ニュース
» 2016年04月22日 09時22分 公開

「正常性バイアス」とは、災害時や緊急時に「自分は大丈夫」と思い込んでしまう、危険な脳のはたらき

「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き……。

[日本気象協会 tenki.jp(http://www.tenki.jp/)]
Tenki.jp

 人間には心の平穏を保つ働きが備わっており、日常で問題に直面したときにも、それなりに対応できる力があります。でも、想定外の出来事に遭遇すると、このはたらきが過剰反応し、脳が処理できなくなることがあり、これを「正常性バイアス」といいます。

 平成28年熊本大地震では、本震と余震の逆転や頻発する地震など「想定外」が頻発しています。亡くなられた方々にお悔やみ申し上げ、被災された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、「正常性バイアス」についてご説明します。

正常性バイアス さまざまな要素で構成される人間心理(psychology)……そのメカニズムは深奥です

「正常性バイアス」とは?

 「正常性バイアス(normalcy bias)」は、心理学の用語です。社会心理学や災害心理学だけでなく、医療用語としても使われます。人間が予期しない事態に対峙したとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働き(メカニズム)を指します。

 何か起こるたびに反応していると精神的に疲れてしまうので、人間にはそのようなストレスを回避するために自然と“脳”が働き、“心”の平安を守る作用が備わっています。ところが、この防御作用ともいえる「正常性バイアス」が度を越すと、事は深刻な状況に……。

 つまり、一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、“脳”の防御作用(=正常性バイアス)によってその認識が妨げられ、結果、生命の危険にさらされる状況を招きかねないのです。

逃げ遅れの心理「正常性バイアス」の恐ろしさ

正常性バイアス 的確な行動を取れるよう普段から防災意識を高めましょう

 甚大な被害を出した東日本大震災では、「大地震の混乱もあり、すぐに避難できなかった」「あれほど巨大な津波が来るとは想像できなかった」と思った人がたくさんいらしたことが、のちの報道によって明らかになりました。

 そう話していた人々が住む地域には、大型防潮堤などの水防施設が設置されていた……、また10メートル超の津波を経験した人がいなかった……などのさまざまな要因があり、迅速な避難行動が取れなかったことも事実です。

 よって、一概に「いち早く行動を取れるか」「危険に鈍感になっていないか」を明確に線引きできない部分もありますが、緊急事態下で的確な行動を取れるか否かの明暗を分けうる「正常性バイアス」の働きを、過去の災害が示唆する教訓として、私たちは理解しておきたいものです。

 また、今回の熊本の地震の際にも同じような心理が働いていた可能性があります。14日の夜に起きたマグニチュード6.5の大きな地震で屋根瓦が飛んだり、家が傾くなどの危険な状態に接しても、「もう落ち着いただろう」「大丈夫だろう」(=正常性バイアスの働き)という意識が働いた方も多かったようです。

 さらに、家屋が通常通りだったことと、停電が復旧したことから、自宅での就寝を選択され、16日未明に発生したマグニチュード7.3の「本震」に見舞われた方が多かったことも明らかになっています。

 さまざまな要因が重なり、想定外の事態を引き起こす災害ですが、災害に直面した当事者にしかわからない「正常性バイアス」は、予想外の大きなチカラで人々の行動を制するのです。

 そのため過去の事例からも、地震、洪水、火災などに直面した際、自分の身を守るために迅速に行動できる人は、“驚くほど少ない”ことが明らかになっています。

ほとんどの人が緊急時にぼう然! では、どうしたらいい?

 それでは、いざというとき、私たちはいったいどうしたらいいのでしょうか。

 突発的な災害や事故に遭った場合、事態の状況をとっさに判断できず、ぼう然としてしまう人がほとんどといわれています。「緊急地震速報の報道におびえて動けなかった」「非常ベルの音で凍りついてしまった」という話をよく聞きますが、こういうときこそ必要なのが「落ち着いて行動すること」。

 そのために有効なのが「訓練」です。訓練を重ねることで、いざというとき、自然にいつもと同じ行動をとることができる、つまり、訓練と同じ行動をとることで身を守れる、というわけです。非常事態の際に「正常性バイアス」に脳を支配されないよう、本当に危険なのか、何をしたらいいかを見極める判断力を養っておきましょう。

人間の心の働きから、新たな災害が生み出されないように

 数々の災害や事故などによっていくつもの「想定外」が生まれ、「想定内」にする努力がなされていますが、いまだに「想定外」が出現し続けている昨今。

 私たちの心の在り方そのものが、さらなる災害を生みだすことのないよう、日頃から日常と非日常の切り替えに翻弄されず、冷静に対応することが求められています。

 ──頻発する地震と先行きが見えない状況のなか、被災された方の心労と労苦は言葉にあまりありますが、ニッポン一丸となり、一人ひとりの力が結集した支援の輪が広がれば……と願ってやみません。

Copyright (C) 日本気象協会 All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2311/27/news041.jpg 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  2. /nl/articles/2311/28/news172.jpg バイクでケーキを持って帰ったら…… ミュージカル俳優、思わぬ形になったケーキに「見たことないほどズタボロ」
  3. /nl/articles/2311/25/news015.jpg 道路脇のパイプ穴をのぞいたら大量の…… 思わず笑ってしまう驚きの出会いに「集合住宅ですね」の声
  4. /nl/articles/2311/27/news095.jpg 『ちいかわ』通称“島編”が最終話へ 絶望色が強すぎて阿鼻叫喚 想像に任せるオチに“存在しない劇場版”を幻視する読者が続出
  5. /nl/articles/2311/27/news024.jpg 葛藤の末、野良の黒猫親子を保護して1カ月後…… 幸せを見つけた家族の光景に「本当に良かった」「癒やされます」
  6. /nl/articles/2311/28/news037.jpg 愛犬の大切なおもちゃを洗濯したら→「お友達が……!」 悲しい鳴き声をあげる姿に「家の子も一緒だ」「健気で癒されます」
  7. /nl/articles/2311/27/news076.jpg ミキ亜生、駅で出会った“謎のおばさん”に恐怖「めっちゃ見てくる」 意外な正体にツッコミ殺到「おばさん呼びすんな」「マダム感ww」
  8. /nl/articles/2311/27/news093.jpg 『キン肉マン』ゆでたまご・嶋田、ヘルプマーク使用を報告も…… 「正義はないのかこの日本」理解の低さに苦言
  9. /nl/articles/2311/28/news032.jpg 物理学を理解しているハムスター、回し車で遊びたい姉妹へのかわいいイジワルが「強い意志を感じる…」と話題に
  10. /nl/articles/2311/27/news106.jpg エド・はるみ、連日ハードな研究で生活も激変 “18種類おかずの手作り弁当”に影響「数と彩りも無くなり」「忙しく時間がなさすぎて」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  2. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」
  3. 愛犬と外出中「飼いきれなくなったのがいて、それと同じ犬なんだ。タダで持ってきなよ」と言われ…… 飼育放棄された超大型犬の保護に「涙止まりません」
  4. ミキ亜生、駅で出会った“謎のおばさん”に恐怖「めっちゃ見てくる」 意外な正体にツッコミ殺到「おばさん呼びすんな」「マダム感ww」
  5. 永野芽郁、初マイバイクで憧れ続けたハーレーをゲット 「みんな見ろ私を!」とテンション全開で聖地ツーリング
  6. 道路脇のパイプ穴をのぞいたら大量の…… 思わず笑ってしまう驚きの出会いに「集合住宅ですね」の声
  7. 柴犬が先生に抱っこしてほしくて見せた“奥の手”に爆笑&もん絶! キュンキュンするアピールに「あざとすぎて笑っちゃった」
  8. 病名不明で入院の渡邊渚アナ、1カ月ぶりの“生存報告”で「私の26年はいくらになる?」 入院直後の直筆日記は荒い字で「手の力も入らない」
  9. 小泉純一郎元首相、進次郎&滝クリの第2子“孫抱っこ”でデレデレ笑顔 幸せじいじ姿に「顔が優しすぎ」「お孫さんにメロメロ」
  10. デヴィ夫人、16歳愛孫・キランさんが仏社交界デビュー 母抜かした凛々しい高身長姿に「大人っぽくなりました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 病名不明で入院の渡邊渚、3カ月ぶりSNS更新で「表情に違和感」「そこまで酷い状況とは」 ベッド上で「人生をやり直すこともできません」
  2. 動かないイモムシを助けて1年後のある日、窓の外がありえない光景に 感動サプライズが「アゲハ蝶の恩返し」と話題
  3. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
  4. 「千鳥」大悟、大物美人俳優にバッグハグされた表情に注目集まる 「マジ照れのお顔ですね」「でれでれやん」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 神田愛花アナ、拡散された女子中学生時代ショットにスタジオ騒然「ヤバい」→“アネゴ感”でSNSもざわつく
  7. 「生きててよかった」 熊谷真実、美麗な初“袋とじ”グラビアで63歳の色気全開 真っ赤なドレス着こなす姿に「すごいプロポーション」
  8. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  9. 双子モデル・吉川ちえ、美容整形後のひたいが“コブダイ”状態へ 多額の費用要した修正手術で後悔も「傷がこんなに残りました…」
  10. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!