Pepperはなぜあのキャラクターになったのか 極秘開発プロジェクトが宿らせた「魂」
「1年半、誰にも言えなかった」
先日、ソフトバンクの孫正義氏から発表されたパーソナルロボット「Pepper」。ソフトバンクモバイルとフランスのロボットベンチャー「ALDEBARAN Robotics SAS」の画期的な取り組みとして話題になった。
しかし、「Pepper」のちょっとクセのあるキャラクターとパフォーマンス、そしてあの記憶に残る記者発表会。一体誰が仕掛けたものなのか。
実は、「Pepper」の記者発表会の演出は「よしもとロボット研究所」のメンバーが仕掛けたもの。よしもとロボット研究所は、お笑いでおなじみの吉本興業が6月5日に設立した子会社だ。Pepperのハードとソフトウェアは、多くのマスメディアで報じられているようにALDEBARAN Roboticsが開発したもの。一方、会話やダンス・キャラクター設定といったアプリケーションの開発は、それとは全く別のチームが開発している。
Pepperのアプリケーション開発は主に3つのチームに分かれている。1つは、会話や感情エンジンを担当するチーム。もう1つは、Pepperのダンスを担当するチーム。そして、今回取材した発表会の演出やキャラクター設定に携わるチームだ。取材では、よしもとロボット研究所のチーフクリエイターの高(ハシゴの高)橋征資氏(バイバイワールド)とシン・キョンホン氏(バイバイワールド)、よしもとクリエイティブ・エージェンシーの家永洋氏に話を聞くことができた。
「Pepper」は超極秘プロジェクト
「とにかく1年半、情報が漏れることが恐かった」――Pepperのアプリケーション開発にかかわったシン氏は言う。
「画像やその他の情報流出が一切なかったのは奇跡です!」。シン氏は何かに解放されたように、生き生きと話した。
何しろ、Pepperの開発は超極秘プロジェクト。厳しいNDAを交わし、親にも内緒で進めていたという。毎日メールの宛先を入念に確認し、「最近何やっているの?」という友人との何気ない会話でも「ん? Webサイト作ってるよ!」などとウソをつかなければならなかったという。現在このチームには10人ほどのエンジニアが集まっているが、開発メンバーを集める際にも「信用のおける人を選ぶ」という意味で苦労したようだ。
なぜ「よしもと」だったのか
ところで、なぜ「よしもと」なのか。きっかけは「ソフトバンクの店舗にロボットを配置するため、何か面白いコンテンツを考えられないか」との話がソフトバンクからきたことが始まりだった。あまり知られていないが、吉本興業は近年デジタルにも力を入れているようだ。
Pepperの目指すところは、「接した人々をより笑顔にすること」。「イイコちゃん」ではなく、「ひょうきんな愛されキャラ」にしたのはこのためだ。Pepperのキャラクターについて「正直まだまだPepperはできないことが多いのが現状ですが、ときには面白おかしく、みなさんにあたたかく成長を見守ってもらえるキャラクターになってもらえればという思いを込めました」と、高橋氏は語る。
アプリケーション開発の実動部隊となった高橋氏とシン氏は、2012年1月ごろからこのプロジェクトに参加。2カ月に1度孫社長とのミーティングを繰り返したという。「孫社長と一緒に発表会の演出について考えました。そのときに、必ず動くプロトタイプを作って持って行くようにしていました」と、高橋氏は話す。
ソフト開発に選ばれた「バイバイワールド」だが、実は最初から開発を任されていたわけではなかった。よしもとクリエイティブ・エージェンシーの家永洋氏は、バイバイワールドの2人と手を組むことになった経緯を次のように話した。「当初は違う会社に開発を依頼しました。そのときは、実装してほしいロボットの動きを人間が行い、全てビデオに撮り開発会社に渡していました。しかし、イメージしている動きをロボットで再現してもらうことは非常に難しいことでした。人間とロボットでは動きが明らかに違うので、伝えることが難しいのです。そのとき、開発者も笑いが分かる人でなければダメだと思いました。この2人にお願いしたのは、そういった理由からです」(家永氏)。
例えば、「手首を動かす」という動作をPepperで表わしたい場合、Pepperは手首を動かすことができないためデフォルメする必要がある。このことについて、高橋氏は「Pepperに動きを与えていくことは、アニメーション作品を作る感覚に似ています」と例える。
そして「あの」記者発表会――Pepperは実際に音認識をしていた!
そして迎えた6月5日の記者発表会。発表会では、リアルタイムでのデモンストレーションがあった。内容は、「会場の記者の呼びかけに対し、声のする方向をPepperが『右』『左』と反応する」といったものや「Pepperが孫社長との距離を測る」といったもの。リアルタイムのデモンストレーションにしてはうまくいきすぎており、「あれはシナリオとして用意されていたものではないのか」との声も上がっていた。しかし、開発者のシン氏によると、この部分は間違いなく実際の距離や方向に基づいて反応したものだそうだ。
発表会に向けては、照明の具合で顔認識ができなくなったり、ホールの反響によって音への反応が鈍くなってしまうことなどを考慮し、2カ月ほど前からチェックしていたのだという。
また、発表会のPepperの「間」は、予想以上に計算されたものだったようだ。紙の台本上では「・・・」とだけ書かれており、あとは開発者に任せられた。0.2秒違うだけで空気感が変わってしまうため、わずかな秒数までもこだわって作ったという。「要は、芸人のネタ作りと同じです」と家永氏は述べる。
これまでの報道にもある通り、Pepperはフランスを始めとする海外の技術者の力に支えられて誕生したロボットであることに間違いはない。しかし、これまでのロボットになかったPepperのひょうきんなキャラクターには、日本の若い技術者たちによって吹き込まれた「魂」が宿っているのである。
関連記事
- ソフトバンク「パーソナルロボ」披露 2015年2月に一般発売
お値段19万8000円。 - 歩きスマホ防止アプリ、ソフトバンクモバイルが公開
無料のAndroidアプリ。歩行中であることを検知し警告します。 - IE禁止の会社も:「IEの脆弱性」が騒がれてるけどどうしたらいいの?
「IEヤバイ」という声が高まっていますが、どんな対策を取ればよいのでしょうか? 専門家に聞いてみました。 - 携帯6社がキャリアメール・SMSの絵文字を共通化
他社の携帯に送った絵文字が別のものに置き換わったり、文字化けする問題に対処する。 - 走らせ放題、飲み放題! ミニ四駆バーが東京・高円寺に誕生
開店早々「ソフトバンク」のCMのダンテさんが訪れていました。 - イー・アクセスがヤフー傘下になり「ワイモバイル」に ネットでは関西弁っぽいとダジャレ飛び出す
ワイ、ビックリ。 - 「iPhoneを盗まれて99万円の高額請求」話題に 海外で盗難に遭ったら?→すぐに回線の停止を
携帯を盗まれて悪用されて高額請求――そうならないために、なるべく早く利用停止の手続きを。 - 大河原邦男デザインのiPhone 5s/5用ジュラルミンケースがかっこいい
これはいいものだ。 - LINE、iPhoneでも18歳未満ユーザーのID検索を制限
Androidで実施していたLINE ID検索利用制限をiPhoneでも。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
-
「博物館行きでもおかしくない」 ハードオフ店舗に入荷した“33万円商品”に思わず仰天 「これは凄い!!」
-
家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
-
「マジかーーー!」 新札の番号が「000001」だった…… レア千円を入手した人が幸運すぎると話題 「555555」の人も現る「御利益ありそう」「これは相当幸運」
-
浅田真央、男性と“デート” 驚きの場所に「気づいた人いるかな?」
-
身内にも頼れず苦労ばかりの“金髪ギャルカップル”→10年後…… まさかまさかの“現在”に「素敵」「美男美女でみとれた」
-
海岸で大量に拾った“石ころ”→磨いたら…… 目を疑う大変貌に「すごい発見!」「石って本当にすてき」【カナダ】
-
トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
-
生後1カ月の保護子猫、後頭部を見るとあのアルファベットが……→9カ月の現在にびっくり 「プレミアム猫」「本当にPですね」
-
辻希美、17歳長女・希空に「ダサすぎるって」とツッコんだ格好
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
- 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
- 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
- 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
- セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」