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» 2011年07月13日 09時24分 公開

あの“梶本研究室”に行ってみた(後編):ゲームと「触覚」は相性がいい? 触覚デバイスがもたらすコミュニケーションの未来像とは (1/2)

なぜ「触覚デバイス」は普及していないのだろうか。後編となる今回は、学生たちを指導する梶本裕之先生に、触覚デバイスの課題や、触覚研究の可能性についてうかがった。

[池谷勇人,ITmedia]

梶本研究室とはどういうところなのか?

電気通信大学 情報理工学部 総合情報学科 准教授の梶本裕之先生

 一時話題になった「口腔における双方向コミュニケーションデバイス」をはじめとし、「触覚」を中心とした、新たなヒューマンインタフェースについて研究しているという、電気通信大学 情報理工学部 総合情報学科の梶本研究室

 前回の記事では、6月に行われたオープンラボで展示されていた研究事例をいくつか紹介したが、後編となる今回は実際に学生たちを指導する梶本裕之先生に、研究室の指導方針や触覚デバイスの未来についてお話をうかがった。(以下、敬称略)


自分自身と抱き合う気持ちよさ

(オープンラボの見学を終えて)

―― すごく刺激的というか、ユニークな研究が多いのに驚きました。

梶本 IVRC(国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト)という学生対抗のコンテストがあって、そこに毎年なるべく参加してみるよう学生に勧めているんです。非常に厳しいコンテストなので、そこでずいぶん鍛えていただいていますね。

―― 「虫HOW?」はIVRCで総合優勝されたとか。

梶本 確か3年前ですね。昨年は「Sense-Roid」という作品を出していて、それも総合優勝しています。

―― センスロイドというのはどういうものなんですか?

梶本 これもまたちょっとヘンな作品なんですが、一言で言うと、自分自身と抱擁できるデバイス。

―― Digirtal Contents EXPOで見たことがあります。

梶本 あれはどういう研究かというと、誰かをギュッと抱きしめる感覚って、相手との“親密さ”によって気持ちよかったり気持ち悪かったりするんですね。それならもっとも近しい相手、つまり“自分自身”を抱きしめたらきっと気持ちいいんじゃないか、というのが出発点。

―― 言われてみると、自分以上に親密な相手はいない。

梶本 「抱き枕」ってありますよね。ホントはあれって、抱くんじゃなくて「抱かれる」から気持ちいいんです。ギュッて抱きしめた時に返ってくる反力と、それによる圧迫感が気持ちいい。よく学生には「抱き枕じゃなくて抱かれ枕だ」って言ってるんですが、たぶんそういう発想もあったと思います。

―― 確かに抱擁って、相互に抱かれあってる状態でもありますね。

梶本 ちなみにあれもキスデバイスの彼(高橋さん)が関わっている作品です。

―― え、同じ人が作ってたんですか!

梶本 厳密に言うと、彼個人ではなくてチームで作った作品なんですが、彼は不思議とそういうものに縁がありますね(笑)。

―― 知りませんでした。さっきちょうどその高橋さんとキスをしてきたばかりなんですが……。

梶本 どうでしたか?

―― すごく気持ち悪かったです。

梶本 あのデバイスが面白いのは、そんなにリアルに作っていないにもかかわらず十分に気持ち悪いってことですね(笑)。

―― はい(笑)。

梶本 そういう意味ではやっぱり、リアルさよりもコンテンツや文脈が重要なんでしょうね。もちろんある程度納得させるだけのリアルさは必要だと思いますが、今後も彼は研究を進めていくらしいので、私も楽しみにしています。

「虫HOW?」:特殊な手袋を装着して画面に触れると、腕をアリが這い上がってくる感覚を疑似体験することができる
「Sense-Roid」:特殊なベストを着用し、マネキンのようなロボットを抱きしめると、抱きしめた感触がベストを通して自分にそのまま伝わってくる
「キスデバイス」:ストローのような装置を口でくわえて回転させると、もうひとつのデバイスにその動きが伝わるという作品

∞(むげん)プチプチが与えた衝撃

―― キスデバイスのようなものばかり注目されている印象もありますが、本来この研究室ではどんな研究を中心に行っているんですか?

梶本 一言で言えばヒューマンインタフェースの研究、その中でもやっぱり触覚系が強いですね。私自身もともとは別の研究室でバーチャルリアリティ、特に触覚のバーチャルリアリティについてについて研究していたんです。私たちは「古典的なVR」って言ってますけど、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)とグローブを装着して、画面内のものに触ったり動かしたりできるような。

―― バーチャルリアリティという言葉がちょうど広がりはじめたころのイメージですね。

梶本 そうですそうです。ただこういうのって研究する分には楽なんですけど、結局は“VRのためのデバイス”でしかないんです。それでその後触覚デバイスがどれだけ普及したかというと、結局ほとんど普及していない。実際に使われているものと言えば、携帯電話のバイブだとか、テレビゲームの振動パックとかそれくらい。

―― 確かに、面白いわりには普及していないイメージがあります。

梶本 もちろん高級なところで言えば、内視鏡手術をサポートするためのロボットシミュレーターとか、そういったところでは使われてる。ただやっぱり視覚や聴覚のように、触覚自体がコンテンツになっていかないと、普及まで行くのは難しい。

―― 視覚や聴覚のコンテンツはたくさんありますけど、触覚のコンテンツってどういうものですか?

梶本 たぶん気付いていないだけで、探せば身の回りにもいっぱいあるんです。例えばこのテーブルみたいに、手触りがいいもの。これもある意味では触覚を生かした製品ですよね。

―― ああ、なるほど。なんとなくずっと触っていたくなるようなもの。

とっくり:お酒を注ぐ感覚を疑似体験できるデバイス。あくまで疑似体験なので、いつまでも注ぎ続けることができる

梶本 だからバンダイの「∞(むげん)プチプチ」は、我々触覚研究者にとっては衝撃だったんです。あれって結局、気持ちいいだけで何の役にも立たないですよね。それがあれだけ売れたということは、つまり触覚だけでもコンテンツになり得るということなんです。今日展示していた中では、とっくりがそれに近い。

―― とっくり! あれはすごくリアルでした。

梶本 ともかくそんな経緯もあって、この研究室に移ってからは以前のような“VRの要素技術研究”よりも、もっとコンテンツとして使えるような研究をあえて増やしています。

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