ニュース
» 2016年09月24日 11時05分 公開

サンマをひたすら焼き、食べる奇祭「サンマ祭り」のサンマが旨すぎた

早朝から3時間以上並ぶ価値あり。

[朝井麻由美,ねとらぼ]

 秋が来た。サンマの季節である。この時期、サンマ一匹を食べるためだけに、万単位の人が東京・目黒に押し寄せる奇祭がある。“さんま祭り”と呼ばれるそれには「目黒のさんま祭り」と「目黒のSUNまつり」の2種類があり、前者は岩手県宮古市のサンマが、後者は宮城県気仙沼のサンマが、ひたすら焼かれ、行列ができる。いずれも落語の「目黒のさんま」にちなんだお祭りだという。

 今回は「目黒のSUNまつり」のほうに行ってみた。サンマの配布開始は10時10分から。サンマはなくなり次第終了してしまうため、少し早めの8時半には会場付近へ向かった。1時間半以上も前から並べば、さすがにサンマにありつけるだろう。目黒駅を出て、目黒川のほうへ向かう。橋のそばまで来ると、まだまだ会場の田道広場公園ははるか向こうにあるというのに、明らかに人だかりができていた。

さんま祭り なんということでしょう!

さんま祭り 雨なのにこの人の多さ。最後尾がまるで見えない

 絶対これだ……。この、川沿いにぐるりと作られた行列、絶対サンマを食べたがっている人たちだ……。最後尾がまるで見える様子がないが、会場から遠ざかる方向へ列をたどった。8時半でもだいぶ早く来たつもりが、既に気が遠くなるような待機列である。少なくともこれから、サンマ配布が開始されるまで1時間40分は待たなければならない。開始されてからこの行列が少しずつ進んでいくため、そこからまたさらに待つことになる。サンマを食べられるのは12時頃だろうか。そもそも食べられるのだろうか。並んだ揚げ句、サンマがなくなってしまいやしないだろうか。一抹の不安を覚えつつ、列の最後尾に入る。

さんま祭り サンマガチ勢の集まり

 並びながら聞き耳を立てていると、どうも私の前後に並んでいたのは、毎年来ている人たちのようだった。毎年、休日の朝早くから一匹のサンマのために何時間も待つ、いわゆるサンマガチ勢である。ガチ勢たちがいたことで、私は安堵した。毎年の経験値のあるガチ勢ならば、確実にサンマにありつける時間に来ているに違いない。ゆえに、ガチ勢と同じ時刻に並んだ私も、サンマを食べられるに違いないのだ。

 10時を過ぎ、祭りが始まったらしい。少しずつ列が前に動き始めた。動き始めると、さほど止まることもなく、ぐるりと川沿いをゆっくり前に進む。11時頃、いよいよ会場が見えてきた。

さんま祭り サンマを焼く会場はこちらです

さんま祭り 受付

 受付でサンマの引換券をもらい、煙のもくもくしているほうへと向かった。

さんま祭り 焼きさんま引換券。この「1117」という数字は、1117人目ということだろうか

 煙がもうもうと立ち込める中、サンマが一匹一匹、丁寧に、そして大量に焼かれている。すぐにでも食べられそうなほど焼けているところもあれば、まだまだ焼き始めたばかりなところもある。

さんま祭り

 せっかくなので、じっくりと焼いているところを見てからサンマをもらうことにした。

さんま祭り

さんま祭り

さんま祭り すごく……、煙いです……

 全身が燻製になりそうなくらい煙を浴び、汗ばんできたところで、目の前のサンマが焼けた。

さんま祭り

さんま祭り

 紙製のお皿にサンマをのせてもらい、カボスと大根おろし、しょうゆをもらって、いよいよサンマを食べる。時刻は11時半。並び始めてから既に3時間がたっていた。3時間分の期待を込めて、サンマの身を箸でほぐす。

さんま祭り

さんま祭り

 ……! う、うまい……! 身がふわっ! 脂がじゅっ! ほっくりとしていてそれでいてほどよい塩気、そしてかみしめると脂がじゅわっと舌に広がった。

さんま祭り ごちそうさまでした

 ああ、これは、誰もが憑りつかれたように朝から並ぶ理由が分かる。たった一匹のために3時間も4時間も並ぶ“狂気”の理由が分かる。行列の常連らしき人たちの中には小さい子もちらほらいたのに、おとなしく並び続ける理由が分かる。休日から早起きしたのが報われた。3時間立ちっぱなし並びっぱなしだったのが報われた。サンマからしたたる優しい脂の前には何もかもが帳消しになる。サンマよ、感動をありがとう。

さんま祭り

さんま祭り なお、ガチ勢たちはサンマを食べた後、さらに「サンマのすり身」の列にも並んでいた

朝井麻由美(@moyomoyomoyo)。フリーライター・編集者・コラムニスト。ジャンルは、女子カルチャー/サブカルチャーなど。雑誌やWebでコラム連載多数。近著に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。ゲーム音楽と人狼と麻雀が好き。


関連キーワード

祭り | 行列 | 早起き


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2205/15/news045.jpg 人気動画ジャンル「ゆっくり茶番劇」を第三者が商標登録し年10万円のライセンス契約を求める ZUNさん「法律に詳しい方に確認します」
  2. /nl/articles/2205/16/news094.jpg 「ゆっくり茶番劇」商標取得者の代理人が謝罪 「皆様に愛されている商標であることを存じておらず」「爆破予告については直ちに通報致しました」
  3. /nl/articles/2205/16/news075.jpg 有吉弘行、上島竜兵さんへ「本当にありがとうございますしかなかった」 涙ながらの追悼に「有吉さんが声を詰まらせるとは」
  4. /nl/articles/2205/15/news033.jpg 華原朋美、“隠し子”巡る夫の虚言癖に怒り「私はだまされて結婚」 家を飛び出した親に2歳息子も「もうパパとはいわなくなりました」
  5. /nl/articles/2205/16/news079.jpg キンコン西野、勝手に婚姻届を出される 「絶対コイツなんすよ」“妻になりかけた女性”の目星も
  6. /nl/articles/1908/19/news093.jpg 任天堂が「草」を商標出願 → ネット民「草」「これは草」「草草の草」
  7. /nl/articles/2007/07/news115.jpg 電通、「アマビエ」の商標出願を取り下げ 「独占的かつ排他的な使用は全く想定しておりませんでした」
  8. /nl/articles/2205/14/news007.jpg 子猫のときは白かったのに→「思った3倍柄と色出た」 猫のビフォーアフターに「どっちもかわいい!」の声
  9. /nl/articles/2205/16/news124.jpg 大沢樹生、血縁関係がない息子と再会で“男飲み”2ショット 「2人が築いていってるものが素敵」「仲良しだね」
  10. /nl/articles/2205/11/news167.jpg 「あなたのAirpodsではありません」 隣の人がAirpodsの蓋を開け締めしているせいでiPadが操作できない話がおつらい

先週の総合アクセスTOP10

  1. 名倉潤、妻・渡辺満里奈との結婚17周年に“NY新婚旅行”ショット 「妻には感謝しかありません」と愛のメッセージも
  2. フワちゃん、指原莉乃同乗のクルマで事故 瞬間を伝える動画が「予想の10倍ぶつけてる」「笑い事ではない」と物議
  3. 植毛手術のいしだ壱成、イメチェンした“さっぱり短髪”が好評 「凄く似合ってます」「短い方が絶対いい」
  4. 渡辺裕之、66歳バースデーで息子と2ショット 合同誕生日会に「すごいお料理とケーキ」「イケメン息子さん」
  5. この写真の中に2人の狙撃手が隠れています 陸自が出したクイズが難しすぎて人気 まじで分からん!
  6. 神田愛花アナ、バナナマン日村との“夫婦デート風景”にファンほっこり 「幸せあふれてる」「仲良くてステキ」
  7. 「ビビるくらい目が覚める」「生活クオリティ上がった」 品薄続く「ヤクルト1000」なぜ、いつから人気に? 「悪夢を見る」ウワサについても聞いてみた
  8. 山田孝之、芸能人として“3億円豪邸”に初お泊まり 突然泣き出すはじめしゃちょーをハグする異例展開で「本当にいい人」
  9. トム・クルーズ、4年ぶり来日をウマ娘が発表 突然の大物コラボに困惑する声「まず戸田奈津子さんに理解してもらうところから」
  10. 堀ちえみ、新居ダイニングの解体&再工事が完了 住居トラブルへの怒りも“夫の名言”で鎮火「ハッとしました」