「パズドラ」「モンスト」いまだに“確率表示なし”はセーフか ガチャ問題、4月1日から施行された「新ガイドライン」の影響は

ユーザーからは「4月になったけど、ガチャ確率表記は?」といった声も。

» 2016年04月07日 15時30分 公開
[池谷勇人ねとらぼ]

 ガチャの排出率や確率表示などのルールについて定めた、日本オンラインゲーム協会(JOGA)の新ガイドラインが4月1日より施行されました。しかし今のところガチャに上限額を設けたり、確率表示に踏み切ったりする動きは見られず、一部では「4月になったけど、ガチャ確率表記は?」といった声もみられています。

 そもそもこのガイドラインはどういったものなのか。ガイドラインにはどの程度強制力があるのか。JOGA事務局に聞きました。


JOGA新ガイドラインの影響


話題になった「上限5万円」「確率表示」実際は?

 「ガチャの確率表記は強制ではなく、ガイドラインでは4つある条件のうちどれかを満たせばよいということになっています」(JOGA事務局)

 今回、事前の報道では「アイテムごとに個別の確率を明記する」「ガチャレアアイテムの入手にかかる推定金額は最高でもガチャ1回あたりの課金額の100倍以内、もしくは5万円以内とする」といった部分が注目されていましたが、事務局によれば、これは必ずしも満たさなければいけないわけではないとのこと。

 ガイドラインでは以下の4つのうち、いずれかを満たすように定めています。


a. ガチャレアアイテムの取得にかかる推定金額は有料ガチャ1回あたりの額の100倍以内とし、これを超える場合はその推定金額や倍率を表示する

b. 同金額の上限は「5万円以内」とし、これを超える場合はページ内に推定金額や倍率を表示する

c. ガチャレアアイテム出現率の上限と下限を表示する

d. アイテムごとの出現率を表示する

ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン 3.有料ガチャの設定に関する事項(1)より(文章は編集部側で少し噛み砕いています)



 この中で「確率表示」にあたるのはcとd。確率を表示していなくても、aとbのいずれかを満たしていれば問題ないということになります。

 またaとbについても、「ガチャレアアイテム」という言葉が指す範囲については「個々のゲームによって異なるものと思われます」(JOGA事務局)とのこと。

 たとえばR(レア)、SR(スーパーレア)、SSR(ダブルスーパーレア)というレア度があったとして、ゲーム運営側が「SSRはすべてガチャレアアイテム」と定義していた場合、「ガチャ1回あたりの課金額の100倍以内、もしくは5万円以内でSSRのどれか1つが当たればOK」ということになります。この場合、SSR全体の合計期待値が「100倍/5万円以内」に収まってさえいれば、個別のSSRアイテムについては、たとえば0.1%やそれ未満の提供割合であっても問題はないそうです。

 なお、これらのルールは2012年のガイドライン制定時から存在していたもの。一部のニュースでは、4月からの改訂で新しく盛り込まれたように報じられていましたが、これについてはJOGAも公式サイトで否定しています関連記事)。





「パズドラ」「モンスト」のガイドラインへの見解は

 こうして見ると、確かに提供割合や確率表記について最低限のルールは定めているものの、実際の運用についてはかなりあいまいであることが分かります。個別のアイテムについて「100倍/5万円以内」なのか、それともSSR全体で「100倍/5万円以内」なのかではまったく意味が違ってきます。

 ちなみに「パズル&ドラゴンズ」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)も「モンスターストライク」(ミクシィ)もJOGA会員企業ですが、どちらのタイトルもいまだにガチャの確率は表示していません。両社にガイドラインの順守状況について問い合わせたところ、回答は次のとおりでした。

「ガイドラインにつきましては、これまで同様aを採用しております」(ガンホー)

「モンスターストライクでは、aを適用しております」(ミクシィ)

※ガンホー側から連絡があり、コメント内容を一部差し替えています

 また4月以降の対応についても聞いたところ、それぞれ「2012年のJOGAガイドライン施行開始より、弊社はガイドラインに準拠して対応しておりますので、4月1日以前と以降で大きな変更はございません」(ガンホー)、「4月1日以前と以後とで変わりはございません」(ミクシィ)とのことでした。


JOGA新ガイドラインの影響JOGA新ガイドラインの影響 「パズドラ」のガチャ画面(左)と「モンスト」のガチャ画面(右)。いずれも確率表示はなし


調査方法は「年に数回のアンケートとヒアリング」

 ガイドラインが守られているかどうかについては、抜き打ちでの検査などは行っていないものの、「年に数回、会員企業に対しアンケートとヒアリングで調査を行っています」(JOGA事務局)とのこと。今のところ罰則や強制力はありませんが、調査の結果、守っていないところがあった場合は理由を問い合わせたり、ガイドラインを守るよう事務局からゲームメーカー側に働きかけたりしているそうです。

 アンケート調査だけでは「自己申告」でOKになってしまわないか、という懸念もありますが、これについては「だいたい正直に答えていただけていると思っています」と事務局。加えて、国民生活センターや消費者庁などとも連携しており、もしもクレームが届いた場合は会員企業に随時通達し改善を求めているとのこと。

「今のところ2回、3回と同じクレームが来たり、大きなトラブルに発展したりといったことは起こっていませんので、適切に運用できているのではと思います」(JOGA事務局)

 また、これ以外にもJOGAでは取り組みの一環として、会員企業から表記や設定に関する相談を受けたり、定期的にセミナーを開催したりすることでガイドラインの順守と啓発に努めているそうです。


JOGA新ガイドラインの影響 国民生活センターのサイト。何かあればここから情報提供すれば、JOGAを介してメーカー側に伝わるとのこと


現状の「JOGAガイドライン」の問題点

 もともと今回のガイドライン改訂は、これまでPC・スマートフォン用に分かれていたガイドラインを統合するために行われたもの。内容そのものは、実は2012年に制定されたものから大きくは変わっていません。

 しかし現状、いまだにゲームの「ガチャ」が大きな問題になっていることを踏まえて考えると、このガイドラインが適切かどうかは疑問が残ります。

 特に取材して気になったのは、「ガチャレアアイテム」の指す範囲が運営側任せになってしまっており、実質「アイテムごとに個別の確率を明記する」「ガチャレアアイテムの入手にかかる推定金額は最高でもガチャ1回あたりの課金額の100倍以内、もしくは5万円以内とする」がほとんど機能していない点です。

 たとえばユーザーが本当に欲しいのは、現実には「数あるSSRのうちの特定の1つ」だったりしますが、メーカー側がもし「SSRすべて」をガチャレアアイテムと定義していた場合、仮に「100倍/5万円以内」でSSRのどれかが出たとしても、ハズレSSRを引いてしまったらなんの意味もないことになってしまいます。


JOGA新ガイドラインの影響 せっかくSSR当たったのにお目当てのSSRじゃなかった……

 また調査方法についても、あくまで「アンケート・ヒアリング」がベースである以上、メーカー側の「自己申告」に頼りすぎている感は否めません。国民生活センターなどと連携しているとは言っても、現実にガチャが社会的な問題となっている現状に照らし合わせると、本当にすべての問題に対応できているかは疑問です。



今後は前向きな取り組みも

 ただ、前向きな取り組みもみられます。現状すべてのオンラインゲーム会社がJOGAに加入しているわけではありませんが、3月24日にはもう1つの業界団体であるモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)と今後ガイドラインを共有していくことも発表しています(関連記事)。

 JOGAには現状、「パズル&ドラゴンズ」のガンホー・オンライン・エンターテイメントや「モンスターストライク」のミクシィなどが加入していますが、一方MCFには「グランブルーファンタジー」のCygamesや、「白猫プロジェクト」のコロプラ、「実況パワフルプロ野球」のコナミデジタルエンタテインメント、「アイドルマスター シンデレラガールズ」シリーズのバンダイナムコエンターテインメントなどが所属しています。今後はMCFの所属企業をはじめ、JOGAに加入していない企業やタイトルにもガイドラインの順守を求めていくとのこと。ガイドラインそのものについての疑問はさておき、業界全体で問題を共有していくのは大きな前進と言えます。

 「グランブルーファンタジー」の炎上をきっかけに、ふたたび問題視されつつある「ガチャ」。ユーザーからは「早く確率を公表してほしい」「法規制される前にできれば業界側からの自浄を」など、業界団体の働きに期待する声もあがっています。


JOGA新ガイドラインの影響 早く健全化してほしいものです

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」