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「キャプテン翼」を世に送り出したテクモがいかに偉大かを皆さんに説明します今日書きたいことはこれくらい

ガッツがたりない!

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 テクモのゲームの最大の特徴はとにかく面白いことです。

 今から皆さんと一緒に、ファミコン史前半におけるテクモの良ゲーメーカーっぷりとその恐るべき存在感について考えてみたいと思います。ちょっと古い話から始まりますがご勘弁ください。

ライター:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ、三児の父。ダライアス外伝をこよなく愛する横シューターであり、今でも度々鯨ルートに挑んではシャコのばらまき弾にブチ切れている。好きなイーアルカンフーの敵キャラはタオ。

Twitter:@shinzaki

 現在はコーエーテクモ、古くは帝国管財改めテーカンと号されたテクモは、当初はゲームセンターに良質なアクションゲーム・シューティングゲームを提供する佳作メーカーであって、そのアレンジ移植からファミコンでの歩みを始めました。

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 ファミコンにおけるテクモゲー第1作は、「ボンジャック」を絶妙にファミコンにマッチした形にアレンジした「マイティボンジャック」。元は固定画面型アクションゲームで、パズル的な要素もあったアーケード版「ボンジャック」は、その独特な浮遊感のあるジャンプはそのままに、探索・謎解き要素も加味されたスクロールアクションに生まれ変わりました。

マイティボンジャック(1986年)

 そのたった3カ月後に発売された「ソロモンの鍵」は、固定画面アクションパズルゲームの究極形と言ってもなんら過言はない、素晴らしい名作でした。それまでの「削る」ないし「移動させる」パズルゲームに対して、換石の術を使った「創る」パズルアクション。ソロモンの鍵のその恐るべき完成度に比肩する固定画面アクションゲームは、そうざらには存在しないと私は思います。

ソロモンの鍵(1986年)

 私の中では、「ソロモンの鍵」「迷宮島」「キャッスルエクセレント」「バベルの塔」の4作が、ファミコンにおけるアクションパズル四天王ということになっています。

 シンプルイズベストな連射ゲーにアドベンチャー要素・探索要素と完全SFチックなストーリーを付与してみせた「スーパースターフォース」、パッケージのショタっ子は一体どこに行ったの? と思わせること大な「アルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃」、後の数々の相撲ゲームに多大な影響を与えた「つっぱり大相撲」まで、「面白くないゲームが一作もない」というのはまず一つ特筆するべきでしょう。打率10割とか、なろう系の異世界転生野球小説でもなかなかない設定ですよ。いや、異世界転生野球ってジャンルが存在するかどうかはよく知らないんですが。

 ここまでの5タイトルをほんの1年半くらいの間にリリースしきっているというのは、現在の感覚からするとちょっと想像し難いことです。1作たった3カ月ちょっとですよ。スタッフの持ち込み私物にドラえもんでも混じってたんですかね?

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 テクモゲーと言えばBGMが何かの冗談のようにかっこいいということでも私の中で著名なんですが、「ソロモンの鍵」や「マイティボンジャック」のスルメのように耳に残るBGMもさることながら、「スーパースターフォース」の透明感もありメロディアスでありながらテクノ感満載なBGMはメタルユーキ節満載で本当に素晴らしい。DA0316の「DOG FIGHT」超絶かっこいいよな!!!!!!!あそこだけで30分くらいBGM聴き続けちゃうよな!!!!!!

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 それはそうと。

 1987年9月に「つっぱり大相撲」がリリースされた後、半年ほどの間を空けて、1988年4月28日にテクモから発売されたサッカーゲームがあります。

 そう、そのタイトルこそは「キャプテン翼」。言わずと知れた、当時ジャンプで連載されていた超有名サッカー漫画をファミコンでゲーム化したタイトルです。

 前回、前々回で「キン肉マン マッスルタッグマッチ」と「ドラゴンボール 大魔王復活」の話を書かせていただいたわけなんですが、この2作について書いたならやっぱこれを書かないわけに行かないよな、ということで、今日はちょっとファミコンの「キャプテン翼」の話を書かせていただきたいと思います。

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サッカーゲームの基本形となった「任天堂のサッカー」

 まず、ちょっとこの画面を見ていただきたいんです。

サッカー(1985年)

 任天堂の初代「サッカー」ですよね。

 斜め上から横向きのフィールドを見下ろす形式の画面になっておりまして、プレイヤーは選手のうち1人を操って相手ゴールを狙うことになります。自分が操作する選手はパスやボール位置によってころころ変わりまして、慣れるとかなり柔軟に選手を動かすことができるようになります。恐らく「サッカー盤」のようなおもちゃを意識した画面デザインだったのだろうと思います。ビデオゲーム全体を見渡せば、これ以前にも同じような視点のサッカーゲームはあったんですけどね。アタリの「リアルスポーツサッカー」とか。

 「サッカー」が出たのは1985年4月でして、ファミコンにおける初のサッカーゲームだったんですけど、まずいえることとして、このゲームめっちゃ出来が良かったんですよ。サッカーゲームとしてものすごく分かりやすかった。

 画面は見やすいし、操作はAボタンとBボタンの2つだけで直感的だし、上達する余地だってそれなりにある。パス回しを中心に動くかドリブル中心に行くかとか、作戦っぽいことを考えることだってできた。対戦も結構熱かったんです。

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 「サッカー」の出来が良かったことは、のちのファミコンサッカーゲームの多くがこのゲームのフォーマットを踏襲していることからも分かります。例えば「熱血高校ドッジボール部 サッカー編」とか、ナムコの「トップストライカー」とか、IGSの「Jリーグファイティングサッカー」とか。EAV(エレクトロニック・アーツ・ビクター)の「Jリーグウイニングゴール」なんかもそうですね。フィールドを見る視点がちょっと変わるものの、ジャレコの「燃えろ!! プロサッカー」あたりも、ゲームのフォーマットはほぼ「サッカー」を踏襲していたと思います。

 要は、ファミコンでサッカーゲームを考えるなら、まずこの「任天堂のサッカー」が下敷きになっても全然おかしくなかったんだろうな、という認識があるわけです。それくらい「サッカー」は良くできていたし、分かりやすかった。もし仮に、「サッカー」を下敷きにした『キャプテン翼』のゲームが当時出ていたとしたら、それはそれで、少なくともそれなりには面白かったに違いないんです。まして、テクモ自身、この少し前にトラックボール使った「テーカン ワールド カップ」を出してたわけですしね。

 ところが、「キャプテン翼が出る」と聞いて、任天堂の「サッカー」を当然のように想像していたファミっ子たちは、ファミマガで画面写真を見た時に度肝を抜かれました。

 そこにあったのは、スポーツアクションゲーム要素をほぼ完全に排除した、ドラクエのような「コマンド入力型RPG風サッカーゲーム」だったのです。

キャプテン翼(1987年)

「既存のサッカーUI」をガン捨てした「キャプテン翼」

 一橋大学イノベーション研究センターさんが、テーカン・テクモの開発陣の一人だった猪瀬祥希氏にインタビューしたログを公開されているので、一部引用させて頂きます。

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Q:最終的には ROM カセットで発売されましたが、これも鶴田さんのインタビューで伺った記憶があるんですけど、最初はディスクシステム用ソフトとして開発されていて、当初はコマンド入力じゃなくて、後の完成形とは全然違う形だったようですね。
Q(引用者注:恐らく「A」の誤記):おそらく、企画のメンバーで話をしていたときには、そういう話もあったとは思いますね。私の段階というか、企画が決まって、「とりあえずこれで1回プレゼンしようと思う」というところでは、もうコマンド入力タイプになっていました。
Q:では、「こういうゲームのプログラムを組んでください」という開発が始まる時点でもう仕様がまとまっていたわけですね?
A:いいえ、そこまでではなかったです。そのずっと前段階ではあるんですけど、画面は『ポートピア連続殺人事件』をイメージしてもらえればわかると思うんですけど、4分の1ぐらいが画面で、あとはコマンド部分があってっていう画面構成の企画が、私が一番最初に目にした企画書ですね。で、それを柿原さんにプレゼンしたら、ものすごい怒られました。「なんじゃこりゃ! 全然、『キャプテン翼』の世界観がこれでは表現できていないよ。こんなちっちゃい画面では迫力がない、全画面にしなさい」と。

(「猪瀬祥希第1回インタビュー後半: テーカン~テクモ時代のゲーム開発」より)

 このインタビュー、「キャプテン翼」以外の部分も超面白いんで読んでみていただきたいんですが、上記部分からは、

  • 「キャプテン翼」のコマンド入力のUIが「ポートピア連続殺人事件」の影響を受けていたこと
  • そこから、「キャプテン翼の世界観」を表現するためにUIが大幅に変更されたこと

――が分かります。

 この「キャプテン翼の世界観」ってものすごく重要なキーワードでして、このファミコン版「キャプテン翼」のゲームシステムって、およそ原作を表現するゲームとして「完璧」だったんです。完璧。言い過ぎじゃなく、完璧。

  • 原作の絵柄をかなりの部分再現した、非常に大きくダイナミックに動作するキャラクターと見やすい画面配置
  • アクションゲームが苦手なファミっ子でも、翼や三杉を思う存分活躍させることができるコマンド形式の行動選択
  • 「ドリブル」「パス」「シュート」などで表現される非常に分かりやすいキャラクター能力と個性づけ、そして成長要素
  • 原作さながら、場面によっては原作以上の迫力を見せる必殺シュートの数々
  • 要所要所で配置される熱い原作再現
  • 何よりも単純にゲームとしてめちゃ面白かった

 ドラゴンボールのときも書きましたが、キャラゲーのキモは「いかにプレイヤーを『漫画の中に入った気』にさせるか」です。その点、キャラゲーとしての「キャプテン翼」の出来は100点を突破して150点くらいに到達していました。

 まず、「ただ普通にプレイしているだけで、アニメさながらにキャラクターを動かすことができる」という点。本当に、ドリブルさせてるだけで面白かったんですよ、このゲーム。画面上で実際に、漫画のキャラクターが走っているんです。そして、フィールド上で敵に遭遇したら、パスやドリブルで華麗に相手をかわす、あるいはタックルを喰らって阻止される。

基本となるドリブル画面

 この「普通にプレイしているだけで、漫画さながらの迫力が味わえる」という要素だけは、サッカー盤のフォーマットでは絶対に味わえないものだったはずなんです。まずこの一点だけでも、「既存のサッカーUI」というフォーマットとアクション要素をガン捨てしたテクモの判断は神がかっていた。

 相手のタックルやパスカットを読んで敵をかわしていくというのも実に「サッカー漫画」にマッチした要素でして、華麗に何人もの相手をドリブルでかわす翼や岬を見るだけでももうめちゃ気持ち良かったんです。原作でもメインキャラだった味方は本当に頼もしかったし、一方タックルの値がバカ高い日向とか、同レベルでの能力的には翼を圧倒している三杉とか、原作準拠のキャラクターの個性づけもきっちりあった。

 ゲーム展開的には、前半が原作で言う中学生編、後半がJr.ユース編なんで、「前半での強敵と、後半では全日本で共闘することになる」というのもめちゃくちゃ熱いポイントでした。日向や若島津、三杉や松山といった強力な面々をスタメンで選べる楽しさと言ったらもう。

 そして、「キャプテン翼」を語る上では無論外せない「必殺シュート」の数々。翼のドライブシュートや日向のタイガーショットは言うに及ばず、新田のはやぶさシュートやら松山のイーグルショットやら、原作準拠・オリジナル入り乱れ、ド迫力の必殺シュートが乱れ飛んだわけです。

日向小次郎のネオタイガーショット
第1作から演出面はほぼ完成されていた

 必殺シュートを持った選手をゴール前に連れていったときはそれだけでわくわくしたし、一方敵の必殺シュート持ちは本当に恐ろしかった。シュナイダーのファイヤーショットとか、何で西ドイツなのに英語なんだよということは置いておくとして、打たれたらもう祈るしかなかった。

 そして、敵が恐ろしいからこそ、若島津のさんかくとびや若林のステータスが本当に頼もしかったし、森崎くんのキャッチはだが届かないわけです。なお2だとぽこぽこ吹っ飛ぶ。ごういんなドリブルでも飛ぶけど。

 このゲーム、物理的な突っ込みどころまで原作さながらでして、スカイラブツインシュートやらゴールネットを突き破るネオタイガーショットやら、「それは物理現象としてどうなのか」という描写は枚挙に暇がありませんし、そんな突っ込みどころすら「ゲーム上のド迫力」として面白さに吸収していたのは特筆すべき点であるように思います。

 ゲームとしては、RPGで言うところのMP的なリソースが「ガッツ」という単位になっているところも実に原作にマッチしたポイントでして、プログラマーさんの口癖だったという「くっ! ガッツがたりない!」は名言中の名言、私が前いた会社でも「この案件何ガッツくらい?」「ネオサイクロン」とかいう会話が普通に交わされていた程でした。よく意味が分からないかも知れませんが。

大技はそれだけガッツの消費が激しい

 アドベンチャーモードの話も外せないところです。原作にもあった岬と再会するエピソードを再現している訳なんですが、ここをクリアできるかどうかで後半戦岬を使えるかどうかが変わってくるという、戦力的にも恐ろしく重要な一場面でした。あとゲーム中唯一ここでだけ存在感を発揮する片桐さんの存在も、原作ファンにはうれしい要素でした。

 ちなみに、これら要素は初代「キャプテン翼」の時点で既にほぼ完成していたんですが、「2」では数々のゲームオリジナル要素とともに、より完成度をグレードアップさせまくることになります。必殺シュートの演出のド迫力はすさまじかったし、試合中のイベントの充実っぷりも素晴らしかったし、サイクロン習得イベントは本当に冗談のような説得力で感動ものでした。ただ、長崎の人は「まかせろタイ!」とか言わない、ということだけは強く主張しておきたい。お前のことだぞ次藤。

 まあなにはともあれ、「アクション性をガン捨てすることで、一種異様な原作再現度と面白さを手に入れた」ゲームとして、キャプテン翼は「ドラゴンボール 大魔王復活」と通底する、素晴らしい立ち位置を占めているという話をしたかったわけなんです。このゲームを世に送り出しただけで、テクモの功績はゲーム史に残ると思います。

 この後の「忍者龍剣伝」もとても思い出深いゲームなんですが、さすがに長くなり過ぎたのでここでは「デモのアイリーンめちゃ可愛かったよね」という言及だけに留めておきます。

忍者龍剣伝(1988年年/画像は駿河屋より)

 やたら長文になってしまいましたが、最後に言いたいことをまとめておきます。

  • テクモの良ゲーメーカーっぷりは異常
  • ファミコン版キャプテン翼はキャラゲーの一つの理想形と言ってしまっていいと思う
  • キャプテン翼の割り切りっぷりは、SFCナムコの「幽☆遊☆白書」にも影響している気がする
  • 森崎くん本来言うほど弱くないんですけど若島津があまりにも有能すぎる点は否定できない
  • ゴールネットはもうちょっと大切にしろシュナイダー
  • チャーリーさん、相手選手を「てきの3ばん」とか「てきの4ばん」呼ばわりするのはさすにちょっとどうかと思います

 これくらいのよく分からない結論になるわけです。よかったですね。>私

 今日書きたいことはこれくらいです。

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