うつ病をゲーム「Ingress」で克服 ポケモンGO生みの親も祝福(2/3 ページ)

» 2016年11月06日 06時00分 公開
[すずまりITmedia]

半年間、部屋から1歩もでられない

 会社を休職することになったMさんですが、その後の生活は「ツライこと専門のアンテナが開きっぱなしになって、ほかが全部閉じてしまったような感じだった」といいます。

 「自分の部屋から1歩も外にでない日が、最初の半年くらい続きました。もう何もする気が起きないんです。ベッドの中からでられない。汚い話ですけど、1週間お風呂に入らなくても何も感じないんです。動かないし、外にでないから、部屋の中にまったく変化がなかった。でも実家暮らしだったのは幸いでした。食事は部屋の前まで持ってきてくれたので、それを食べて戻すような。ドラマにあるけど、本当にあんな感じ」

 寝ても30分ほどで目が覚めてしまうというほど重度の睡眠障害にも陥っていたため、大量の睡眠剤と精神安定剤、強い抗うつ剤を処方されており、1度に飲む薬の量は5〜6種類はあったといいます。それでも状況は改善せず。自室で過ごす日々が続きました。

 「2週間の薬代が保険を適用しても1万円くらいはかかっていて大変でした。なかなか自分に合う薬が見つからなくて、見つけるまでに1年くらいはかかりました。でも合う薬が見つかってからは、徐々にテレビが見られるようになり、家族とも会話できるようになりました」

 うつと戦いはじめて1年、ようやく薬の効果が出はじめ、自宅から半径100mくらいまでなら外出できるようになったというMさん。「当時は考えている余裕がまったくなかった」といいますが、主治医との相性がとくに悪くなかったこともよかったよう。

 その主治医からは「薬をちゃんと飲むこと、決まった時間に起きること、この2つができるといいね」とアドバイスされたそうです。

2015年の早春、Ingressと出会う

 症状の揺り戻しを繰り返しつつも、主治医のアドバイスに従って朝6時ごろ起床し、家の周りを散歩できるようになっていました。しかしここで1つの問題が発生。休職できる期限が迫っていたのです。

 「接客業ともいえる業務内容でしたし、自分にはまだとてもできると思えなかったこともあって、そのときはさすがに会社を辞める覚悟をしました」

 期限までに治るかどうかは分からない――そんな悩みを抱えていたMさんに、知り合いが1つのゲームを教えてくれました。それが位置情報ゲーム「Ingress」でした。

海外のブログをみた知り合いが、Ingressを勧めてくれたそうです

 「知人が、海外のブログでIngressがうつに効果があると知って勧めてくれたんです。ゲームのルールはまったく分からなかったんですけど、自宅近くの神社に3ポータル、半径100m以内に合計5ポータルあるので、そこを毎日回ってハックしなさいって教えられました」

 取りあえず近くのポータルまで出掛けて、ハックボタンを押す。これを日課にしたそうです。

Ingressを通じて行動範囲が広がり、復職を果たす

 アドバイスに従って、毎日5ポータルを巡ってハックをしていたMさん。Ingressをプレイしていることを主治医に話したところ「軽い運動はいいことです」といわれたそうです。ジョギングやジムは肉体に負荷がかかるため勧められないけれど、散歩や街歩きはいいことだと。

 ゲームのやり方を少しずつ教えてもらっているうちに、もう少し遠くのポータルに行ってみよう、今度はCF(コントロールフィールド。ポータル3つをリンクで結んで三角形に塗りつぶし、陣地のようにすること)を作ってみよう。もっと長いリンクを張ろうという興味が湧いてきたといいます。

 「Ingressをしながら、近所の神社から始まって隣街へ、さらにその隣へと行動範囲を広げることができました。出掛けることが苦痛でなくなっていって、休職期限内の2015年4月に、無事復職できました」

 復職したといっても2年のブランクはありますし、まだ治ったわけではないので、昔のようにバリバリ働けるわけでもありません。会社と相談し、まずは会社に行って帰ってくるというところから徐々に慣らし、週3日、1日4時間勤務で事務作業をすることになったそうです。

 「業務内容の変更に伴って職場も変わって、以前よりもかなり通勤に時間がかかる場所になりました。最初は4時間も持たなかったですね。会社に到着したところで限界になったこともありました。でも今はフルタイムで週4日勤務できるようになりました」

 現在でも完全に治っているわけではないといいます。症状は治まっているけれど、何がきっかけで悪くなるか分からないので、薬の服用は続けているそうです。それでも薬が軽くなったことでお酒も飲めるようになり、いろんな集まりに顔を出せるほどになっています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」