写真のために枝をポキッ! 景勝地での度重なるマナー違反にプロカメラマン「もっと謙虚な気持ちで」

私有地で用を足すなど考えられないマナー違反が続々。

» 2017年10月10日 17時45分 公開
[Kikkaねとらぼ]

 間もなく始まる紅葉シーズンを前に、「構図のために草花を傷つける」「私有地で用を足す」など景勝地における撮影マナーがネット上で議論されています。彼岸花の群生で有名な九品寺と、全国各地の絶景写真を撮影するプロカメラマンを取材しました。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 わに塚の桜と富士山

 スマートフォンの普及や中高年層のカメラブームなどで、景勝地には多くの人が訪れるようになりました。なかでも人気があるのが草花が群生するスポットでの撮影です。人気のシーズンともなると、全国各地から多くの人が訪れる他、早朝より多くの人が列を作ります。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 寺坂棚の彼岸花

 そんななか持ち上がったのが、撮影者によるマナー違反についての話題です。例えば彼岸花の群生で知られる神奈川県鎌倉市の九品寺では、「咲く寸前で無残に踏み荒らされた花」「マナーの悪いカメラマンが自分の構図に合わない花を折ってるのを見かけた」「故意に倒したのではないか・・・と思えるような倒され方」などの声が上がっており、土地の所有者や近隣住民に迷惑を掛けているケースがあるとのこと。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝

撮影場所は私有地、「ルールを守って拝んでいただきたい」

 ねとらぼ編集部では、カメラマンによる撮影の影響やそのマナーの実態について九品寺にお話を伺いました。

――撮影者のマナーについて、ネット上で話題となっています。

九品寺そうなのですか。しかし、マナー問題については今年だけのことではなくて、数年前から困っています。

――撮影ブームのきっかけはあったのでしょうか。

九品寺御朱印ブームやカメラブーム盛り上がってから、グループで撮影にいらしたりする方が増えた印象です。また最近鎌倉三十三観音霊場がテレビで取り上げられたので、そこからまた増えていますね。

――具体的にはどんなマナー違反があるのでしょうか。

九品寺撮影に夢中になって植え込みに足を踏み入れてしまう方、そのまま奥の方まで行ってしまう方、お墓にまで足を踏み入れてしまう方、本当にいろいろな方がいらっしゃいます。例えばうちのお寺には一般参拝者用のお手洗いがないのですが、敷地内で用を足してしまう方がいらっしゃいます。あくまでも私有地なのですが、個人の家ではないから良いだろう、お寺なんだから良いだろうと思われる方がいらっしゃるようです。

――撮影モラル以前の部分のような気もしますね……。

九品寺そうですね。中には近隣のアパートの敷地で用を足した方もいて、住民の方とトラブルになったこともあります。

――一番困っているのはどんなことでしょうか。

九品寺檀家さんに迷惑が掛かってしまうことですね。本堂の前に座り込んでしまって、檀家さんがお参りできないといったことが度々起きています。うちは観光寺ではなくて、檀家寺ですから、そのあたりの区別はつけていただきたいです。

――撮影者の中には、「敷地所有者に事前に許可を取るべき」という人と、「無用な連絡は差し控えるべき」という人がいるようですが、どちらが良いのでしょうか。

九品寺最近は旅行会社やカメラ教室の方など、事前に連絡をくださるケースも増えてきました。団体(大勢)で見える場合には、事前に連絡を入れてもらったり、現地で一声かけていただけたりするとありがたいですね。

――その他、撮影者はどんなことを注意すれば良いでしょうか。

九品寺基本的にはお花が豊富なお寺ですから、たくさんの方に愛でていただくことはうれしく思っています。ただ、芝生の中には入らないということ、三脚を立てる位置や立て方には注意するということをお願いしたいです。また土日に関しては一般の参拝客の方もいらっしゃいますので、配慮していただきたいです。そして撮影だけでなく、お参りもしていっていただけるとうれしく思います。


 九品寺では目に余る場合は声がけを行っているとのことですが、中には注意を聞き入れてくれない人もいるとのことでした。

梅の木を折ったり、景色を楽しむカップルにブチ切れる中高年カメラマン

 続いてお話を伺ったのは、ねとらぼでも活躍するプロカメラマンのRyo Tajimaさんです。Ryoさんは国営ひたち海浜公園のネモフィラあしかがフラワーパークの藤など、全国各地に赴き、季節の花々や風景を撮影を行っています。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 寺坂棚田の彼岸花

――撮影者のマナーがネット上で議論されていますが、プロの目から見て、近年の撮影マナーなどはいかがでしょうか。

Ryoさん:本当に残念なことですが、年々悪くなってきています。特に中高年の方のマナーの悪さが目立っていると思います。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 濃溝の滝。撮影者の中には規制線を越える者もいるという

――中高年の方ですか。

Ryo全ての方がそうではありませんが、年配の方の「自分が、自分が」という感じやマナー違反の多さはいただけません。例えば「わに塚の桜」(山梨県韮崎市)という撮影スポットに行ったときには、桜の前を通った地元の人に中高年のカメラマンが「撮ってんだから、前くんなよ!」と怒号を飛ばしているのを見たことがあります。その他にも「龍の口竹灯篭」では、灯籠を鑑賞していた若いカップルに年配のカメラマンが「立ち止まるな!」とブチ切れていました。こうした人たちは自分たちの立場を履き違えていると思います。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 地元の住民とカメラマンとの通行トラブルがあったというわに塚の桜

巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 夜も美しい顔を見せる

巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝

――自分の立場、というのはどういうことでしょうか。

Ryoカメラマンの中には「写真を撮っている人が優先される」と思い込んでいる人がいます。しかし、僕はそうは思いません。僕自身は楽しんでいる人が一番優先されるべきで、カメラマンたる自分たちは一番下の立場だと考えています。楽しんでいる人たちの合間で撮らせていただいているというか。もっと謙虚な気持ちでいなくてはいけないと思うんです。

――Ryoさんが見た中でもっともひどいな、と感じた出来事はありますか。

Ryo静岡県の岩本山公園でのお話ですが、僕の目の前にいた年配の男性カメラマンが梅の木の枝をポキッと折ったことですね。

――そんな人、本当にいるんですか。

Ryoごく少数ながらいます。カメラマンは撮影の構図をものすごく大切にしているのですが、自然のものを撮るとなればどうしても「これさえなければなぁ」ということが絶対に出てきます。しかしそれはみんな心の中にとどめておくものであって、実行するのは絶対に許されない行為です。キレイな風景を撮るために、カメラマンが景色を壊してしまっては元も子もありません。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 山中湖花の都公園のコスモス

――どうしてこのようなマナー違反が増えてきてしまったのでしょうか。

Ryo僕がカメラを始めた6〜7年前は、まだデジタル一眼レフがそこまで普及しておらず、カメラ本体の値段も高かったので、一般受けする趣味とまでは言えませんでした。しかし、近年カメラ本体の価格がだんだん下がってきたことなどから、定年退職をした層の人たちがカメラを趣味とし始めました。そのころからカメラ人口が増えはじめ、それと並行してカメラマンのマナーが悪くなってきたという印象です。

――カメラのマナーとは具体的にはどんなことを指すのでしょうか。

Ryoカメラでは一般の方に対するマナーとカメラマン同士のマナーが存在します。一般の方に対してはとにかく迷惑を掛けないことです。例えば通路の狭い場所で三脚を目いっぱい広げる、通行のじゃまになるような場所ではそもそも三脚を使用しないなどです。あとは現地のルールに従うことも大切です。水族館などではさまざまな理由からフラッシュ撮影を禁止しているところがありますので、そういった場所ではフラッシュを使用しないというような基本的なことです。ただ初心者の方でオート設定にしていたために意図せずフラッシュが光ってしまったというようなことはあり得ると思いますので、そういったときには次回から気をつけようと思っていただけると良いと思います。周りから見ても初心者の方だなというのは分かりますので。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 国営ひたち海浜公園のコスモス畑

――カメラマン同士のマナーという点についてはいかがでしょうか。

Ryoこれは非常に複雑です。先ほど話題にあがっていた「カメラの前を通る」も一般の方だと何も問題ないのですが、カメラマンが通ってしまうと空気がピリッとします。また例えば「ホタルの撮影」の場合にはどんなささいな光でも撮影の邪魔になってしまうので、ファインダーの光をつけない、補助光を使わない、などかなり厳しいルールが存在し、ハードルの高い撮影テーマとして知られています。また割り込みに関してのトラブルはとても多いです。

――具体的にはどんなトラブルなのでしょうか。

Ryo朝からずっと並んで確保した場所に「ここ空いてるでしょ?」「入れますよね」などといって、イベントの少し前に割り込んで来る人がいるんです。例えば花火大会等の場合、三脚を使って撮影を行うわけですが、ちょっとでも三脚が動けば、何時間も掛けて考えた構図が台無しになってしまうんです。それなのに三脚がずれるようなことをするのはマナー違反ですし、場所を確保したいならやはり早朝から並ぶべきです。その他にも場所を確保してから持ち場を離れていると、三脚が倒されていたり、三脚自体を盗まれたりということもあります。何十万円もする三脚を使う人は場所取りには安い三脚、本番では高価な三脚など使い分けもしています。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 鴻巣のコスモス畑

巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝

――先ほど「朝から並ぶ」といった話もありましたが、1枚の写真を撮るのにどのくらいの時間をかけるのでしょうか。

Ryoケースバイケースですが、朝日とともにお花などを撮りたいのなら、夜中からその場所で待つこともありますし、天の川の撮影なら夕方ごろから現地で準備をはじめます。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝

巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝

――現在カメラを趣味にしている人、これから始めようとしている人にマナーに関するアドバイスをお願いします。

Ryoまずカメラマンは一般の方からすれば邪魔以外の何物でもないということを覚えておいていただきたいです。そして撮影に行く前には、ネットなどで場所の特性やトイレの位置などを確認した上で、その場所ならではのマナーなどを書いてくれているサイトを探すと良いと思います。初心者のうちはルールなんて分かりませんし、僕自信も気付かぬうちにマナー違反をしてしまった経験があります。それらはやはり無知が原因なので、自分で調べたり、カメラを趣味にしている人に相談してみるのは有効です。「カメラが普及するにつれてマナーが悪くなった」といわれがちなので、一人ひとりが意識して、マナーの向上に務めていくことができると良いなと思います。


巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝 巾着田の彼岸花

巾着田 寺坂棚田 鴻巣 濃溝の滝

画像提供:Ryo Tajimaさん

(Kikka)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  6. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/21/news005.jpg 藤本美貴、晩ご飯に手料理7品 多忙でも野菜とお肉たっぷりで反響 「お疲れ様です」「凄く親近感」【2024年の弁当・料理まとめ】
  10. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」