私が今日死ぬからみんな優しくするの? 少年少女に突きつけられる「五時間目の戦争」の(非)現実:虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第46回
毎週金曜、五時間目。もしも「戦争へ行け」と言われたら……。
ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。
気になったマンガをネットでポチるどころか電子書籍までもが当たり前になりつつある昨今ですが、社主はいつも近所のリアル書店でマンガを買っています。
理由はいくつかあって、その1つはWebサイトではまだ一覧性に欠けること。1冊1冊の情報を詳しく見るにはネットが便利ですが、書店の本棚なら一度に十数冊くらい視界に入るので、短時間でたくさんのマンガを見ることができます。
もう1つは作品に対する余計な偏見を持たずに済むこと。書店で平積みされていたり手書きのポップが立ったりしているマンガは「これ売れてるんだな」とか「ああ、店員さんおすすめなのね」とか、ポジティブな情報だけが入ってきますが、アマゾンなどで買おうとすると購入者レビューと評価が目に入ってしまって、ましてやそれがネガティブなものだと、どうにも買おうという気分が下がってしまいます。
じゃあレビューは参考にならないのかと言うと、そうではなくて、社主の場合はマンガを読み終えた後にレビューを読んで「うんうん、そうだよな」とか「んん?」とか「ちょっと屋上来い」とか、自分の抱いた感想と比べるのに使っています。マンガトークできる相手がいない社主にとって、読後のレビュー閲覧はちょっとした楽しみでもあります。
さて、前置きが長くなりましたが、今回取り上げるのは「ヤングエース」(KADOKAWA)にて連載中、優先生の「五時間目の戦争」(~2巻、以下続刊)です。
金曜日の五時間目、時間割に刻まれた「戦」の文字
日本が正体不明の敵と戦争を始めて5年。瀬戸内海の離島「青島」に暮らす少年・双海朔(ふたみ・さく)は、中学3年生として迎えた新学期初日、金曜5時間目の時間割に見慣れぬ「戦」の文字を見つけます。
離島ゆえに1クラス、いつものクラスメイトと迎えた新年度最初の朝の会。担任のクマ先生は朔たちに告げます。
「あと突然やが/三年生のみなさんは/戦争やるで/毎週金曜日の五時間目な」
毎週金曜5時間目、指名されたクラスの生徒が本土に渡って戦闘に加わり、その日のうちに帰島する――。戦時下法令による出征を突如告げられ、ざわつく教室。すでに自衛隊・民間人合わせて75万人以上の死者が出ているこの「戦争」で、親だけでなくその子どもにまで出征が求められるほど戦況は悪化していたのです。
ただし、出征できない不適格者がクラスに2人いました。1人は朔の幼なじみで、料理が得意な安居島都(あいじま・みやこ)。そしてもう1人は朔。
運動が苦手な都はともかくとして、中1のとき陸上の全国大会に出たこともある朔がなぜ不適格なのか。自分でも納得のいかない朔ですが、最初に出征を告げられたのは、その朔が気になっている、東京から疎開してきた少女・篠川零名(しのかわ・れいな)。東京で大切な人が出征して死んでいく様を見、転校初日「私は田舎が嫌いです」と言い放ってクラスメイトと距離を置いた彼女が最初の出征者に指名されたのです。
零名が出征する金曜の朝。それまで距離を置いてきた同級生たちも軍服に身を包んだ彼女を見送ります。手書きのメッセージを添えた手紙を渡す女子。「後ろのほうに隠れとけば大丈夫やろ」「前線で活躍してこい」「待っとるけんね」など零名に声をかけます。
「――行ってきます」
心配そうな顔で見送るクラスメイトを背に、零名はかすかに涙を浮かべ島を発っていきました。
「戦闘」の代わりに描いたもの
毎週金曜日の5時間目、生きて帰れるか分からないままクラスメイトが出征していくという状況で、「欠陥品」として為す術なく見送るしかできない朔と、ご飯を作ることしができないけれど、どこか抜けたドジっぽさ、明るさでクラスの雰囲気を保ってくれる都。
作品全体としては島における戦争の日常を暗くなり過ぎないように描きながらも、最新2巻では給食がなくなったり、体育の授業が軍事訓練に変わったりするなど、外堀を埋めるように戦局は悪化する一方。優先生のやわらかい筆致で描かれる人物のかわいらしさも相まって、得体の知れない戦争を目の前に、かわいらしい彼ら彼女らが悩み傷つくのは読んでいて本当に胸が痛みます。つらい。
そしてまた、社主が本作で秀逸だと思うのはこの「戦争なのに戦闘を描かない」という点なのです。冒頭少し書いたように、本作読後に社主が読んだアマゾンのレビューで評価が割れたのもこの点で、その感想には納得のいかないところが多々ありました。
「戦闘を描くだけが戦争ではない」というのは、以前速水螺旋人先生の兵站マンガ「大砲とスタンプ」(~4巻、以下続刊/講談社)を紹介したときにも書いた通りですが、本作の場合「知恵の輪」と呼ばれる偵察機らしい物体が登場する以外は敵の正体も目的も謎、そもそも何のために戦っているのかも謎というSF的不条理設定で、そんな状況に置かれながらも、なお子どもたちが懸命に生きようとするドラマにこそ胸を打たれるのです。
「舞台が日本なのだから侵略者が来たら他国の対応についても考えないと」とか「中学生がいきなり徴兵されて戦地に赴くとか国の体制はどうなってるんだ」とか、この「五時間目の戦争」においてそういう条理ある要素を排除したのは、戦争という生死を賭けた状況に否応なく置かれることになった子どもたちの感情だけに焦点を当てるため意図したものでしょう。
戦闘のリアリティを「あえて描かない」本作において、これら具体性に欠けるという指摘は詩の表現に対して文法的誤りを指摘するような的外れであるように思います。
と、まあちょっと今回は真面目っぽく書いてみましたが、社主の考えが的を射ているかどうかは実際にお読みいただいた上で判断していただければと思います。PCのスペックやベンチマークなどと違って、マンガや音楽は目に見える数字がそのまま自分の満足に当てはまるわけではありません。どちらかと言うと、自分と趣味の近い人のお勧めを買っていくほうが当たりは多いのではないでしょうか。
なお社主にはお勧めしてくれるマンガ友達がいないので、当たりもハズレも含めひたすら物量で攻めるしかありません。物量で(泣)。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
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