図書の閉架資料から出てきた古いチョコの包装が話題に いつの時代のものか調べてみた
60年ほど前に同じ資料を調べていた人が挟んだのか……ロマンあふれる話がTwitterで注目集める。
ある大学図書館で炭鉱関係の閉架資料を読んでいたら、古そうな「明治ミルクチョコレート」の包装が挟まっていたという写真がTwitterで注目を集めました。明治の広報部に取材したところ、包装は1940年〜1955年製造当時のデザインに酷似していることが判明。60年ほど前に同じ資料を手に取った人がしおりや付せん代わりに包装を挟み、時を経て出てきたのではないかと推測され、ロマンを感じさせる品となっています。
写真を投稿したのはいたや(@AKAIWA8095D)さん。1月末に大学の書庫室で、戦前から1970年代まで日本の炭鉱や鉱山で使用されていた運搬用立坑櫓(たてこうやぐら)について調べていたところ、興味本位で手に取った本から細長いものが飛び出しているのを発見。なんだろうと抜いたところ、相当前のデザインと見られる「明治ミルクチョコレート」の包装が出てきました。
くたっとはしているけど、現在の包装と同じような薄紙。表面には、深いエビ茶色に金色の文字で「MEIJI MILK CHOCOLATE」と書かれ、ところどころかすれています。特に古めかしいのは裏面で、バーコードはおろか原材料の成分表もなく次のような説明文が表記されていました。
「明治チョコレートは最高の原料を用い、少しの不純物も混ざつておりません。従つてその色つや、舌ざわり、かおり、風味などで他に見られないすぐれた品です。又純粋なコヽアバターを多量に含んでいますから攝氏二八度以上では軟くなります。これも品質の優良さを示す一つの事実であります。 東京 明治製菓株式会社」
挟まっていたのは、昭和30年(1958年)10月に日本鉱業協会が発行した「鉱業技術10年回顧」という、鉱山の採掘と運搬について書いた資料です。いたやさんも調べ物に関するページはないかと片っ端から見ていったところ、ホコリがひどく手が汚れてしまったとのこと。日本の炭鉱の全盛期は1960年代から80年代だったことも考慮して、かなり長く読まれていないようだったと振り返っています。
包装はケータイで撮影したあと本に戻し、就寝前にふと思い出して写真を経緯の説明とともにTwitterに投稿。「多分、炭鉱について勉強していた若人が食べて付せん代わりにしたのかもしれないが、坑内炭鉱がほぼ無くなった今の時代である。これを残した若人は何をしているのだろうか…」と空箱の持ち主に思いをはせたところ、6000回以上リツイートされました。
周囲のユーザーからはいつの年代のデザインなのか検証が寄せられますが、戦前のデザインに近いにもかかわらず側面の「明治チョコレート」の文字が右からではなく左から書かれていることから、「復刻版の可能性もあるような気がします」など特定が困難な状況に。
そこで明治広報部に確認してもらったところ、「写真からでは当社製品だと断定できませんが、復刻版でないことは確かです。当社のものだとすると、1940年〜1942年・1951年〜1955年に販売したパッケージのデザインが一番近いと思います」と回答しました。
このパッケージは、明治が1940年にデザインを変更後、42年に時局が緊迫したため製造を中止し、51年に戦後初の国産チョコレートとして生産を再開してから55年まで使用していたもの。図書館で見つかった包装と表面のデザインが似ているだけでなく、側面には商品名が左から右へと書かれ、裏面にも「明治チョコレートは最高の原料を用い、少しの不純物も混ざつておりません……」と例の説明文が同じように書かれていたそうです。
Twitterでは「感動しました! タイムカプセルみたいで良いですね!」「空箱の君がどいう人物なのか想像すると気になってしかありませんね」「図書館の閉架資料の中から50年以上前のチョコレートパッケージ……なんだかロマンを感じます」などさまざまな感想が。菓子の包装のデザインが気に入ってしおりにするというのはよく聞く話。持ち主は大切にしおりとして使っていたのでしょうか……いろいろと想像が膨らみます。
投稿主は「私自身、ツイートがここまで拡散されるとは思っていませんでした。これを機会に炭鉱や立坑櫓の歴史やロマンに触れて頂ければ幸いであります」と今回の件についてコメント。出てきた包装は、今も閉架図書の資料の中に眠っています。
(黒木貴啓)
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