なぜ「ビタミンB」にはやたら数字がつくのか?

「ビタミンB1」「B2」「B3」「B5」……(なお「B4」はない)。

» 2018年02月02日 11時00分 公開
[QuizKnockねとらぼ]

 みなさんは栄養にどれくらい気を付けているでしょうか。筆者はラーメン、牛丼、パスタに落ち着いてしまいがちです。

 野菜や果物、お魚をとらないと不足しがちなのがビタミン。一口にビタミンといっても、「ビタミンB1」「ビタミンC」など、アルファベットや数字がついてさまざまな種類に分かれています。

 それにしても、ややこしいのは使われないアルファベットがあったり、ビタミンBにだけ数字がついたりすること。どういった経緯で、こうした分類がされてきたのでしょうか。

ビタミンの発見

 最初に「ビタミン」という言葉を使ったのはカシミール・フンクという化学者。

 フンクは米ぬかに脚気(かっけ)を予防する物質が含まれていると考え、1911年に成分を抽出して「Vitamine」と名付けました。脚気とは、ビタミンB1の不足によって糖質がエネルギーに変えられなくなり、神経などに障害が起こる病気です。

日本では、玄米を精米して白米を食べることが一般化した明治時代から脚気が増えました

 フンクが見つけた物質は、後に「ビタミンB1」と名付けられますが、当時はまだビタミンの研究が進んでおらず、「ビタミン」という言葉がビタミンB1を指していました。

最初に見つかったのに「ビタミンB」?

 ビタミンB1はビタミンの中で最初に見つかったのに、なぜ「ビタミンA」と呼ばれないのでしょうか。アルファベット順でいったら「ビタミンA → ビタミンB → ビタミンC → ……」となるはずです。

 ここには、アメリカのマッカラムという人物が関わっています。彼はフンクの発見から数年後、乳製品を使った実験で、ネズミの成長に必要な2種類の物質を抽出しました。このとき、脂溶性(油にとけやすい)の物質を「脂溶性A」、すでにフンクが見つけていた水溶性の物質を「水溶性B」と名付けたのです。

 先に発見されていたものを「水溶性A」と命名しなかった理由は、はっきりしません。自分が見つけた物質の重要性を強調したかったのかもしれません。

名称の変化

 さらにその後、レモンから壊血病を予防する物質を発見したジャック・ドラモンドという人物は、これを「ビタミンC」とし、「脂溶性A」を「ビタミンA」、「水溶性B」を「ビタミンB」としました。以降、健康を維持するのに必要な物質が、「ビタミンD」などのように空いているアルファベットを使って命名されていきました。

 ちなみに、ドラモンドはこのとき、フンクが名付けた「Vitamine」からeを取って「Vitamin」としました。このスペルは、今でも使われています。

ビタミンBに数字がつくのはなぜ?

 先ほど、乳製品から見つかった「脂溶性A」「水溶性B」がそれぞれ「ビタミンA」「ビタミンB」になった、という話をしました。

 しかし、さらに研究が進むと、「ビタミンB」がさまざまな物質の集合であることが判明。例えば、「ビタミンG」と名付けられていたものがビタミンBに含まれていることが分かり、1927年、名前が「ビタミンB2」に改められました。

 以降、物質のはたらきを調査しているうちに、似た物質が「ビタミンB」群に組み入れられ、数字が付けられていきました。現在はビタミンB1、B2、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)、B6、B7(ビオチン)、B9(葉酸)、B12が分類されています。

 「B4」などが欠番で、数字が飛び飛びになっているのは、後で「ビタミンとは全然違う」と分かった物質が除外されていったからです。

 ビタミンには「摂らないと健康に問題があるが、たくさん必要なわけではない」という特徴があります。たくさん摂取する物質よりも分析、研究が困難になりやすいことから、このような複雑な分類が生まれてしまったのかもしれません。

 名称を覚えるのは大変ですが、各ビタミンは先人たちの苦労の末に発見されたもの。その成果を、バランスの良い食生活につなげたいものです。

参考文献

日本ビタミン学会編『ビタミン総合事典』朝倉書店、2010

公益財団法人 ビタミン・バイオファクター協会


制作協力

QuizKnock


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news028.jpg 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
  2. /nl/articles/2411/19/news126.jpg 元「おニャン子」内海和子、娘・ゆりあんぬの“胃の粘膜ぶっ壊す”食事に激怒! 有名飲食店に謝罪し「出禁にして」「違う星の人そんな気がしてなりません」
  3. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  4. /nl/articles/2411/19/news083.jpg 「恐ろしい」 北海道の道路標識 → “見落としたら絶望”のとんでもない表示に衝撃走る 「普通にホラーでは?」
  5. /nl/articles/2411/18/news019.jpg 優しそうな“おかっぱ頭”の男性→プロがカットしたら…… “別人級の仕上がり”が470万再生「えっ!? って声出た」「EXILEみたい」
  6. /nl/articles/2411/19/news114.jpg 平愛梨、“夫・長友佑都選手”に眠れなくてLINE送信→“まさかの返信”に「なんやねん」「もう寝るしかない」
  7. /nl/articles/2411/18/news025.jpg “無給餌”で育てたメダカが2年後、驚きの姿に→さらに半年後…… 放置しておいたビオトープで起きた“奇跡”に「ロマンを感じる」
  8. /nl/articles/2411/18/news120.jpg 「天才が現れた!」 森永が教える“秋らしい”お菓子の作り方→たこ焼き器を使ったアイデアに「すごいすごい可愛い」
  9. /nl/articles/2411/19/news009.jpg 固い着物をリメイクしてみたら…… 生まれ変わった“まさかのアイテム”に「しゅげー!」「凄い素敵です」
  10. /nl/articles/2411/19/news062.jpg 「上げ底の先」 その名に偽りなし、高専の文化祭に出現した「限界節約ホットドッグ」が本当に限界だった
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた