地雷を探して15年 マインスイーパ日本最速プレイヤーが挑む“思考のスピードを超越した戦い”(3/4 ページ)

» 2018年03月03日 11時00分 公開
[マッハ・キショ松ねとらぼ]

マインスイーパの本質は「引き算」

―― TAプレイヤーたちはどうやって、あのすさまじい速度でマインスイーパを解いているんですか?

 ルールさえ理解していれば解けるような簡単な場面もありますが、そうでない場合は「法則」を盤面に当てはめることで地雷の位置を特定しています。

 「横一列に『121』と数字が並んでいたら、地雷は必ず『1』の正面にある」という法則があったとしましょう。このことを知っていて、この通りの状況が盤面に現れてくれたら、誰でもすぐに解けますよね。


「121」が並んだこの状況では、Aの部分にどんな数字マスが来ても、青丸のマスが開けます(画像提供:よわぽんさん)

―― そうですね。答えを知っている問題が、そのままテストに出たみたいな話ですから。

 この法則は単純化すると10種類いかないくらいで、覚えるだけなら簡単です。ですが、実際の盤面には膨大なバリエーションがあります。シンプルな法則を複雑な現実に当てはめるためには、頭を使わなければなりません。

 でも、TAではその思考の時間を削る必要があります。通常ならば考えるべき場面ですが、考えてはいけないんです

 例えば、「335」と数字が並んでいて、周囲にある地雷の位置がいくつか分かっていたとしましょう。このままでは法則が適用できないので、まずは明らかになっている地雷の分だけマスの数字を引いて、「実際に考慮すべき、足りない地雷数」を突き止めます。この結果、「121」になったら、先ほどの法則が使えます。


この2つも地雷数の引き算をして、状況を単純化すると「121」の法則が適用できます(画像提供:よわぽんさん)


地雷数の引き算をすると、2つの盤面は実質的に同じ(画像提供:よわぽんさん)

 マスの数字は1〜8までの値をとるのですが、私の場合、6以外なら見た瞬間に地雷がいくつ足りないか分かります。だから、考える時間がなくても法則を当てはめられるんです。

―― 「盤面を見る → 状況を整理する → 法則を当てはめる」という工程が直感的にできるようになっているから、消すべきマスがすぐに分かるというわけですか。難しそうですが、初見の盤面でもできるものなんですか?

 はい、1秒もかかりません(即答)。でも、別に高度なことをやっているわけではないんですよ。経験を重ねれば、自然とできるようになるものだと思います。

 それから、たくさん練習していくと「空白の意識」も身につきますね。……いや、すいません、これはうまく伝わらない感覚かもしれません。

―― 空白の意識……?

 マインスイーパは数字のあるマスを左クリックすると、そのマスだけがオープンになります。しかし、同じ操作でも空白マス(周囲に爆弾がなく、数字が書かれていない)の場合は

  • 周囲8マスが自動的に開く
  • 周囲のマスがまた空白マスだった場合も同様に自動で開く

 ということが起こるため、広範囲が一気にオープンになり、クリアに必要なクリック数が減ります。


よわぽんさんの解説によると、数字マスには「自力で開かなければならないもの」「空白マスによって自動的に開けるマス」の2種が。空白マスをうまく引けば、後者を開く手間が省けるのでタイム短縮につながります

 だから、空白マスは意識的に取っていきたいところなのですが、ゲームシステム的に実際に開いてみるまで空白マスかどうか分かりません。

―― え、じゃあ、無理じゃないですか。

 ……不思議なことに腐るほど経験を積んでいくと、分からないはずのことが何となく分かるようになるものでして

―― なるほど。確かに、高みにたどり着いた人にしか伝わらない話ですね、それ。

Win版マインスイーパが消えたときの思いは「どうせ使ってなかったし、まあいいか」

―― ところで、Windowsでは「8」から、マインスイーパが標準でインストールされなくなりました。あのときは困りませんでしたか?

 あー、そんなこともありましたね。実は、Win版は「プログラム的にチートが容易」「盤面生成のパターンが少ない」といった理由で、世界ランキングで認められていません。だから、TAプレイヤーは基本的に利用していないんですね。

 私も「ふーん、Win版なくなっちゃうんだ。どうせ使ってなかったし、まあいいか」という感じで、特に影響を感じませんでした。そもそもリニューアルで盤面がカラーになった「Vista」「7」の時点で馴染めていなくて。グレー一色のデザインに慣れてしまって、「Win版マインスイーパが許されるのは、XPまでだよね!」と思っていたような節があります。

―― TAプレイヤーの間では、どんなソフトが使われているんです?

 世界ランキングで認められているソフトは「Minesweeper X」「Vienna Sweeper」「Minesweeper Arbiter」の3種。それぞれに特徴があるのですが、よく使われているのは、プレイに関わるさまざま指標が閲覧できる「Arbiter」ですね。

 代表的な指標としては「その盤面をクリアするのに必要な最少左クリック数」を意味する「3BV」というものがあります。早解きしやすいかどうかを示す難易度の目安みたいなものです。他にも、1秒間に平均で何マス開けているかを表す「3BV/s」、マウスカーソルの移動距離を表す「Path」など、細かいものまで含めると数十種類あります。

 マインスイーパの難易度は、級によって変わる盤面の大きさ、地雷の数に加え、ランダムに決定される地雷の配置にも左右されます。「良い盤面に出会えるかどうか」という運要素もクリアタイムに影響してしまいます。だから、そこから自分の“真の実力”を知ることが難しくて、タイムとは別の観点からプレイの良しあしを教えてくれる指標が重要になるんです。


「Minesweeper Arbiter」。左側のウィンドウの指標は、初見だと意味が分かりませんが、有用だそうです。詳細は、よわぽんさんがブログ上で解説しています

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