レビュー
» 2009年03月26日 00時00分 公開

「アイドルマスターSP」レビュー:ライバルが照らすアイドルたちの新たな魅力──携帯ゲーム機ならではの“燃えるアイマス進化形” (1/3)

アーケード、Xbox 360で好評を博した「アイドルマスター」が、満を持してPSPで登場した。ライバルとの出会いが紡ぎだす新たなストーリー、アーケード以来の蓄積によって洗練されたシステムとグラフィック。これは単なる移植ではない、アイドルマスターのひとつの到達点だ。

[中里キリ,ITmedia]

3タイトルが同時リリース

 2月19日、PSP用ソフト「アイドルマスターSP」が、バンダイナムコゲームスより「パーフェクトサン」「ミッシングムーン」「ワンダリングスター」の3バージョンで同時リリースされた。携帯ゲーム機の容量的制約とゲームとしての充実度を秤にかけて、では3つに分けましょうという決断は大胆というしかない。今回は3作全ルートをプレイした上でのレビューを(ネタばれは控えめで)お届けしよう。

photo パーフェクトサンではプレイヤーが操作する765プロに天海春香、菊地真、高槻やよい、ライバルの961プロに我那覇響が登場する。少年漫画的、王道のライバルストーリーが描かれる
photo ワンダリングスターでは765プロに水瀬伊織、萩原雪歩、双海亜美/真美、961プロに四条貴音がそれぞれ登場する。孤高でどこか異質な貴音との心の交わりが丹念に描かれる
photo ミッシングムーンでは765プロに如月千早、三浦あずさ、秋月律子、961プロに星井美希がそれぞれ登場する。765プロを飛び出した美希がライバルとして立ちふさがる、歴史のIFの物語

 上記の通り、3バージョンごとに登場するキャラクターが違っている。ゲームとしては単体でも遊ぶことができるが、アイドルマスターSPはストーリー性がかなり強化されているので、ひとつ買ってみて気に入った人は、安心して3本そろえるといいだろう。どれを買ったらいいか分からない人は、公式サイトの“アイドル相性診断”を試してみてもいいかもしれない。

 初心者向けはどれか? と問われれば、比較的性格が素直な女の子がそろい、ストーリーも王道色が強いパーフェクトサンが、一番オススメではある。筆者の場合はアーケード版で“髪が長くてかわいい子がいる”というレベルで選んだ如月千早が性格的にはなかなかの難物で、初回は見るも無残なプロデュース活動に終わった。だが、その経験が忘れがたいものになり、未だ一番好きなアイドルは千早だったりするので、まずはパッケージを見て、一番ティンときたものを買ってみると、それが案外運命の出会いであったりするかもしれない。少なくとも、いずれ劣らぬ密度のストーリーと楽しさを提供してくれるのは間違いない。

アイドルマスターSPはアーケード版とXbox 360版のハイブリット

 さて、ここからは少し濃い目に、アイドルマスターSPをレビューして行こう。「アイドルマスター」は2005年7月末にアーケード向けの大型筐体として正式稼動を開始。その後、2007年1月に家庭用に舞台を移してXbox 360版アイドルマスターが発売され、2008年2月にはライブシミュレーターに特化したXbox 360用ソフト「アイドルマスター ライブフォーユー!」が発売。そして2009年2月、アイドルマスターSPが満を持して登場、という流れだ。

 アーケード版の初代アイドルマスターに、Xbox 360向けの新曲と、新キャラクター・星井美希などの要素を追加したのが、Xbox 360版アイドルマスターだ。Xbox 360版は単なるベタ移植ではなく、グラフィック面での圧倒的な向上や、新キャラクターの星井美希に関しては、とある要素を満たすと入れる、ストーリー性の強い隠しルートが用意されているなど、かなり力の入ったものだった。だが、個人的に思うアーケード版とXbox 360版の大きな違いは、対戦ゲームとしての設計思想の違いだ。

 アイドルマスターは、そのキャラクターのかわいらしさに油断しがちだが、その実、アーケード版のオーディションはかなりシビアな「対戦」の場だ。週末の夜などプレイヤーが増える時間帯、ひとたび合格枠より多いプレイヤーがオーディションに参加すると、そのオーディションは戦場と化す。アイドルたちが可憐に歌い踊る水面下では、合格ボーダーを読み、手のうちを探りあう高度な頭脳戦が繰り広げられていたのだ。何せ、稼動当初は3プレイ500円。途中引退せず完走するには62プレイが必要なアーケードゲームで、場合によっては“負けた時点で、トップアイドルへの道が断たれる”ようなオーディションも存在するのだから、必死にもなる。

 一方、Xbox 360版アイドルマスターが目指したのは、“誰でも楽しめるアイドルマスター”だった。オンライン対戦という基本は変わらないものの、セーブ/ロードが行える家庭用ゲーム機で、アーケード版のようなシビアさの追求は難しい。アーケード版では期間中に定められた条件を満たせなければ、その時点で強制引退だったが、Xbox 360版は1年間の継続プロデュースが可能で、活動内容の組立なども非常に制約がゆるめられた。“アーケード版のシビアさがいい!”という人と、“アーケード版は難しかったけど、Xbox 360版なら好きなアイドルの成長とライブをゆっくり見られる”という意見はどちらもあり、住み分けができていたと言えるだろう。

 そして今回登場したアイドルマスターSPだ。ひと通りプレイした上でのアイドルマスターSPの立ち位置を説明するなら、“システム面はアーケード版を基本にシビアさを残しつつ、初心者でも楽しめるようにバランス調整を行い、支援要素を強化。グラフィック面はXbox 360での蓄積でレベルアップしており、Xbox 360の美希ルート的なストーリーの幹を全キャラクターに用意。楽曲に関してはアーケード版・Xbox 360版に楽曲の全てにプラスして新曲を用意。ユーザーの要望の多かった点を改善”という感じになる。

 列挙すると、なんだかすごそうだ。事実、すごいのだ。公平を期すために書くなら、ライブの映像美という点ではさずがに据え置き機のXbox 360にはかなわないし、アイドルの人生を背負ったプレイ中のヒリツキ具合ではアーケード版が上だ。しかし、携帯ゲーム機でひとりで、あるいは友達と対戦して遊ぶゲームとして見た場合、アイドルマスターSPはストーリー、ゲーム性を総合して“過去最高のアイドルマスター”だと太鼓判を押したい。

アイドルマスターSPの肝。“ストーリープロデュース”

 アイドルマスターSPには3つの主なモードがある。Xbox 360版に近い1年間のプロデュースが楽しめる「フリープロデュース」、アドホック通信での交流や対戦が楽しめる「事務所モード」、そしてライバル961プロとの絡みを軸にしたストーリーが展開される「ストーリープロデュース」だ。アイドルマスターSPのメインと言っていいのが、最後のストーリープロデュース。担当するアイドルと二人三脚で「アイドルアルティメイト(以下、IU)」優勝を目指すモードで、ゲーム中にはライバル・961プロの我那覇響、四条貴音、星井美希が登場する。

photophotophoto ストーリーモードの進展に応じて、961プロの面々との遭遇シーンが発生する。彼女たちとの会話や、問題を解決していくことで、プロデューサーとの関係も変化していく。時には、ほかのソフトに参戦する961アイドルが一緒に姿を見せることも

 大きな才能と魅力を持った彼女たちと、その彼女たちを言葉巧みに操り、手段を選ばず芸能界の覇者を目指す961プロ社長・黒井社長が、さまざまな形で物語に絡んでくるのだ。このストーリープロデュースが、とんでもなく熱い! これまでのアイドルマスターでは、基本的にアイドルとプロデューサーの間に物語が集約されており、決まったストーリーというものも存在しなかった。さまざまなエピソードが独立して存在し、それぞれのプロデューサーがエピソードを拾い集め、脳内でつなぎながらエンディングを迎えることで、そのプロデューサーだけの人生ができあがる。そこにドラマCDなどの周辺展開、プロデューサーの脳内補完が加わることで、初めて物語が完成する柔軟性がこれまでのアイドルマスターの特色だったと言えるだろう。

 しかし、アイドルマスターSPのストーリープロデュースでは、IU優勝という目標、IU予選という固定された関門、そして何より追いかけ、乗り越える対象としての961プロ=ライバルを設定することで、ストーリーに明確な柱と方向性が与えられている。今までは漠然としていた“アイドルたちが抱える悩みや壁”が、強大なライバルたちという形を得ることで、物語はにわかに熱さを増す。ライバルとの出会い、戦い、成長、反目、和解……ストーリープロデュースは、まさにアイドルマスターに少年誌コミック的な“熱”を取り入れた存在なのだ。

(C)窪岡俊之 (C)2003-2009 NBGI
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