たった1人で作った石仏が700体! “へたっぴん”だけど味のある珍スポット「高鍋大師」を訪ねた

仏師ではない、地元のお米屋さんが1人で作った700体の石仏がずらり――宮崎県の「高鍋大師」が味わい深かった。

» 2014年01月10日 10時00分 公開
[姫野ケイ,ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 今、観光地としてひそかなブームが起こりつつある高鍋大師(宮崎県児湯郡高鍋町大字持田)。宮崎県宮崎市から車で40分。海岸沿いののどかな町、児湯郡高鍋町に、一風変わった巨大仏像が鎮座している。

 畑の中の田舎道を車で走っていると、小高い丘の上にトーテムポールのような石像が見えてくる。

石段を上がった丘の上にある高鍋大師。巨大仏像の下の斜面には小さな仏像があちこちに置かれている
石段を登るのがきつい場合は、裏から山道を通って途中まで車で上がることもできる

 丘の上に上がるとたくさんの仏像が。しかし、どう見てもプロの仏師が作ったとは思えない。関節がカクカクしていて腕が垂直だったり、頭の形も絶壁だ。

左:十二めんやくし(十二面薬師)。仏像の名前が仏像自体に刻まれている。漢字とひらがなの混ざった手書き文字から手作り臭が漂う 右:十一めんのくわんのん(十一面観音)。白い歯をむき出しにしてほほえんでいる
アマテラスオオミカミ。「古事記」では太陽の神として登場する。このアマテラスオオミカミ像は髪の毛がドレッドっぽい
3体の鬼
青鬼には「をにあらわれた」の文字が

 これらの仏像を作ったのは高鍋に住んでいた故・岩岡保吉さん。米屋を営んでいた岩岡さんは29歳で四国巡礼に出発したのを機に仏像に興味を持ったそう。当時の高鍋では持田古墳群の古墳の盗掘が相次ぎ、それに心を痛めた岩岡さんは、古墳の霊を鎮めるために仏像を作り始めたという。1977年に87歳で逝去するまで、岩岡さんは自由な発想で700体以上の石像を制作した。十二めんやくしや十一めんくわんのんの胴体には「岩岡山七十五戈のサク」と刻まれている。像の高さは7〜8メートルほど。こんな巨大像を75歳のときに作っただなんて、いやぁ、おみそれいたしました!

丘のふもとには持田古墳群。茶畑の合間合間にポコンポコンと隆起しているのが古墳

 仏像だけでなく、誰でも一度はテレビで見かけたことのある像も……。「みとこもん 人を たすけ まわる」の両端に「すけサん」と「かくサん」。水戸黄門だ! 86歳のときの作品ということは、亡くなる前年に作り上げたということだ。

水戸黄門
左:天上天下唯我独尊 右:「カゼのかみ」。力強い腹筋を描いているようだが、三段腹に見えてしまう……
正一いいない大神(正一稲荷大神)
巨大なお坊さんが手に下げているのは……? 正解は「からいも」。南九州の方言でサツマイモのことを「からいも」と呼ぶ。からいもと書かれていないと分かりづらいかも?
この像、何か目に違和感があると思ったら、目ん玉にプラスチックのお椀をひっくり返したようなものがはめ込まれているではないか。しかも、右目は上を向き、左目は正面を向いていて、完全に目がイってしまっている
よく見ると抱っこしている子どももプラスチックの目ん玉。左目が外れてしまっていてなんだか怖い
和風ヴィーナス像といったところ

 巨大像のほか、高さ50センチほどの小さな像も多くたたずんでいる。

みんなで輪になって手をたたいて楽しそうと思いきや……
左から3番目の像が思いっきり真顔だった
「うぇ〜ん」という泣き声が聞こえてきそう
市井の人をモデルにしたらしき像も。「たなべちずこ 四十七才」。たなべさんて誰だろう……
3頭身のおじさん。「明治百年」としか刻まれていないので誰だかは不明
見ざる言わざる聞かざるシリーズ。「ためにならんことみらぬ人」「ためにならんこといわぬ人」「ためにならんこときかぬ人」
「地獄」シリーズ。右は極楽ゆき、左は地獄ゆき。下には「サんずの川のわたしちん」とあり、三途の川を渡っている人がいる
左:地獄ゆき 右:極楽ゆき
「とりをころした人」や「うしやうまをいじめた人」は地獄に落ちる
「人をころした人 かがみうつる」。どんな完全犯罪であろうと、神様はお見通しということ
悪い行いをして地獄に落ち、「火の車にのせられた人」
動物の像もあった。こちらは鶏
鶴もいるよ! 全体的に太め
すごく喜んでいる人たち

 一通り石像を見た後、境内にてお参り。奥には金ぴかに輝く祭壇が祭ってある。

 高鍋大師についてリサーチしたところ、「たか鍋大師くん」なるゆるキャラが存在することが判明。それがこちら。

 なんともかわいらしいお姿。缶バッジやぬいぐるみなど、たか鍋大師くんグッズも販売されている。「十一めんくわんのん」をモチーフにしているということだが、たか鍋大師くんを知った後に高鍋大師へ本物の「十一めんくわんのん」を見に行くと、そのギャップに驚くことだろう……。

 気が抜けるようなへんちくりんな、でもどこか愛嬌(あいきょう)のある仏像の数々。宮崎県へ行く機会があったらぜひ高鍋大師まで足を伸ばし、味わい深い石像たちを実際に見ていただきたい。また、遠くて行けないという方には、「へたっぴんの美学」(ブレーンセンター)という高鍋大師の写真集も出版されているのでチェック!

石像たちが眺めている高鍋大師からの景色。畑の向こうには、青い海と空が広がっている

姫野ケイ:フリーライター・コラムニスト・作家。1987年9月7日生まれ。宮崎県宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社のアルバイトにて編集業務を学びつつ、ヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れるバンギャル。2010年度南日本文学大賞最終ファイナリスト。現在はWebやスポーツ新聞にてコラム・小説を執筆中。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2408/31/news036.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほどの変貌が379万表示「そこだけボッ!ってw」 半年後の現在について聞いた
  2. /nl/articles/2408/30/news121.jpg 「地獄絵図」「えぐすぎやろ……」 静岡・焼津市の地下歩道が冠水 “信じられない光景”にネットあぜん
  3. /nl/articles/2408/31/news073.jpg 「よくこんなものが……」 米不足でメルカリに米出品→疑問の声も 運営は“禁止出品物”に「然るべき対応」
  4. /nl/articles/2408/31/news025.jpg 次男に塩対応の柴犬、いよいよ次男の帰省最終日を迎え…… 本音が出た瞬間に「不意に泣かせるのやめて欲しい」と感動の声
  5. /nl/articles/2408/30/news017.jpg 最上位グレードのハイエースを“50万円の底値”で購入したら…… 驚きの実物に「ある意味最強」「正直、羨ましい」
  6. /nl/articles/2408/30/news188.jpg 実写「着せ恋」、キャストに物議 海夢の再現度が高すぎるタレントを推す声あがる 「逆になんであかせあかりさん以外の人……」
  7. /nl/articles/2408/29/news193.jpg 「なんで欲しいと思ったんですか?」 酔った勢いで購入 → 後日届いた“まさかの商品”に反響 「理性あったら買わないw」
  8. /nl/articles/2408/28/news142.jpg 明石家さんま、69歳バースデー迎え長男から幸せ呼ぶ“輝かしいプレゼント” 同席した元妻・大竹しのぶは「最高の笑顔でした」
  9. /nl/articles/2408/31/news084.jpg 仕事早いな! 大谷翔平の愛犬“デコピン”、大反響の始球式がさっそくTシャツ化 「こ、これは……」「欲しい!」と爆売れの予感
  10. /nl/articles/2408/30/news113.jpg 「これ600円なの?」 大谷翔平が長く愛用しているデコピンの“おやつ入れ”、始球式で注目「おそろだった」「真美子さんが選んだのかな」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  2. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  3. 「苦手な芸能人は誰?」 あのちゃん、女性芸能人を“実名で即答” 「ここ最近で一番笑った」「強すぎる」
  4. ホテルでチェックアウト、忘れ物で多いのは? ホテル従業員が教える「圧倒的に多い忘れ物」
  5. 乳がん闘病中の梅宮アンナ、抗がん剤治療で「髪の毛ほとんどなくなっています」 帽子かぶり「ああ、来たか」
  6. 「キティちゃんのお面だと思ったら……」 ひっくり返すと“まさかの正体”に11万いいね
  7. 「凄すぎる…」「ガチで滝」 “市ケ谷駅の冠水”が衝撃与える 階段に大量の水が流れる様子も…… 東京メトロに経緯を取材
  8. 「早すぎます」「一体なにが」 52歳ボディービルダー、訃報1週間前に最期の投稿で“人生初の試み” 恋人は「亡くなる数時間前まで普通にお出かけも」
  9. お盆で帰省した次男に、柴犬も猫もまさかの反応→どちらも豹変して爆笑 「涙出てきました」「おもろ可愛過ぎ(笑)」
  10. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」