サンマをひたすら焼き、食べる奇祭「サンマ祭り」のサンマが旨すぎた
早朝から3時間以上並ぶ価値あり。
秋が来た。サンマの季節である。この時期、サンマ一匹を食べるためだけに、万単位の人が東京・目黒に押し寄せる奇祭がある。“さんま祭り”と呼ばれるそれには「目黒のさんま祭り」と「目黒のSUNまつり」の2種類があり、前者は岩手県宮古市のサンマが、後者は宮城県気仙沼のサンマが、ひたすら焼かれ、行列ができる。いずれも落語の「目黒のさんま」にちなんだお祭りだという。
今回は「目黒のSUNまつり」のほうに行ってみた。サンマの配布開始は10時10分から。サンマはなくなり次第終了してしまうため、少し早めの8時半には会場付近へ向かった。1時間半以上も前から並べば、さすがにサンマにありつけるだろう。目黒駅を出て、目黒川のほうへ向かう。橋のそばまで来ると、まだまだ会場の田道広場公園ははるか向こうにあるというのに、明らかに人だかりができていた。
絶対これだ……。この、川沿いにぐるりと作られた行列、絶対サンマを食べたがっている人たちだ……。最後尾がまるで見える様子がないが、会場から遠ざかる方向へ列をたどった。8時半でもだいぶ早く来たつもりが、既に気が遠くなるような待機列である。少なくともこれから、サンマ配布が開始されるまで1時間40分は待たなければならない。開始されてからこの行列が少しずつ進んでいくため、そこからまたさらに待つことになる。サンマを食べられるのは12時頃だろうか。そもそも食べられるのだろうか。並んだ揚げ句、サンマがなくなってしまいやしないだろうか。一抹の不安を覚えつつ、列の最後尾に入る。
並びながら聞き耳を立てていると、どうも私の前後に並んでいたのは、毎年来ている人たちのようだった。毎年、休日の朝早くから一匹のサンマのために何時間も待つ、いわゆるサンマガチ勢である。ガチ勢たちがいたことで、私は安堵した。毎年の経験値のあるガチ勢ならば、確実にサンマにありつける時間に来ているに違いない。ゆえに、ガチ勢と同じ時刻に並んだ私も、サンマを食べられるに違いないのだ。
10時を過ぎ、祭りが始まったらしい。少しずつ列が前に動き始めた。動き始めると、さほど止まることもなく、ぐるりと川沿いをゆっくり前に進む。11時頃、いよいよ会場が見えてきた。
受付でサンマの引換券をもらい、煙のもくもくしているほうへと向かった。
煙がもうもうと立ち込める中、サンマが一匹一匹、丁寧に、そして大量に焼かれている。すぐにでも食べられそうなほど焼けているところもあれば、まだまだ焼き始めたばかりなところもある。
せっかくなので、じっくりと焼いているところを見てからサンマをもらうことにした。
全身が燻製になりそうなくらい煙を浴び、汗ばんできたところで、目の前のサンマが焼けた。
紙製のお皿にサンマをのせてもらい、カボスと大根おろし、しょうゆをもらって、いよいよサンマを食べる。時刻は11時半。並び始めてから既に3時間がたっていた。3時間分の期待を込めて、サンマの身を箸でほぐす。
……! う、うまい……! 身がふわっ! 脂がじゅっ! ほっくりとしていてそれでいてほどよい塩気、そしてかみしめると脂がじゅわっと舌に広がった。
ああ、これは、誰もが憑りつかれたように朝から並ぶ理由が分かる。たった一匹のために3時間も4時間も並ぶ“狂気”の理由が分かる。行列の常連らしき人たちの中には小さい子もちらほらいたのに、おとなしく並び続ける理由が分かる。休日から早起きしたのが報われた。3時間立ちっぱなし並びっぱなしだったのが報われた。サンマからしたたる優しい脂の前には何もかもが帳消しになる。サンマよ、感動をありがとう。
朝井麻由美(@moyomoyomoyo)。フリーライター・編集者・コラムニスト。ジャンルは、女子カルチャー/サブカルチャーなど。雑誌やWebでコラム連載多数。近著に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。ゲーム音楽と人狼と麻雀が好き。
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