ただただ「FINAL FANTASY」シリーズが大好きです――BUMP OF CHICKENと「FINAL FANTASY 零式」
「FINAL FANTASY 零式」の主題歌を手掛けるBUMP OF CHICKENメンバーにインタビュー。
BUMP OF CHICKENの新曲「ゼロ」は、メンバーも大ファンだという国民的RPG「FINAL FANTASY」シリーズの最新作「FINAL FANTASY 零式」の主題歌として書き下ろされたものである。バンドにとって積年の夢だった今回のコラボレーションは、どのような経緯で実現したのか? メンバー全員に語ってもらった。
―― 「零式」とのコラボレーションは突然オファーをもらったという感じだったんですか?
藤原 いや、突然ということでもないんです。
直井 「零式」のクリエイティブプロデューサーであり、キャラクターデザイナーでもある野村哲也さんとは数年前にお食事をご一緒したことがあって。
藤原 そう。「FINAL FANTASYVII アドベントチルドレン」という映像作品(2005年9月リリース)の試写会に誘っていただいたんですよね。ホントに光栄なことに。その試写会は六本木ヒルズで行われたんですけど、もう、すごく華やかな席で。僕らは隅っこのほうで萎縮しながら試写会がはじまるのを待っていて(笑)。作品にも感動したし、後日まさか野村さんとお食事させていただけるとは、という感じでした。食事の席での僕らは、ただただ“「FINAL FANTASY」シリーズが大好きです”ということを伝えまして(笑)。
直井 そうだったね。僕らが一方的に「FINAL FANTASY」への思いを語るものだから、野村さんも“ありがとうございます”って言うしかないみたいな(笑)。そういうこともあって、野村さんをはじめスタッフの方々と面識はあったんです。そのときは別に“主題歌をお願いします”とか、そういう具体的な話はなかったんですけど。
藤原 話の流れのなかで野村さんと“いつかお仕事をご一緒できたらいいですね”という会話はあったんですけど、当時の僕らはそれが現実のものになるとは思ってもみなくて。
―― 4人とも「FINAL FANTASY」はずっとプレイしてきたんですか?
藤原 僕はけっこう古いタイトルからリアルタイムでプレイしていましたね。
直井 僕はハードがスーパーファミコンに移行してからだから、「FINAL FANTASY IV」からリアルタイムでやっていることになりますね。
増川 僕は後追いなんですけど、今は新しいシリーズが出る度にプレイしています。
藤原 升くんはもともとゲーム自体あまりやらないんですけど、それでも「FINAL FANTASY」シリーズは、メンバーからの影響もあっていくつかプレイしているんですよ。
升 そうなんです。
直井 そんななかで、みんなで夢を話すように“いつか自分たちが「FINAL FANTASY」の主題歌を作るなんてことになったら最高だよね”って話していて。なので、今回レコードを会社のスタッフから“「FF」の主題歌の依頼がきました”って聞いたときは4人で“えええっ!?”ってなって。声もちょっと高めになるくらい(笑)。
一同 (笑)。
直井 信じられないんですよ、僕らは。で、シリーズを聞いたら、もともと「零式」は「アギト」というタイトルだったんですけど、「アギト」だと言うので。信じられなかったですね。
―― 4人はそれぞれ「FINAL FANTASY」シリーズのどんなところに惹かれていますか。
直井 そもそも最初に触れた絶対的なファンタジーなんですよ。俺のなかのファンタジーの概念を作ったのは「FINAL FANTASY」だといっても過言ではなくて。中世ヨーロッパを感じさせる世界観は子どもながらにすごく惹かれた。あとはどのシリーズにも共通するクリスタルという概念ですよね。風、火、水、土という属性のクリスタル巡るストーリーに毎回魅了されています。
増川 僕は「FINAL FANTASY」シリーズのダークな雰囲気に惹かれています。ストーリーも内省的で、子どもにとっては衝撃的な部分も多いんですけど、主人公が闘わざるを得ない理由がそこにはあって。大人になってからのほうが作品の世界観に強く惹かれていきましたね。子どものころ家の決まりごとでゲームがあんまりできなかった鬱憤も爆発して(笑)。
藤原 僕は最初はモンスターが怖かったんですよね。サハギンっていう半魚人のモンスターが出てくるんですけど、それがとにかく怖くて。そこからさらに上級亜種みたいなのも出てくるんですね。デザートサハギンとか、サハギンチーフとか。それがさらに怖い(笑)。それと文明のリアリティ。中性ヨーロッパ風の城下町もあれば、人里離れたところで独自の文化を築き上げている集落もあって。その世界を疑似体験する高揚感ですよね。ストーリーにも常に驚かされてきたし。あとは「FINAL FANTASY」って、ゲームのシステム上でいろんな挑戦をしていると僕は思っていて。「II」ではレベルという概念がなくて、その代わりに熟練度があるんです。それと利き腕という設定もあって、どっちの腕に武器を持たすか選べる。そういう斬新な試みがたくさんあるんですよね。「III」のジョブシステムや「IV」のアクティブタイムバトルシステムも印象的ですね。それとともにさっきチャマ(直井)が言ったクリスタルとか、一貫したモチーフがあるのも魅力的です。
―― ハードが変わるごとに音楽やグラフィック面も進化していったと思うんですけど。
藤原 そうですね。BGMが素敵なゲームは世の中にいっぱいありますけど、そのなかでも「FINAL FANTASY」は音楽と映像の演出効果がすごく高い作品だと思います。「VII」や「VIII」になると、オープニングもすごく映画的で。タイトルロゴが入る瞬間とかカメラワークが、まさに映画を観ているような感じでしたね。
―― 資料によると、「ゼロ」の楽曲制作に入る前に、藤原さんと「零式」制作チームとのミーティングがあったということで。そこではどんな会話を交わしたんですか?
藤原 えーっと、どんな話をしたかな……まず資料を見せていただいて、開発中の「零式」の画面も見せていただきましたね。資料も5、6ページくらいのもので。文章よりもイラストが大きく載っているようなもので。キャラクターだったり、イメージカットが。先方からこういう曲にしてほしいという、テンポはこのくらいでとか、具体的な要望は特になかったんですよね。
―― 先方からの具体的な要望がないなかで、どういうイメージをもって作曲をスタートさせたんですか?
藤原 まず、ミーティングのときに見せていただいたイラストのイメージがとても大きかったと思います。それは、野村さんがデザインした「零式」のキャラクターが一堂に会しているものなんですけど。あとはもう、作曲用に録ってもらったスタジオのブースに入って、イラストのイメージと、自分がミュージシャンとしてBUMP OF CHICKENとして表現したいことを曲にしていくという、いつもと同じ流れでしたね。
―― ちなみに「零式」の中で「ゼロ」がどのようなシーンで流れるのか確認したんですか?
直井 はい、そのシーンだけ確認させていただきました。いやあ……感動しました。そのシーンだけを確認しているから、僕らはストーリーの前後関係はわかってないんですよ。あくまでミュージシャンとして音をチェックさせていただいたので。でも、涙が出てきた(笑)。すごく美しいムービーシーンと重なって「ゼロ」が流れるんですけど……早く全編プレイしたいと思いましたね。
増川 ストーリーの前後関係はわからないけど、物語の象徴的なシーンで「ゼロ」が流れているのはすぐわかったんですよね。その時点で曲をすごく大事にしていだだけていることが伝わってきました。
藤原 感動したね。
増川 すごかったよね。例えば映画のワンシーンだけ観てもなかなか感動できないと思うんですけど。勝手にストーリーの前後関係を予想しただけで泣けてくるというか。
升 ゲームの世界観と曲が必然的に融合していることを強く感じることができました。それがすごく感動的でしたね。
藤原 うん。だから、ただのいちファンとして観ているような感覚でしたね。
直井 僕らとしては、実際に完全版をプレイして、「ゼロ」のシーンに辿り着いたときにようやく自分たちが主題歌を担ったんだって実感できると思うんですよ。
―― 「ゼロ」のジャケットもまた「零式」とコラボレーションしていて。期間限定盤のジャケットには「FINAL FANTASY」ファンにはお馴染みの天野喜考さんのイラストが使用されています。
直井 申し訳ないです(笑)。最初は、僕らのプロデューサーが、天野喜考さんのイラストをジャケットに使わせてもらえないだろうか?と発案して。天野さんのイラストは「FINAL FANTASY」の象徴でもあるので、僕らとしては恐れ多かったんですけど。
藤原 僕らからは、そんな大それたこと言えないですよ(笑)。
直井 だから僕らは“実現したら最高にうれしいけど、そんなことできんの!?”みたいな感じでした。心のなかでは“マジか!?”ってテンションが上がっているんだけど、ここで喜びすぎちゃいけないとセーブしていた部分もあって。でも、お願いしたら快く引き受けていただいて。ホントにありがたいですよね。さらに、“BUMP OF CHICKEN”のフォントも「FINAL FANTASY」シリーズのフォントと同じものになっていて、バンドのロゴマークも「FINAL FANTASY」風にしていただきました。それだけではなくて、ファミコン世代にはたまらないメンバー4人のドッド柄のキャラクターイラストも作っていただいて。今回はそれをアーティスト写真の代わりに使用させてもらっています。これは僕からのお願いでした。ファンとしてどうしても作っていただきたくて。
―― 完全無欠のコラボになりましたね。
直井 そうですね。本当に幸せですね。バンドにとって夢が叶った特別なコラボレーションになりました。
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