日本のアニメクリエイターが主導する7つの「Halo」――「Halo Legends」インタビュー

クリエイターの才能に全面的信頼を寄せた「Halo」の新たな一歩がそこにある。

» 2009年09月27日 21時39分 公開
[加藤亘,ITmedia]

 「Halo Legends」は、マイクロソフトの「Halo」シリーズを軸に展開される日米合作のオリジナル・ビデオ・アニメーション作品群の名称。bonesやプロダクションI.G、STUDIO4℃、東映アニメーションなど日本を代表するさまざまなアニメスタジオが、それぞれの解釈で「Halo」のショートアニメを制作し、公開するというもの。2009年秋にXbox LIVEの新しいチャンネルとしてオープンする「Halo Waypoint」にてプレビュー映像を配信される予定となっている。

 今回、作品公開に先がけて「Halo」フランチャイズチームフランチャイズ開発ディレクターのフランク・オコーナー氏をはじめ、本作のプロデューサーを務めるJ-Spec Picturesのジョセフ・チョウ氏、そしてクリエイティブディレクターを務める荒牧伸志氏、さらにボンズから代表取締役の南雅彦氏、村木靖氏、京田知己氏にインタビューすることができた。と、その前に概要説明を兼ねて、ボンズが製作した「Prototype」を見させてもらうことに。

 「Prototype」は、とある海兵隊員の物語が描かれる。上層部の命令によりプロトタイプのパワードスーツの破壊のため、とある遠方の惑星へと派遣される。しかしその惑星はコヴナントの襲撃を受けており、民間人に多数の死者が出ていた。彼は命令を無視して破壊するべきパワード・スーツを着用し、それでコヴナントに立ち向かう――。

 パワード・スーツにプロトタイプがあったという設定は、ゲームでは存在していなかった。そうした世界観の広がりこそが「Halo Legends」プロジェクトの醍醐味であろう。「Prototype」だけでなく7つの作品すべてが「Halo」をさまざまな角度から歩み寄り、切り取ってみせる。オコーナー氏は、小説やコミックなどさまざまなフランチャイズを果たしている「Halo」を映像化するにあたり、特に「クリエイター達の才能をいかんなく発揮してもらう」ことを大事にしたと語る。

「それぞれのスタジオを選んだ基準というか理由は、さまざまな表現をしてきた『Halo』が、最高のクリエイターを迎えて製作されることにあります。各スタジオの特徴を考慮して、いくつか用意してあったストーリー案に適合するスタジオを選びました。その際、クリエイターの意思を最大限尊重しました。たくさんのストーリーアイディアを各スタジオのクリエイターと相談しながら、そのやり取りを経て7本の物語が誕生しました。元々、我々スタッフにアニメのファンが多く、各スタジオをリスペクトしていました。ですから彼らと仕事をすることは楽しみでした」(オコーナー氏)

 それを裏付けるようにボンズへのオファーには、かなりの自由度があったと村木氏。そもそもプロトタイプという設定がなかっただけに、やりたいことを詰め込んだものになったそうだ。村木氏はこの話が舞い込んだ時、端的に言葉にすると「ドンパチができる」と思ったのだとか。ゲームそのものがシューティングなので、アニメでもそういうものが欲しいという意向もあったとのこと。

 当初、「Prototype」はセリフを通信だけで成り立たせようとか、さまざまな試みがなされたが、今の形に落ち着いたのだとか。最終的な決定稿を見たオコーナー氏は、「こうきたか」とほくそ笑んだそうだ。「村木氏や京田氏の提出されたアイディアを受け、それを世界観にどうやってはめこむかを考えるキャッチボールをしてきました。積極的に問題解決をして、議論し、世界観を詰めていく作業が続きました」とオコーナー氏が語るように、その出来には満足しているし、想像していた以上のクオリティになっている。オコーナー氏は何十回と見ているが常に新しいものを発見しているのだそうだ。

 では、「Prototype」のように、ゲームそのものに反映されることはないのだろうか? その点についてもオコーナー氏は言及できないと前置きしながらも、実際ゲームに反映したらどうなるかを試みたいとのこと。これは期待できるかもしれない。

 なお、東映アニメーションのようにそもそもの「Halo」の世界観を度外視したコメディを重視した作品もある。これに対しては、プロジェクトが固まる中、ユーモアやコメディを入れたいというフランチャイズチームの意向もあったとか。軽いタッチのもので、最初はデフォルメ化なども視野に入れていたそうだ。過去のアニメ作品でもコメディの中にシリアスを織り込んだものも多い。そんな作品になればいいという思いもあったとオコーナー氏。

 もちろん、設定上できないこともあった。マスターチーフが殺さたり結婚するなどは世界観を構築する上で、認められないものもあった。ボンズの面々も「halo」というタイトルに参加する面白さを強調していた。事実、村木サーカスともいうべき戦闘シーンは必見だ。ところが、ゲームを実際遊んだか聞くと、村木さんはしらっとやっていないと答えた。ゲームそのものに引きずられのもなんなので、世界観を共有するだけにしていたとか。

 オコーナー氏は、日本のクリエイターとの刺激的な仕事に「最初からエキサイティングなプロジェクトだったので、進行していくほどいいコラボだった。次の機会があるかも」と、鼻息も荒い。笑いながらだが「来年もう1本いきます!」とリップサービスも。ただし、かなりハードなミッションだったので、「休む必要があるので、十分休んでから」というオチも。早く休んでください。

「Origins」
STUDIO4℃による作品で、フォアランナーの誕生から対コヴナント戦争の終結まで一千年の歴史を描く
「Babysitter」
同じくSTUDIO4℃による作品。スパルタン部隊の兵士とODST隊員による対立を描くエピソードで、時間軸は「Halo: Combat Evolved」の1年前
「Odd One Out」
東映アニメーションによる作品。低年齢向けに制作されたコメディ色の強いもので、世界観の設定などはオフィシャルのものを引き継がない

「Homecoming」
プロダクションI.Gによる作品ん。とある女性スパルタンのエピソード
「Duel」
こちらもプロダクションI.Gが担当する作品。コヴナントに加わる前のサンヘイリ族の物語
「The Package」
カシオ・エンターテイメントによる作品で、フルCGアニメーション。スパルタン部隊の兵士達が主人公

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/16/news082.jpg 「なんだろ」 大谷翔平の背中に“違和感”覚える人続出 → 明かされた“納得の正体”に「そういう事だったんか」
  2. /nl/articles/2503/16/news031.jpg 「楽園???」 サイゼリヤで大豪遊 → “会計1人2000円以下”で収まった食事内容に思わず仰天 「庶民の味方」「ほぼ無料」
  3. /nl/articles/2503/14/news019.jpg ペットのカエルを土に埋め、約半年間放置→掘り返してみたら…… 「すげぇ」予想外の結末に「ほんと不思議」
  4. /nl/articles/2503/16/news052.jpg 「もっと早く知りたかった」 ユニクロ“3990円パンツ”が売り切れ続出の大反響 「一生これで良い」「最高の着心地」
  5. /nl/articles/2503/16/news080.jpg 夫は箱根駅伝、妻は大学女子駅伝優勝の“最強ランナー夫婦” 引っ越しの手伝いをきっかけに急接近→現在は夫婦でランニングスクールを運営
  6. /nl/articles/2503/08/news018.jpg 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】
  7. /nl/articles/2503/11/news017.jpg 着古したマフラーとセーター、切らずに手縫いするだけで…… 春も大活躍のリメイクに「アイデアに脱帽」「素晴らしい」
  8. /nl/articles/2503/11/news009.jpg 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  9. /nl/articles/2503/15/news044.jpg コメダ珈琲店で「軽い食事」を注文 → 出てきた“まさかの実物”に思わず大仰天 「逆詐欺ですね」「軽食という名の主食」
  10. /nl/articles/2503/15/news057.jpg 「足の疲れ具合が全然違います」 ディズニー行くときおすすめの“神アイテム”が話題沸騰 「試してみたい」と2390万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  2. 愛猫が見つめる先にいるのは……? “まさかの来訪者”に思わず仰天 「うそっ?」「お庭に来るんですね!!」
  3. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  4. 壊れて捨てるしかないバケツをリメイクしたら…… 想像もつかない大変身が830万再生「想像力がすごい」【海外】
  5. そうはならんやろ ヤマト運輸公式とLINEで遊んでいたら…… 突然訪れた“予想外の展開”に28万いいね
  6. 「ウソやろ」 松屋の“530円丼”、衝撃的なビジュアルにネット騒然 「コレで良いんだよ丼」「開き直り感がすごい」
  7. ダイソーのセルフレジが「身に覚えのない商品」を認識→“まさかの正体”に大仰天 「そんなことあるんですね」
  8. 余ってるクリアファイル、半分折ってカットするだけで…… 目からウロコな便利グッズに「天才すぎる!」「素晴らしいアイデア」
  9. 「マジで天才」 無印良品から新発売の“350円文房具”に絶賛の声相次ぐ 「便利すぎる!」「これはいい」
  10. 「スト6」の公式世界大会で福島県のチームに所属する「翔」が優勝 賞金100万ドル獲得
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に