梶浦由記、過去最大規模のツアーが開幕!! 「FictionJunction/Yuki Kajiura LIVE vol.#6 at 横浜BLITZ」(2/2 ページ)
ろっ骨を折っているとはとても思えない歌声の伊藤えり
黒いドレスに白いケープをまとった伊東がステージ中央の階段から現れ、ピンライトを受けながら「hepatica」を歌いだすと、目の前の神々しい光景に目を釘付けにされてしまう。続く「godsibb」では梶浦が髪を振り乱しながら激しくピアノを鳴らしてリードし、それに完璧に応える伊東とKaoriのメロディアスな歌声に観客も熱狂する。
MCで伊東が自己紹介の後にさらりと「実は今、ろっ骨を3本折ってしまっていて……」と話しだすと、観客だけではなくステージ上の歌姫たちまでもが唖然。歌うとミシミシきしむそうだが、それを全く感じさせない伊東のプロフェッショナルなパフォーマンスに大きな賛辞が贈られた。
伊東を迎えてのスペシャルな時間のラストナンバーはアニメ「ツバサ・クロニクル」の挿入歌「a song of storm and fire」。伊東と4人の歌姫たちが一丸となって会場いっぱいに壮大なオペラさながらの歌声を響き渡らせると、大歓声が巻き起こる。そのまま伊東はライトアップされた客席いっぱいのファンを見渡し、最高の笑顔でステージを後にした。
伊東がステージから下がった後は、歌姫たちも負けていられないとばかりにスパートをかけていく。日本語封印ライブでは披露できず(※日本語の楽曲であるため)悔しかったと笑顔で話す梶浦にとって雪辱戦ともいえる「時の向こう 幻の空」、梶浦がEmily Bindigerに提供した楽曲のカバーとなる「everytime you kissed me」、ヴァイオリンのリズムに合わせて歌姫たちが何度もジャンプして喜びを表現した「Parallel Hearts」、ライブならではの高音寄りのアレンジでWakanaが透き通った歌声を奏でた「where the lights are」、など、緩急を織り交ぜた人気ナンバーの連発に会場も揺れんばかりの勢い。
少しひと息ついて、今度はバンドメンバーにとっての「家にある食べ物で絶対に切らしたくないもの」の紹介タイム。高橋“Jr.”知治(Bass)がごま、佐藤強一(Drums)が玄米、今野が充実野菜とローヤルゼリー王乳、是永がごま油、大平佳男(Manipulator)がさけフレークと、比較的健康志向の回答が目立った。常にベストな健康状態を保つからこそ、迫力のサウンドから囁くような調べまで、幅広い梶浦のリクエストにきっちり応えられるということかもしれない(?)。
ラストスパートではアニメ「舞-HiME」&「舞-乙HiME」のスペシャルメドレー。まるで1つの曲であるかのように、流麗にアレンジされたアップテンポなナンバーに歌姫たちは音楽に身を任せて舞い踊り、メドレーラストの「zodiacal sign」では梶浦も一緒になって観客たちと歌い、強い一体感が会場を包み込む。その空気に触れた梶浦は「みなさんがいい顔して私たちの音楽を聴いていてくださると、これ以上の楽園はこの世に無いなと本気で思います」と優しい口調で語った。
梶浦が込める、明日への願い
そのまま最後の「maybe tomorrow」へと入る前に、梶浦はこの曲に込めた思いを真摯に述べた。「明日に思いを馳せることは誰にでもあることで、そんな詩の歌もいっぱいあります。そういう歌は大抵私も好きです。映画『風と共に去りぬ』のラストシーンで『明日は明日の風が吹く』という有名なセリフがあります。子どもの頃は映画のことなんて知らなくて、ちょっとかっこいいセリフだと思って使っていました。でもある日ふと、『明日は明日の風が吹く』って幸福な時は使わない言葉だと思ったんです。
今が幸福だったらその幸せを享受するのに手いっぱいで、明日のこととか考えないですよね? 明日は今の幸福の続きだから、別の風なんて吹いて欲しくないじゃないですか。でも、明日は別の風が吹いて欲しいっていうのは、今がどうにもならない状況なんじゃないかと思いました。大人になればなるほど、頑張ってもどうしようもないことってありますよね。死ぬ気で頑張ったのに、何にもならなかったどころかマイナスだったなんてことが、案外多いのかもしれない。でも、そんな時にも絶望に浸りたくはないものです。そういう時に、今日はダメだったけど、明日は明日の風が吹く――。そんな考え方に気づいたら、“明日”っていう言葉が余計好きになりました。
“明日”という言葉に、私も何度助けられたことか(笑)。年を経るごとに、自分の中で大事な言葉になっています。今日の絶望は明日に持ち込みたくない。明日はいい日に違いないと信じる、希望の象徴のような言葉だなって。maybe tomorrow……“きっと明日は!”、そんな思いを込めて書いた曲です」
英語歌詞のmaybe tomorrowの和訳がステージのモニターに表示されていく。曲の前半ではKeikoを中心として、絶望を拭い去っていくかのように、静かに祈りの言葉が紡がれる。後半では明日への期待を確かなものにすべく、出演者全員が心を込めて観客たちに希望の祈りを捧げた。曲中、慈愛や献身に満ちた歌姫たちの高潔な佇まいに、自然と涙する観客が多数。けれどみんな下は向かず、ステージをしっかりと見据え、これからの人生への希望を明確なものにした。
梶浦の“声”に対する考え
最大級の歓声に見送られながらメンバーがステージから下がった後は、当然のようにアンコールのリクエスト! メンバーたちはツアーTシャツに着替えてステージに舞い戻り、「the world」と「I reach for the sun」をお披露目。高低・強弱自由自在、圧倒的な美声でライブの根幹を支えてきたYuriko Kaidaが、I reach for the sunでの観客との手拍子で見せた可憐な笑顔が一層の輝きを放っていた。そして、再び伊東を迎えての「ring your song」でライブはフィナーレを迎える。
当日販売されていたパンフレット収録のインタビューで梶浦は“声”について「無敵」、「恐ろしい最終兵器」という表現を用いている。確かに、声を荒げれば簡単に不快な気持ちが周りに伝播してしまう。けれど裏を返せば、歓びや勇気、希望といったものも伝えていくことができるのではないか。ライブではそういった感情のきらめきを、時には言語に縛られることなく独自の言葉を使い、音楽で表現する梶浦の世界を満喫できる一夜となった。
Kajiura Produce 3rd Anniversary LIVE TOUR FictionJunction/Yuki Kajiura LIVE vol.#6 | |
1 | Crush(Vn ver.) |
2 | frenetic |
3 | the image theme of Xenosaga II |
4 | vanity |
5 | Liminality |
6 | fake wings |
7 | in the land of twilight, under the moon |
8 | 星屑 |
9 | 花守の丘 |
10 | secret game |
11 | maze |
12 | canta per me |
13 | salva nos |
14 | hepatica |
15 | godsibb |
16 | a song of storm and fire |
17 | 時の向こう 幻の空 |
18 | everytime you kissed me |
19 | 野原 |
20 | Parallel Hearts |
21 | where the lights are |
22 | LA |
23 | 目覚め |
24 | Materialize |
25 | 聖乙女の祈り |
26 | zodiacal sign |
27 | maybe tomorrow |
En1 | the world |
En2 | I reach for the sun |
En3 | ring your song |
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