第25回 スマホ依存の生活をリバランスする「VELDT SERENDIPITY」が生まれた理由:“ウェアラブル”の今(1/2 ページ)
Appleとは異なる選択肢として、またメイド・イン・ジャパンのスマートウォッチとして注目の「VELDT SERENDIPITY」はなぜ生まれたのか。VELDTのCEO、野々上仁氏に聞いた。
VELDT(ヴェルト)は、メイド・イン・ジャパンにこだわった、スタイリッシュなスマートウォッチだ。
2012年に事業を立ち上げた代表取締役CEOの野々上仁氏にインタビューしたのは雨の日。野々上氏が身につける、シンプルなアナログ時計と1行のLEDディスプレイを備えるスマートウォッチ「SERENDIPITY」は、青いLEDが文字盤を取り囲むように円を描いていた。
野々上氏はそれを見て「今日は1日中、雨ですね」と言う。もし午後4時頃に雨が上がるなら、その青い弧は4時のところで途切れるという。スマートフォンの操作を何もせず、1日の天気を手首だけで知る。そんなさりげない、スマートウォッチは、VELDTの思想を反映しているようだった。
Appleのオルタナティブを目指す
野々上氏は、サン・マイクロシステムズでテクノロジー業界を経験した。シリコンバレーの素晴らしさ、コンピューターやインターネットの発展のスピードの早さを存分に経験してきた。
その一方で、だからこその日本の競争力とは何か? あるいはテクノロジーが広く普及していく中で、どのようにして人間らしく生きるのか? というテーマについて考えるようになったという。
そこで、テクノロジーやソフトウェアとものづくりの融合を志してVELDTを2012年に設立した。スマートフォンというプラットフォームの発展と、要素技術の成熟、そして人々の関心の高まりを予測した、絶好のタイミングで製品発売にこぎ着けることができた。
野々上氏は、シリコンバレーに触れれば誰もが抱く憧れである「Appleのオルタナティブ」について触れた。
「Apple Watchは、世界中の人々をスマートウォッチに気づかせるきっかけになるでしょう。しかしApple Watchはコンピューターのアプローチであり、それらしいプラットフォームです。自ら計算し、高い自由度を確保しています。そのかわりバッテリーの持続時間が厳しくなる。
一方、時計的なアプローチでは、Bluetooth Low Energyとモーションセンサーを内蔵するだけで“スマートウォッチ”と呼べることになっていました。これだけでは、スポーツトラッキングができる活動量計と変わりません」
野々上氏は、「デジタル製品の雰囲気が一切ない中で、デジタルの新しい機能性を作り上げる」という課題へのチャレンジに取り組むこととなった。
情報デザインからのスタート
VELDT製品の文字盤には、アナログ時計とそれを取り囲むLEDランプ、そして1行のデジタルディスプレイが備わっている。その組み合わせを決めた事が、野々上氏のチャレンジに対する答えだった。
すなわち、非常に時計らしいデザインの中で、「一目で何を伝えるか」を、円形に並ぶLEDと1行ディスプレイで表現する。そんな「ルール」を決めることだった。
前述の通り、天気は1日の流れが一目で分かる。時計の文字盤の周りに配置されたLEDの色が天気を表し、いつ頃雨が降り出すのかを伝えてくれる。同じように、スケジュールが登録されている時間帯にランプが点灯し、どこが空き時間なのかも一目で分かる。また1行ディスプレイは、文字盤のLEDの情報表示をアシストし、またiPhoneに届く通知を手首だけで知ることができる。
もちろん、活動量を測ることもでき、1日の目標への到達を円で表現したり、アプリ内でスケジュールと連動して、1日の予定の中で、どのように活動量が変化したのか、というデータを蓄積することもできる。
非常にシンプルな表現方法ながら、しかし多彩な情報を「一目で」伝えることができる仕組みを実現しているのだ。このシンプルさは時計としての性能も向上させている。
1度充電すれば1週間はバッテリーが持つのも特徴だ。500サイクルの充電に対応した品質の良いバッテリーを採用することで、単純な計算で5年、10年という単位で使い続けることができる。
そぎ落とした情報デザインは、時計としての機能性を支え、またスマートフォンの画面から意識を離す、VELDTにとって非常に重要な役割を実現することになった。
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