「でろーんでろでろ」って何?:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(3/3 ページ)
この当時のテクモには、一種独特のシュールなセンスがあった。全キャラクターがウゴウゴルーガ風の線画で描かれたミニゲーム集「がんばれギンくん」や、プレイヤーの脳の働きを診断するミニゲーム集「脳力向上委員会」などに顕著にみられる。しかしどちらもアーケード版のみで、家庭用ゲーム機には移植されていない。もし、脳トレブームのときに「脳力向上委員会」がリメイクされていたら、そこそこ売れていたような気がするのだが。
「でろーんでろでろ」でもセンスの片鱗がうかがえる。各モードのタイトルや、対戦相手のキャラクターはもとより、ルパン三世風のタイトル表示、対戦前に出てくるレディとゴーなどといった小ネタも仕込まれている。背景が実写の写真というのも味がある。
惜しいことに、ゲーム全体を貫く世界観とか、「ぷよぷよ」における漫才デモのようなものがないために、せっかくの濃いキャラクターたちが活かせていない。ゲーム自体のオリジナリティのなさも、小ネタのシュールさを相殺してしまっているような気がする。
すっと/そばから/去るよ
「でろーんでろでろ」に続編はない。1996年にはプレイステーションにも「ぷよぷよ通」が移植されたので、「でろーんでろでろ」の出る幕はなくなったのかもしれない。
そのかわりテクモからは、刻命館、ギャロップレーサー、モンスターファーム、闘姫伝承 ANGEL EYES、デッドオアアライブといったゲームが、続々とプレイステーションに登場し、闘姫伝承以外はすべてシリーズ化された。これらのゲームに後を託して、「でろーんでろでろ」はひそかに表舞台から姿を消したのだ。
しかし、びっくりすることに、2009年7月になって「でろーんでろでろ」は、ゲームアーカイブスに収録された。ダウンロードで購入して、プレイステーション 3やプレイステーション・ポータブル(PSP)で遊ぶことが可能になったのだ。
テクモのソフトでは、「でろーんでろでろ」よりはるかに有名な、「ギャロップレーサー」と「モンスターファーム」がいまだにゲームアーカイブスに入っていない。わたしの推測だが、ギャロップレーサーは馬名の使用権の問題で、モンスターファームは音楽などのCDを読み込ませる必要があるために、それぞれ移植が難しいのかもしれない。
一方で、どのゲームよりも先に「闘姫伝承」が配信を開始している。これもなかなかシュールなセンスのゲームだった。二次元の女性キャラとポリゴンの女性キャラが入り交じった対戦格闘ゲーム。
ゲームアーカイブスには、どマイナーなゲームがかなりラインアップされており、リストを見ているだけでも楽しい。どマイナーハンターにとっては宝の山だろう。
冒頭にわたしが訪れた深谷駅は、東京駅に似せることで、レンガの産地だったという歴史をアピールした。「でろーんでろでろ」は、自らが何かをアピールすることはできなかったものの、後続のゲームのために捨て石となって、32ビット時代のテクモの隆盛に貢献した、と言えるのかもしれない。
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