美希に関しては、とある要素を満たすと入れる、ストーリー性の強い隠しルートが用意されているなど、かなり力の入ったものだった。だが、個人的に思うアーケード版とXbox 360版の大きな違いは、対戦ゲームとしての設計思想の違いだ。
アイドルマスターは、そのキャラクターのかわいらしさに油断しがちだが、その実、アーケード版のオーディションはかなりシビアな「対戦」の場だ。週末の夜などプレイヤーが増える時間帯、ひとたび合格枠より多いプレイヤーがオーディションに参加すると、そのオーディションは戦場と化す。アイドルたちが可憐に歌い踊る水面下では、合格ボーダーを読み、手のうちを探りあう高度な頭脳戦が繰り広げられていたのだ。何せ、稼動当初は3プレイ500円。途中引退せず完走するには62プレイが必要なアーケードゲームで、場合によっては“負けた時点で、トップアイドルへの道が断たれる”ようなオーディションも存在するのだから、必死にもなる。
一方、Xbox 360版アイドルマスターが目指したのは、“誰でも楽しめるアイドルマスター”だった。オンライン対戦という基本は変わらないものの、セーブ/ロードが行える家庭用ゲーム機で、アーケード版のようなシビアさの追求は難しい。アーケード版では期間中に定められた条件を満たせなければ、その時点で強制引退だったが、Xbox 360版は1年間の継続プロデュースが可能で、活動内容の組立なども非常に制約がゆるめられた。“アーケード版のシビアさがいい!”という人と、“アーケード版は難しかったけど、Xbox 360版なら好きなアイドルの成長とライブをゆっくり見られる”という意見はどちらもあり、住み分けができていたと言えるだろう。
そして今回登場したアイドルマスターSPだ。ひと通りプレイした上でのアイドルマスターSPの立ち位置を説明するなら、“システム面はアーケード版を基本にシビアさを残しつつ、初心者でも楽しめるようにバランス調整を行い、支援要素を強化。グラフィック面はXbox 360での蓄積でレベルアップしており、Xbox 360の美希ルート的なストーリーの幹を全キャラクターに用意。楽曲に関してはアーケード版・Xbox 360版に楽曲の全てにプラスして新曲を用意。ユーザーの要望の多かった点を改善”という感じになる。
列挙すると、なんだかすごそうだ。事実、すごいのだ。公平を期すために書くなら、ライブの映像美という点ではさずがに据え置き機のXbox 360にはかなわないし、アイドルの人生を背負ったプレイ中のヒリツキ具合ではアーケード版が上だ。しかし、携帯ゲーム機でひとりで、あるいは友達と対戦して遊ぶゲームとして見た場合、アイドルマスターSPはストーリー、ゲーム性を総合して“過去最高のアイドルマスター”だと太鼓判を押したい。
アイドルマスターSPの肝。“ストーリープロデュース”
アイドルマスターSPには3つの主なモードがある。Xbox 360版に近い1年間のプロデュースが楽しめる「フリープロデュース」、アドホック通信での交流や対戦が楽しめる「事務所モード」、そしてライバル961プロとの絡みを軸にしたストーリーが展開される「ストーリープロデュース」だ。アイドルマスターSPのメインと言っていいのが、最後のストーリープロデュース。担当するアイドルと二人三脚で「アイドルアルティメイト(以下、IU)」優勝を目指すモードで、ゲーム中にはライバル・961プロの我那覇響、四条貴音、星井美希が登場する。


ストーリーモードの進展に応じて、961プロの面々との遭遇シーンが発生する。彼女たちとの会話や、問題を解決していくことで、プロデューサーとの関係も変化していく。時には、ほかのソフトに参戦する961アイドルが一緒に姿を見せることも大きな才能と魅力を持った彼女たちと、その彼女たちを言葉巧みに操り、手段を選ばず芸能界の覇者を目指す961プロ社長・黒井社長が、さまざまな形で物語に絡んでくるのだ。このストーリープロデュースが、とんでもなく熱い! これまでのアイドルマスターでは、基本的にアイドルとプロデューサーの間に物語が集約されており、決まったストーリーというものも存在しなかった。さまざまなエピソードが独立して存在し、それぞれのプロデューサーがエピソードを拾い集め、脳内でつなぎながらエンディングを迎えることで、そのプロデューサーだけの人生ができあがる。そこにドラマCDなどの周辺展開、プロデューサーの脳内補完が加わることで、初めて物語が完成する柔軟性がこれまでのアイドルマスターの特色だったと言えるだろう。
しかし、アイドルマスターSPのストーリープロデュースでは、IU優勝という目標、IU予選という固定された関門、そして何より追いかけ、乗り越える対象としての961プロ=ライバルを設定することで、ストーリーに明確な柱と方向性が与えられている。今までは漠然としていた“アイドルたちが抱える悩みや壁”が、強大なライバルたちという形を得ることで、物語はにわかに熱さを増す。ライバルとの出会い、戦い、成長、反目、和解……ストーリープロデュースは、まさにアイドルマスターに少年誌コミック的な“熱”を取り入れた存在なのだ。
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