平和記念公園から「ポケモンGO」の削除を要請 広島市は「ポケモンも出ないように」 長崎市は原爆資料館のみ

広島の平和記念公園では、担当者が「像や慰霊碑に近づきがたい」と形容するほどプレイヤーが集まっているとのこと。

» 2016年07月27日 19時00分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]

 広島市と長崎市はそれぞれスマホゲーム「ポケモンGO」について、原爆死没者を慰霊する平和記念公園と平和公園からゲーム内の施設を削除するよう、運営開発の米ナイアンティック社に要請しました。広島市は「参拝客や平和目的の観光客に配慮するため」、長崎市は「スマホ歩きなどによる事故を防ぐため」としています。

 「ポケモンGO」は現実世界を歩くことでスマホ画面上に現れるポケモンを集めるゲーム。神社や公園など現実の施設が、ゲームのアイテムをゲットできる「ポケストップ」やバトルが楽しめる「ジム」に設定されており、プレイヤーたちは実際に近づいてゲーム内で利用します。

 広島市の企画調整課と緑政課によると、平和記念公園では「原爆の子の像」や「原爆死没者慰霊碑」など数十カ所がポケストップやジムに設定されているとのこと。市は7月26日にメールで、8月6日までに平和記念公園およびその中の施設から「ポケモンGO」のポケモンが出現しないようにすること、そしてポケストップとジムすべてを削除するよう要請しました。

ポケモンGO 広島市の平和記念公園(Googleマップより)

ポケモンGO ポケストップが設置されている1つ「原爆の子の像」(広島市公式サイトより)

 理由について企画調整課課長は「平和記念公園というのは原爆死没者の慰霊の場。8月6日を目前に慰霊や平和祈願を目的にたくさんの方がお見えになっていますが、慰霊碑や像にポケモンGOの関連施設があることで多くのプレイヤーが集まり、近づきがたい状態となっています。本来の目的で訪れる方々のためにも削除を打診しました」と述べています。

 平和記念公園は、2014年にリリースされた位置情報ゲーム「Ingress」でもゲーム内の施設「ポータル」に設定されており、過去には原爆忌に合わせて有志のプレイヤーがゲーム上で巨大な「折り鶴」を描くという出来事もありました(関連記事)。Ingressの際は行わなかったゲーム施設の削除申請を、ポケモンGOでは行ったことについて、「今回のケースは顕著で、非常にたくさんのプレイヤーがいらしている」と異例の事態が発生していることを説明しました。

ポケモンGO 2014年にIngressで平和記念公園上に描かれた折り鶴(関連記事

 長崎市の平和公園でも「平和祈念像」周辺など数十カ所にポケストップやジムが設置されています。市の平和推進課によると、市は25日にナイアンティック社公式サイトのフォームから、園内「長崎原爆資料館」の館内と周辺にあるポケストップを削除するよう要請したとのこと。有名な平和祈念像などがある公園の敷地は、今回特に申請していません。

ポケモンGO 削除を要請したのは、平和公園の一部とされている「長崎原爆資料館」周辺。平和祈念像がある公園敷地は特に触れていないそうです(Googleマップより)

 平和推進課課長は理由について「資料館には連日、原爆のことを知ろうと大勢の方がいらっしゃいます。混雑する館内や周辺で『ポケモンGO』のプレイヤーが集まったり歩きスマホで衝突が起こったりするのは危険だと判断し、削除申請しようと会議で決定しました。入り口の階段にもポケストップがあるのですが、ここは特に人が集中するため早く撤去して欲しいところです」と説明しました。

 一部報道に対し「平和公園は祈りの場。ゲームはふさわしくない」と発言したのは事実ですが、「未然に事故やトラブルを防ぐことが第一の目的です」とのこと。「平和公園全体のポケストップをどうするかはしばらく様子見です。特別トラブルもなければ苦情も来ていませんし、公園は公の場としてさまざまな人が利用する場であることを考慮しています」(平和推進課課長)。

 配信開始から3日経ったあたりから、公的施設や機関が「ポケモンGO」のサービスの撤去を要請するケースが増えてきました。26日にJRなど全国の鉄道事業者23社および日本地下鉄協会も、鉄道施設内でポケモンが出ないよう要請書を提出(関連記事)。最高裁判所も全国の裁判所からポケストップとジムを削除するよう申請しました(関連記事)。

 一方で鳥取県では鳥取砂丘における「ポケモンGO」のプレイを県知事が奨励したり(関連記事)、京都ではジムに設定されているお寺がプレイヤー向けに充電器の貸し出しを行ったり(関連記事)と、観光客の誘致につなげようという動きもあります。

 開発側はポケストップとジムを設置する上で、事前に施設側へ知らせるようなことは特に行っていませんでした。各施設がポケモンGOによる影響を自覚し始める時期。削除申請を受け、ナイアンティック社が具体的にどのような対応を取っていくか注目が集まります。

黒木貴啓


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2407/24/news014.jpg 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  2. /nl/articles/2407/25/news017.jpg 「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
  3. /nl/articles/2407/26/news151.jpg イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
  4. /nl/articles/2407/25/news012.jpg 夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
  5. /nl/articles/2407/25/news007.jpg 水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
  6. /nl/articles/2407/25/news138.jpg 「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
  7. /nl/articles/2407/25/news050.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
  8. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  9. /nl/articles/2407/26/news119.jpg 工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
  10. /nl/articles/2407/26/news008.jpg 外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
先週の総合アクセスTOP10
  1. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
  2. 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
  3. 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
  4. 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
  5. ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
  6. 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
  7. もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
  8. アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
  9. スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
  10. 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
  2. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  3. 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
  4. 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
  5. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  6. かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
  7. 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
  8. 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
  9. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」