あの「進研ゼミマンガ」はどうやって作られているのか? 「女子向けは精神年齢高めに」「語り継がれる伝説の名作がある」など秘密を聞いた(2/4 ページ)

» 2018年02月03日 12時00分 公開
[辰井裕紀ねとらぼ]

『ちゃお』や『コロコロ』を読んで研究!

 私はいま小学生を担当しているんですが、小学生がよく読む『ちゃお』や『コロコロコミック』が会社の本棚にストックされているので、それを読んで「ここを参考にしてみよう」などはしますね。例えば『12歳。』という人気作品があるんですが、大の男が読んでいますよ。マジメな感じで……(笑)。


進研ゼミのマンガ 鈴木さんが参考にしている『12歳。』(小学館より)

――恋愛要素が入るのは女子のほうが早いですか?

 早いですね。小4ぐらいからありますよ。少女マンガなので、王子様キャラがいたり。


進研ゼミのマンガ 女子向けは小5から恋愛要素全開

 男子は小6ぐらいから恋の要素を少し入れて、「告白」が出てくるのは中学2年生ぐらいからです。それまでは恋愛要素を出しすぎるととたんに嫌悪する男子がいて。「オレは女子は嫌いだ!」と言ったりするような(笑)。

――いますね、そういう感じ!(笑)

 それに比べて、女子は2本に1本ぐらいは「恋心」が出てきますよ。


進研ゼミのマンガ 初々しすぎる「男子の部屋に初めて入るシーン」

Excelやパワポでストーリーを書いている

――社員さんは、いわゆる「ネーム」(※1)は書かないのですか?

※1:ネーム……マンガのコマごとの構図やキャラの配置などを絵で大まかに表したもの

 そうですね、「紙面でこういう絵になる」というのは、漫画家さんからいただきますが、セリフまわしや起承転結、登場人物は、社員がExcelやPowerPointなどを使い、テキストベースで書いています。漫画家さんにそれに合わせて書いてもらいます。

――あらためて読むと、ページ数が多いですね。大体何ページなのかは決まっているんですか?

 小学生向けは24ページぐらい。中学生とかになると、36〜40ページあります。年齢が上がってくると、長い作品に抵抗がなくなってくるので。

――鈴木さんはどういうお話が作りやすいですか?

 「ヤンチャ男子系」は作るのが得意な人が多いですし、私もそうです。ギャグを考えたりすれば作れるので。


進研ゼミのマンガ ギャグを織り交ぜながら軽妙に進行する「ヤンチャ男子系」マンガ

実は「脱マンネリ」したい!

――昔はストレートな成功ストーリーばかりだった気がしましたが、最近はリアルな方へ寄ってきていますか?

 大まかにそういう傾向はあります。それと中学生あたりからは、「中二病」といわれるように斜に構えはじめるんです。そういう子に「ウソくさく」見えないようにと。その中でも成功シーンは入れる必要があるので、いかに“ゼミ前”と“ゼミ後”で「ホントっぽさ」を見せていくかなんです。

 例えばこの作品は……小学生なのにバンドを始めて、女の子がリードボーカルで歌うんですよ。これは反響がありました。歌詞も社員が考えて。


進研ゼミのマンガ 小学生がバンドを組み、しかも英語で歌う衝撃シーン

――この歌詞(「Shall you take step?/キミも一歩ふみ出してみない?」)が進研ゼミの内容にもつながっていると。

 女子はちょっと非現実的なところがある方が興味を持ってくれるんです。

――絵柄も、マンガ作品で言うと『NANA』とか、それっぽいですね。

 そうですね、ちょうどその頃の時代だったと思います。


「黄金パターン」への挑戦

――おなじみの「挫折」→「進研ゼミに出会う」→「勉強も恋も部活もうまくいく」という”黄金パターン”は、昔からあったんですか?

 ありました。「進研ゼミと出会って、成績も伸びて、恋もつかむ」という……ホンマか? みたいな。ただ、少なくとも私は、黄金パターンは脱したいと思っています。

 まず、ハッピーエンドといっても時代によって求められるものは違うので、例えば昔だったら、「100点をみんなにアピールする」のが是だと思うんですけど、最近の子は100点を取っても、大っぴらには見せなかったりします。特に女子は。マンネリ化していくと子どもたちは読まなくなってしまうので、ウソくさいと。

――「黄金パターンを書け」と言われているのかなと思っていたのですが。

 ストーリーは自由です。むしろ逆で、「マンネリは脱しろ」という。実際に黄金パターンにならっていないのがこちらの作品です。例えば100点取るんですけど、その後に「好きな男子が、自分の幼なじみと付き合っている」というのが発覚してしまったりとか。


進研ゼミのマンガ 100点取ったら人生バラ色……だけではない

 担当する社員によって一人一人作る内容は違うので、中には「定番の感じを出したい」という人もいますが、私は「なんでもかんでもうまくいくのはウソくさい」と思っているタイプです。良い点数を取った後に部活の後輩から悪口を言われても、それを乗り越えるというのが大事だったり。

 リアリティを大事にして、「単純に進研ゼミをやったから楽勝」というようなスタンスは避けています。


進研ゼミのマンガ 「彼女もできず全く女っ気のない終わり方」としてネット上で話題になった作品

――確かに、子どもも気付きますよね、「そんなわけないだろう」っていうのは。

 「自分次第」というのが、大事なんですよね。“何でもかんでもうまくいく”っていうのは、私の作るものでは違うと思っています。


実は「天体観測部」「将棋部」「手芸部」も登場している

――マンガ内に出てくる部活では、やっぱりサッカー部や野球部が王道ですよね?

 単純にやっている子が多いので。ただ、そればかりだとマンネリ化するので、実は将棋部や天体観測部なども入れているんですよ。あと最近はダンス部などに人気がありますね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  2. /nl/articles/2412/20/news034.jpg 「博物館行きでもおかしくない」 ハードオフ店舗に入荷した“33万円商品”に思わず仰天 「これは凄い!!」
  3. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. /nl/articles/2412/20/news050.jpg 「マジかーーー!」 新札の番号が「000001」だった…… レア千円を入手した人が幸運すぎると話題 「555555」の人も現る「御利益ありそう」「これは相当幸運」
  5. /nl/articles/2412/20/news148.jpg 浅田真央、男性と“デート” 驚きの場所に「気づいた人いるかな?」
  6. /nl/articles/2412/20/news016.jpg 身内にも頼れず苦労ばかりの“金髪ギャルカップル”→10年後…… まさかまさかの“現在”に「素敵」「美男美女でみとれた」
  7. /nl/articles/2412/18/news144.jpg 海岸で大量に拾った“石ころ”→磨いたら…… 目を疑う大変貌に「すごい発見!」「石って本当にすてき」【カナダ】
  8. /nl/articles/2412/18/news047.jpg トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  9. /nl/articles/2412/15/news077.jpg 生後1カ月の保護子猫、後頭部を見るとあのアルファベットが……→9カ月の現在にびっくり 「プレミアム猫」「本当にPですね」
  10. /nl/articles/2412/19/news190.jpg 辻希美、17歳長女・希空に「ダサすぎるって」とツッコんだ格好 
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」