「エンターテインメントとは、エモーションを体験すること」 「アナベル 死霊人形の誕生」サンドバーグ監督流の心のえぐり方

ホラーマスターに怖いホラー映画の作り方を聞いてみました。

» 2017年10月02日 16時55分 公開
[西尾泰三ねとらぼ]

 「ソウ」「インシディアス」で知られるジェームズ・ワン監督が実話をベースに描いたホラー映画「死霊館」。2013年に公開されると、正統派ホラーとして絶賛され、その後シリーズ作品が生み出されてきましたが、作中に登場する呪いの人形(アナベル)にフォーカスした“アナベル”シリーズ最新作「アナベル 死霊人形の誕生」の公開が10月13日に迫りました。

アナベル 死霊人形の誕生 サンドバーグ インタビュー 死霊人形アナベル誕生の謎が描かれる「アナベル 死霊人形の誕生」

 2014年公開の「アナベル 死霊館の人形」の前日譚に当たり、アナベル誕生の秘密に迫る一作。監督は、長編デビュー作「ライト/オフ」で脚光を浴びたデイビッド・F・サンドバーグ。ジェイムズ・ワンも「若き日の俺」と絶賛する現代ホラー映画の名手に、人気シリーズの監督を務めた心境を聞いてみました。


デイビッド・F・サンドバーグ “ホラーマスター”デイビッド・F・サンドバーグ監督

—— ねとらぼでのインタビューは「ライト/オフ」以来ですね。また機会をくれてどうもありがとう。あのとき、「短編を撮っているときは、『日常からいかに恐怖を生み出すか』を常に意識している」と話していたのが印象的だったけど、長編撮影の経験値が増すにつれて考えに変化はあった?

デイビッド・F・サンドバーグ(以下サンドバーグ) 奇妙なんだ。「ライト/オフ」以前に撮っていた短編は全てロケーションで撮影していて、いつも歩き回りながら物事を見つけていた。僕は、ほとんどのシーンで、撮影を進めながら(そのやり方を)見つけていくのが好きなんだけど、今作は、人形職人夫婦の屋敷が舞台で、僕らはまずセットを作り上げないとならなかったんだ。

—— 自分が何を欲しているのか最初に気付く必要があったと。

サンドバーグ そう。ただ、歩き回って物事を思い付くというのは今作も同じだった。「この場所で、僕はどんなことを怖いと感じるか? ここで起こり得ることで、どんなことが僕を怖がらせるか?」とね。僕はそういったことをするのが大好きだから。

アナベル 死霊人形の誕生 サンドバーグ インタビュー

—— 短編を撮るときは「日常からいかに恐怖を生み出すか」を常に意識していると語っていたけど、そのスタンスは今も変わらないようだね。フィルムメーカーとして自身の成長は感じている?

サンドバーグ イエス。間違いなくね。特に最初の映画では、何がうまくいって、何がうまくいかないか、ものすごく多くのことを学んだから。

 僕が撮影をやる度に発見していったのは、よくあるカバレッジ(カット割)の撮影は、自分は好きじゃないということ。ワイドレンズを着けたカメラを置いて、それからこのクロースアップをやって、このクロースアップをやって……というように、全てを何度も繰り返すやり方は好きじゃない。

 僕は、長いテイクだったり、何かもっと面白いことをやる方が好きなようだ。その方が役者も、何度もやらなくてすんでもっと楽しいしね。短編をやっていたときは、「カメラをここに置いて、これをやって、それからこれをやる」と言うのは簡単だった。でも、こういった映画の現場では、カメラを動かすのにもひどく時間が掛かる。照明をやり直したりもするしね。

—— 「ライト/オフ」でも感じたけど、監督は光の操り方がうまいなと思う。「アナベル 死霊人形の誕生」では特に何を学んだといえる?

サンドバーグ 現場で(演出の)やり方を見つけられることが確信めいた気持ちになったこと。それは大きな経験だった。それと、子どもたちとの仕事がいかに素晴らしいものになるかも。彼らはとてもプロフェッショナルで、素晴らしかった。

アナベル 死霊人形の誕生 サンドバーグ インタビュー

—— 現場で大事なことを見つける直感が磨かれているんだね。ホラーマスターとしての地位を確実なものにしていくあなたに、人生で最も怖いと思った体験を聞いてみたいのだけど。霊の存在には否定的だよね?

サンドバーグ そんなに怖い体験はないんだ。この前、僕の妻が夜中にトイレに行っていて、僕はそれに気付かなかった。ふと目を覚まして、当然彼女が僕の横に寝ていると思っていたら、誰かが廊下を歩いてくる音が聞こえて、本当に驚いてベッドから飛び出したんだ。僕が感じる怖い体験とはそういったばかげたことだよ。

—— かわいらしい(笑)。それもある意味“日常の恐怖”だよね。ところで、今作でタッグを組んでいるジェームズ・ワンだったり、あるいはデヴィッド・リンチのように、自らのスタイルを持つ監督がいる中、あなたのスタイルを自己分析するならどんなものだと思う?

サンドバーグ 全くそうだね。特にデヴィッド・リンチは。僕は、自分が“楽しい映画”を作っていると思いたい。シリアスなところにちょっとユーモアを加えることをいつも試みるんだ。「アナベル 死霊人形の誕生」でもリンダがアナベルの顔を狙って撃ったりするシーンがあるのだけど、「ライト/オフ」ほどではないにせよ、ちょっとした笑いを盛り込んでいるよ(笑)。

アナベル 死霊人形の誕生 サンドバーグ インタビュー

—— そうなんだ。日本だと、遊園地にはお化け屋敷が付きものだったり、恐怖をエンターテインメントとして楽しんでいるけど、恐怖とエンターテインメントの関係についてはどう思う?

サンドバーグ エンターテインメントとは、“エモーションを体験すること”だと僕は思う。そして、ホラーは、とても強いエモーションを与えるもの。だから人々はそういったものが好きなんだ。それをたくさん感じることで、自分が生きていると感じるからね。

—— なるほど。「死霊館」シリーズは次回作「ザ・ナン(原題)」の2018年公開も決まるなど、作品のユニバースがどんどん広がっているけれど、あなたは今後もシリーズに関わっていく考え?

サンドバーグ 今は何もその予定はないよ。僕にとっては、「アナベル 死霊人形の誕生」がそのユニバースへの入り口で、そこには他の監督たちがいるんだ。「ザ・ナン」のコーリン・ハーディとかね。でも、今後何が起きるかは分からないよ(笑)。

—— 期待したい。最後に、「アナベル 死霊人形の誕生」の公開を待つファンに向けて一言。

サンドバーグ 今作にはもちろん人形(アナベル)も出てくるのだけど、僕は「ユー・アー・マイ・サンシャイン」という歌があるのを気に入っているんだ。ふとしたとき、人形を見たり、歌を聞いたら、「アナベル」を思い出すんだ。僕はそういうやり方で人々を破壊するのは好きだよ(笑)。この映画が人々の心に残るといいね。

—— 「ユー・アー・マイ・サンシャイン」は美しい曲なのに。

サンドバーグ そうだね。でも今そのイメージは破壊されただろ(笑)?


(c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

関連キーワード

お化け・幽霊 | 映画 | ホラー映画


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」