NTTドコモはヘルスケア領域で何を目指すのか(1/3 ページ)
Runtastic for Docomoやらでぃっしゅぼーや、ABCクッキングスタジオ、ショップ ジャパンなど、さまざまな企業と手を組みヘルスケア領域での取り組みを拡大するNTTドコモ。その狙いはどこにあるのかを、キーパーソンに聞いた。
最近、ドコモはヘルスケア関連事業に相当注力しているらしい、というのを活動量計の「ムーヴバンド」や、有料サービス「からだの時計」のバージョンアップなどから感じていた。最近ではアドバイス機能に力が入っているようで、ムーヴバンドで得られた生活習慣データに対して、しっかりと情報を提供しようという姿勢が感じられる。ムーヴバンドにしても、最新モデルのムーウバンド2は初代の問題点をきっちり潰してきた。キャリアが行っているヘルスケアサービスにしては、サービスの進化が速い。
一方で有機野菜や無添加食材を売ったり、さらには生体情報の連続計測が可能な「hitoe」のような機能素材や、「Runtastic for docomo」といったトレーニング支援サービスも発表。ピンポイントで聞くと、なぜ通信事業者のドコモがこんなことを手がけているのだろう、と思うこともある。
そこで、ドコモの中での「ヘルスケア」がどういう位置づけあり、今後についてどのように考えているのか。また、ウェアラブルデバイスについてどう考えているのかなどを、NTTドコモ スマートライフビジネス本部 ライフサポートビジネス推進部 ヘルスケア事業推進担当部長の安部成司氏と、プロダクト部 プロダクトイノベーション担当部長の森山光一氏に聞いた。
ヘルスケアデータを中心に各サービスを有機的につなぐ
――(聞き手:すずまり) ドコモさんはスマートフォンアプリの「わたしムーヴ」や、「ムーヴバンド2」のような活動量計を提供しています。またらでぃっしゅぼーやでは野菜ジュースなどを販売していて、新製品発表会で加藤社長が壇上でジュースを飲み干すパフォーマンスもありました。秋冬の商戦からは「Runtastic for docomo」のような、運動をサポートするサービスなども始められています。
最近は「食」や「健康」に関して、「なぜドコモが!?」と驚く取り組みを結構されている印象なのですが、なぜそういう分野に力を入れられているのか、ドコモとしてどういう目的でどのような取り組みを行っているのか、その全体像を教えていただけますか。
安部氏 「ドコモの中期ビジョン2015」では、ヘルスケアに限らず、新領域のサービスとして、M2M、アグリゲーションプラットフォーム、金融・決済、メディア・コンテンツ、コマース、メディカル・ヘルスケア、安心・安全、環境・エコロジーの8領域をやっていくという方針を掲げています。
これらの新領域が、今後のオペレーター(通信事業者)にとっての1つのビジネスのフィールドなのかなと思っています。なぜかといいますと、通信回線を提供しているだけでは、ダムパイプ(土管)化してしまうという懸念があるからです。ダムパイプになると、料金以外で差別化するのが難しくなります。また、今後はモバイル領域だけでは競争が厳しくなってくるだろうと考えているからです。
そういう意味で、2015年の中期ビジョンとして掲げているのが「スマートライフのパートナーへ」です。要するに、ドコモがお客様に密着して、スマートな生活のパートナーになりたい、と考えています。
先ほどご説明した新領域の中に「メディカル・ヘルスケア」というものがありますが、これが特に重点分野になっています。なぜならスマートライフに健康は欠かせませんから、ここを押さえることは非常に大切。健康を核にしてスマートライフを実現しようということで、「食事」「運動」「睡眠」「保険医療」の4つのカテゴリーでサービスを展開して、それぞれのサービスを相互に連携させようとしているんです。
―― なるほど。いずれもヘルスケア関連サービスの一部だったということですね。
安部氏 その通りです。「食事」ですと、健康食材や有機食材を扱う「らでぃっしゅぼーや」や、食育やレシピを扱う「ABCクッキングスタジオ」を展開しています。「運動」ですと、オークロンマーケティングさんの「ショップ ジャパン」には、大ブレイクした「ビリーズブートキャンプ」ですとか、最近ですとTRFさんのダンスエクササイズDVD「EZ DO DANCERCIZE」がありますね。「睡眠」では同じくショップジャパンの低反発マットレス「トゥルースリーパー」がありますし、「保険医療」では医療保険である「ドコモの保険」、生活習慣病の自己管理支援を行う東大病院との連携講座や、医師や薬剤師同士をつなげる「アルトマーク」なんかもあります。
そして、これらをつなぐものがヘルスケアデータです。
―― つまり、ムーヴバンドで測定した活動量のデータや、生態情報が取得できる機能素材の「hitoe」で取得したデータというわけですか。
安部氏 そうです。我々は通信事業者でもありますから、スマートフォンを持っています。ムーヴバンドやhitoeみたいなもので測定した体のデータは、スマートフォンを経由すれば、比較的簡単に集めやすい。いわゆるPHR(Personal Health Record)データを集めて一元管理し、そのデータを活用して、健康を軸とした新しいライフスタイルを提案していきましょうということです。ムーヴバンドやhitoeのほかに、提携しているオムロンの体重計や体温計、睡眠計などからもデータを集めることが可能です。
―― サーバに蓄積されたデータから分析して、今後に生かそうというわけですね。最近Runtasticと組んでランニング記録サービスの「Runtastic for docomo」を始められましたが、あれはどういうポジションになるのでしょうか。今まではわりと物販中心だった印象がありますが、Runtasticは実際に走るサービスです。
安部氏 運動1つをとっても、リアルな場所でやること、ネットのサービス、物販、この3つがちゃんとセットになることで、よりサービスを連係させて展開できるのではないかと考えています。
これまではどうだったかというと、「運動」分野の中心はDVD。おっしゃるとおりコンテンツ物販なわけです。それから、我々は「iBodymo」というネット系のサービスをやっていますが、これは運動というよりはどちらかというと、歩くだとか、食事面をカバーするものです。「からだの時計WM」というサービスもありますが、こちらは生活習慣に関わる部分で、体内時計を使った健康サービスです。ですので、体を動かす部分でも、リアルな運動系がちょっと弱いなと思っていました。これでは運動といっても具体性がないなと。
そのとき、hitoeというNTT研究所の研究もあったので、それを生かして、もっと運動的なサービスができないかといろいろ考えてきた中で、行き着いた先が「Runtastic for docomo」というような形だったというわけです。
―― ドコモ自身がサービスを作ることは考えなかったのですか?
安部氏 確かにそういう方法もあったと思います。しかし、自分たちだけでゼロから対応するのはなかなか難しい状況です。しかも、世の中を見ると、運動系サービスはすでにたくさんありますよね。例えばRuntasticさんは、アプリだけで1億ダウンロードを超えるくらいな状況です。だったらそういうグローバルなプレーヤーとしっかり組むことで、お客様に適切なサービスを提供すればいいのではないかと。我々はあくまでも通信事業者ですから、通信事業者としてそういったサービスを提供することができれば、ユーザーにはいいんじゃないかと思いました。
―― それぞれが有機的につながっていくと、いろんな可能性が生まれそうですね。
安部氏 運動をすれば食事や栄養面も気になってくるでしょうし、結果的に食事、運動、睡眠、保険・医療の4つが回っていきます。
ランニングユーザーって、週1回運動するだけで570万人、サイクリングでも週に1回する人が290万人いるそうなんですよ。いろんなところで運動されている方がいるんですね。そういう人達をゆるやかに連係させながら、その中でもっとちゃんと運動したい人に場所を提供するような導線が作れるでしょうし、逆になかなか運動に踏み切れない人に、こういう風な形でやると簡単に運動できるんですよ、という入口を提供することもできます。
2020年にはオリンピックも控えてますし、今後、トータルとして運動人口が増えるんじゃないかなと思います。我々としても、ドコモなりにいち早くそういったものに取り組むというのは、重要だと思っている次第です。
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