「囲碁ガール」を増やせ かわいすぎる囲碁雑誌「碁的」の華麗なる一手に迫る

「囲碁ガール」のためのフリーペーパー「碁的」は、囲碁のお堅いイメージを180度変えてくれる。中身は「囲碁メン 恋の徹底攻略」「碁クササイズ」といった感じで、女性ファッション誌顔負けだ。

» 2011年10月04日 10時17分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 ファッション誌っぽい雰囲気の碁的

 囲碁と言えば、おじいちゃんが縁側で打っているようなイメージを持っている人は多いのではないだろうか。記者もそうだった。そう、「囲碁ガール」のためのフリーペーパー「碁的」に出会うまでは――。

 碁的は囲碁のお堅いイメージを180度変えてくれる。まずは表紙がすごい。最新号では若手女流棋士の万波奈穂さんがアイドルのようなかわいいポーズで微笑む。表紙に書かれたキャッチコピーは「頭の中からキレイを作る」「囲碁メン 恋の徹底攻略」と女性ファッション誌顔負けだ。

 中身も女性ファッション誌っぽい作りになっている。碁盤と碁石で「二の腕が引き締まる」という「碁クササイズ」の連載に、囲碁ネイルの特集、囲碁合コンの潜入記まである。あれ? 囲碁の解説ページは……と探してみると、「ワンポイント囲碁レッスン」が2ページ掲載されているだけだった。

 ここまで読んでポカーンとしてしまっている皆さん。もしやまだ、囲碁ガールをご存知ない? ならば記者と一緒にちょっと“キラキラ”した囲碁の世界をのぞいてみようではありませんか。「Hello! IGO GIRL!!」。

ボランティアで碁的を作る人々

画像 桝さん

 碁的は2008年10月に創刊された。以後、不定期に発行されており、最新号は今年5月に発行された第4号となっている。発行部数は4万部。全国で無料配布しているほか、公式サイトで内容をPDFファイルで閲覧することもできる。

 発行しているのは、20〜30代の若者に囲碁を普及するために結成されたプロジェクト「IGO AMIGO」の面々。都内の「ダイヤモンド囲碁サロン」に勤める桝由美さん(32)を始め、20〜30代の5人の女性が編集にあたっている。監修は、普段は建築家として働く松原独歩さん(33)だ。

 碁的は、IGO AMIGOが主催するイベント「囲碁フェスティバル」の広報誌として誕生した。小さい頃、祖母に教わって囲碁を始めたという桝さんは「周りに囲碁をやっている友達が全然いないから、若い女性向け囲碁雑誌を作ってみたかった」と話す。

 松原さんによると、囲碁プレイヤーの大半は60代以上で、男性が多い。囲碁をテーマにした少年漫画「ヒカルの碁」の影響で、10〜20代前半のプレイヤーは増えたが、20〜30代前半は「狭間の世代」(松原さん)。碁的はその狭間の世代のプレイヤーを増やすべく、作られている。

画像 左が松原さん

 碁的の編集に携わるメンバーは皆、本業の仕事を抱えながら、ボランティアで協力している。1冊を完成させるのにかかる時間は約3カ月。編集作業中は「みんな寝てないです」と桝さんは明かす。

「囲碁合コン」「囲碁ネイル」はこうして生まれた

 さて、そんな碁的のコンテンツを詳しく見ていこう。最新号の巻頭は、女流棋士・万波佳奈さんの「私、結婚しました」という報告。ウェディングドレス姿で8年間付き合ったという彼について語っている。初公開というエンゲージリングの写真も掲載。囲碁の地味なイメージはまるで感じさせない。

 料理レシピコーナーもある。料理と囲碁は全く関係ないだろ……と思いきや、碁盤の目をチョコレートで描いた正方形のクッキーと、碁石っぽい丸いクッキーのレシピの紹介だった。さすがは囲碁ガール。日々の生活に囲碁が溶け込んでいるようだ。


画像 巻頭は結婚報告
画像画像 これが噂の囲碁メンか!

 碁的のコンテンツは突拍子もない企画ばかりに思われがちだが、大抵は世の中の囲碁ガールたちの実態を反映したものという。例えば、囲碁をたしなむ女性のなかには、碁石を指に挟んだときに1番目立つ中指のネイルに凝る人がいるそう。そんな実際のエピソードをもとにして生まれたのが囲碁ネイルの特集だ。

 囲碁をしながら楽しむ「囲碁合コン」も実際に行われているから、碁的で紹介したという。「飲みながら打ち始めちゃう人いますよー! iPhoneやiPadで囲碁を楽しむ人も多いです。碁的の編集部が仕掛け人やトレンドメーカーという訳じゃなくて既にあるものを紹介しています」(桝さん)


画像 囲碁ネイルは中指がポイント
画像 囲碁合コン
画像 碁クササイズ

囲碁のクラブイベントも 「15人に1人は囲碁ガールにしたい」

画像 毎日jpで連載も

 碁的に対する囲碁界からの反応はどのようなものだろうか。棋士が所属する日本棋院は「影ながらサポートしてくれて」おり、「若い人に囲碁を普及する活動をしている人たちも碁的を喜んでくれている」と松原さんはうれしそうに語る。

 「碁的を配りたい」という碁会所からの申し出も増えている。「碁的を置いておけば若い人が来てくれるんじゃないかと、(囲碁をたしなむ)おじいちゃんたちがヤル気になってくれているみたい」と、桝さんは笑う。

 「毎日jp」で碁的とコラボした連載が始まるなど、知名度も徐々に上がってきた。囲碁(いご)にかけて「女性の15人に1人は囲碁をやっているというくらい囲碁ガールを増やしたいですね」と桝さん。今後はクラブで踊りながら囲碁を楽しむ「碁的ナイト」など、若者向けの囲碁イベントを積極的に開催していく方針だ。

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