ぎょうざカレーの「みよしの」は札幌の老舗ファストフード! 味の秘密や謎テーマソング配信の理由を聞いてきた
毎日でも食べられるぎょうざとカレーの謎と、あの「暴挙」が生まれた理由とは。
北海道・札幌には、ぎょうざ専門店なのにぎょうざだけでなくカレーも人気のファストフードチェーン店の「みよしの」(1967年創業)があります。その中でも定番のメニューとなっているのが“札幌市民のソウルフード”と言われる「ぎょうざカレー」。カレーの上にぎょうざが3つトッピングされたぎょうざカレーは390円で、その安さと毎日食べても飽きない味で根強い人気となっています。
そんな「みよしの」が、先日特撮ソングっぽいテーマソングを作り全世界に向けて配信を行い、札幌市民がざわつく事態に発展しました(関連記事)。なぜこんなことをしたのだろうと気になっていたところ、みよしのが東京で展示会に出展するという話が……。神タイミングすぎる! というわけで、スーパーマーケットトレードショーで直接話を聞いてきました。
話を聞いたのは、みよしのを経営するテンフードサービスの営業企画マネージャー、瀧原泉さん。今回全世界配信されたテーマソング企画の担当者でもあります。
ぎょうざとカレー、味の秘密
まずはみよしののぎょうざの、あのガツンとしたうまみの秘密を聞きました。みよしののぎょうざは、牛・豚の合い挽き肉を使い味付けを濃いめにして提供しているのだそう。北海道の人は濃い味が好きな人が多いためです。たれをつけずに食べてもおいしく、あっさり系のぎょうざとは違う味わいがあります。また、普通のぎょうざは豚挽肉だけを使うことが多いので、ぎょうざの専門店で合い挽き肉を使うのは珍しいと思います、とのこと。確かに珍しい……。
ぎょうざの皮は薄め。皮が薄いために肉のうまみが皮にしみこまずダイレクトに口の中に広がります。ガツンとした肉のうまみを最初に感じるのですが、不思議と肉くささは感じません。あっさりという訳でもなく、かといってこってりしている訳でもない、絶妙な味わいです。
みよしのはチルドぎょうざも販売していて、札幌市民でみよしのの店舗には行ったことがないけど、チルドのぎょうざを食べたことがある人は多いのでは、というほど浸透しています。札幌出身の筆者も実家にいたころはチルドぎょうざをよく食べていました。
そして、ぎょうざカレーのキモとなるカレー。誕生は1977年。当時は「びっくりカレー」という名称で、190円で販売されていたのだそう。びっくりカレーの名称は、びっくりするほど値段が安いからという理由で名付けたそう。現在その名前はありませんが、カレーは人気メニューとなっています。
ぎょうざカレーはカレーと同時に誕生。そのきっかけは、「うちはぎょうざ専門店なんだから、ぎょうざをカレーの上にのせて食べたらおいしいのでは」という考えから。現在の390円でも安すぎるのに、発売当時は260円で販売していたというから驚きです。安いよ! トッピングの概念崩れるほど安いよ!
カレーは比較的スパイシーな味わいですが、ルーの中にたまねぎやにんじんなど細かく刻まれた具材が入っていて、後味が残らずあっさりと食べられます。「毎日食べても飽きないぎょうざやカレーを目指している、だから値段を安くしているんです」と瀧原さん。「ファストフード店」としての立ち位置だからこそ毎日でも来てほしい、という願いがここにありました。ちなみに、レトルトのカレーも販売していて、こちらは店舗で食べるものよりやや辛めに作られているそうです。
テーマソングの配信はなぜ?
今回いちばんの疑問だったのが、「札幌の一企業であるみよしのが、なぜアニソンっぽい曲調のテーマソングを作り全世界配信したのか」ということ。その疑問をぶつけてみたところ、「みよしのの客層をもっと広げていくための施策の1つ」であることがわかりました。
みよしのの客層は札幌でファストフード店が少なかった時代を知っている30〜40代以降が中心。ある時、高校時代を札幌で過ごした大学1年生にアンケートをしたところ、5割近くがみよしのに行ったことがないことがわかりました。ファストフードの選択肢が増えている現在、若者世代にみよしのを知って親しんでもらうためにはどうしたらいいかと悩んでいたとき、外部のブランド戦略を専門とする会社から「アニソンっぽいテーマ曲を作ってインパクトを与えてみてはどうか」という意見が出たのだとか。最初はその意見に乗り気ではなかったものの、若者世代にみよしのの存在を知ってもらえるならば面白いかもしれない、と考え、今回のテーマソング作成に至ったそうです。
ちなみに、社員にできあがったテーマソングを聞いてもらったところ、「みよしのってこんな感じだったかな……?」と全員首をかしげていたそう。まあ、そう思うよね……。「(首をかしげる反応は)むしろみよしのを知ってる人の一般的な反応だと思います」と瀧原さん。「SNSなどでこのテーマソングが拡散され、聴いた人がみよしのに興味を持ち、行ってみたいと思ってくれれば、たとえ暴挙と言われても狙い通りのことなんですよ」。実際、TwitterやFacebookでの反響や、記事で取り上げられた後の反応はかなり多くて、拡散力のすごさを実感したのだとか。
現在はテーマソングの台湾バージョンを制作中で、2月末〜3月初旬に北京語(台湾でよく使われている)で公開できるよう、ネイティブに歌詞を見直してもらっている最中。「札幌に来たらみよしのにきてね!」という歌詞になるそうで、外国人観光客にもみよしのを知ってもらえれば、との思いがあると話していました。
最後に、みよしのの道外進出はあるのか聞いたところ、「実際に道外進出の話は出るが、現在のところ今すぐにという意味では可能性は低い」との回答。というのも、みよしのは自社工場で作ったぎょうざやカレーを店舗で提供しているために、工場から配送できる範囲が限られているから。自社工場を道外に作ることができれば進出は可能であるものの、ぎょうざ専門店が多い地域に進出するとなると、今以上の競争を強いられることになる。それならば、札幌市内や道内で店舗がない地域に出店する形を目指していく、という考えなのだそうです。やはり本州に出店することは難しいものなのですね……。
ちなみに、みよしののぎょうざとレトルトカレーは通販もやっていますが、チルドぎょうざは1パック12個入りで6パックから、レトルトカレーは20パック1ケースからの販売となっています。今回、展示会に参加したのは、チルドぎょうざの魅力を伝えるとともに、本州のスーパーなどで販売が可能なことをアピールするためだとか。チルドぎょうざ、関東で販売されるといいな……。
(あまにょん)
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