「○○光年先の星」ってなんで分かるの? 天体までの距離を測定する「宇宙の距離はしご」

定規では測りようがない宇宙の調べ方。

» 2018年03月12日 11時00分 公開
[てんもんたまごねとらぼ]

 特撮番組「ウルトラマン」シリーズに出てくる「M78星雲」をご存じでしょうか。作中では3000万光年離れているとされていますが、M78という同一名称の天体が実際にあり、オリオン座方向に1600光年離れていることが分かっているんですよ。

 それにしても、どうやって3000万光年先や、1600光年先の星までの距離を測っているのでしょうか。宇宙のかなたにある星までの距離は定規やメジャーで直接はかることができません。

 実際の距離測定では、天体までのおおまかな距離や、天体の種類や特徴にあわせて距離を導出しているのです。この、距離ごとに星までの距離をはかる方法は「宇宙の距離はしご」と呼ばれています。


宇宙の距離はしご

【1段目】近隣の惑星までの距離:レーダー法

 レーダー法では、地球から光(電波)を発して目的の惑星で反射させ、さらにその光を地球で受信します。その光の往復時間を用いて距離を計算するのです。惑星に確実に反射させるために位置を計算する必要があるので、実際には惑星探査機による観測結果なども組み合わせて行われるんですよ!

【2段目】太陽までの距離:ケプラーの法則

 ケプラーの第三法則によると、惑星の公転周期の2乗は、楕円軌道の長半径の3乗に比例します。そこから他の惑星の公転周期と地球の公転周期を比べることで、太陽までの距離が導かれます。

【3段目】ご近所の星までの距離:年周視差法

 机の上にある物を、右目だけと左目だけで見てみてください。左右の目では見え方が異なりますよね。距離の違う2つの物を、2つの異なる角度から見たときの見え方の違いのことを「視差」といいます。

 ヒトが右目と左目の見え方の違いで距離をつかむように、地球が長半径に位置しているときに得られる視差を利用して星の距離を計算することを年周視差法といいます。新しい人工衛星の打ち上げ・観測精度の向上で、年周視差による距離測定範囲を3万光年まで拡大する計画もあるんですよ。

 ちなみに、同じ銀河内にある星の距離測定では、この他にも統計視差法や運動星団の収束点法などが用いられます。



【4段目】近傍の銀河までの距離:標準光源法(セファイド変光星)

 例えば、明るさが分かっている懐中電灯が遠くに置いてあるとき、実際に懐中電灯が出力している明るさよりも暗く見えますよね。見かけの明るさは距離の二乗に反比例して暗くなっているので、その懐中電灯がどれだけ暗く見えるかを測定すれば距離を算出することができます。

 これを明るさが分かっている星で行うのが標準測定法です。「星の本当の明るさなんてどうしたら分かるの?」と思われるかもしれませんが、ここで鍵になるのが「セファイド変光星」という種類の星です。セファイド変光星とは、星の半径が変化(脈動)することによって明るさが変わる星のこと。しかも、この周期によって実際の明るさが決まることが分かっています。

 つまり

  • 年周視差で距離が分かるセファイド変光星の周期‐明るさの関係を求める
  • 年周視差で距離が分からないセファイド変光星の周期を観測する
  • 変光星の実際の明るさを求める
  • その星が属している銀河までの距離を計算する

 と近所の星から徐々にステップアップしていくのが標準光源法であり、「はしご」と呼ばれる由縁です。標準光源にはセファイド変光星だけでなく、ミラ型変光星など特徴が分かっている他の星を使うこともあります。



【5段目】遠くにある銀河:標準光源法(球状星団、新星など)

 セファイド変光星の光が届かないほど遠くにある銀河は、セファイド変光星よりもさらに明るい星を標準光源として使います。例えば、10万から100万個の星が直径100光年ほどに密集する球状星団や恒星のガスが球状に広がった惑星状星雲、最終段階にある大質量星が爆発して輝く超新星など。

 しかし、これらの星はセファイド変光星ほど実際の明るさが分かるわけではありません。そこで

  • 比較的近くにあるセファイド変光星とそのそばにある暗い標準光源を観測
  • 真の明るさを算出
  • 遠い銀河の星を観測

 というようにステップアップしていきます。

 国立天文台が編さんするデータブック「理科年表」(発行元は丸善)は年1回のペースで発行されており、シリウス、ベテルギウスなどの主要な天体までの距離が記載されています。太陽までの距離はかなり精度よく確定していますが、同じ銀河系内のご近所の星でも測定距離が意外と更新されています。時々チェックしてみると面白いですよ!

主要参考文献

「シリーズ現代の天文学 人類の住む宇宙」(日本評論社/岡村定矩他編)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2505/20/news026.jpg 1歳娘とパパが18年後…… 同じポーズで撮影した“現在の姿”に「娘ちゃん左手nice」「カッコ良いお父さま!」の声
  2. /nl/articles/2505/19/news111.jpg “ユニクロ神アイテム8点”を54歳女性が着回したら…… コスパ最強の1週間コーデが目からウロコ「素敵」
  3. /nl/articles/2505/19/news025.jpg 赤ちゃんを見守るワンコ、ママが抱っこしたその後…… 仰天の行動に「笑ってしまいます」「我慢してたんだね」
  4. /nl/articles/2505/18/news056.jpg 昼休みにペットカメラで留守番中の猫をのぞいたら……「猛烈に帰りたくなった」 凄まじい破壊力の猫に「これは寄り道なんて無理」
  5. /nl/articles/2505/15/news169.jpg 「よく企画通せたなぁ(笑)」 ローソンの“ニッチすぎる”コンビニスイーツが話題 「ほとんどの人が知らないでしょw」「なぜwww」
  6. /nl/articles/2505/19/news026.jpg 築50年、薄暗かった実家の玄関→4年かけてDIYしたら……「これがあの家…?」 様変わりした空間に反響
  7. /nl/articles/2505/20/news022.jpg ダイソーの毛糸1玉を、かぎ針で黙々と編むと…… 春夏にピッタリな“簡単かわいい完成品”に「え!!」「娘に編んであげたい」
  8. /nl/articles/2505/21/news059.jpg 「この価格でこの機能!」 ワークマンの“最強暑さ対策980円帽子”に称賛の声殺到 「コスパ最高!!」
  9. /nl/articles/2505/19/news028.jpg 大人なら解けないと恥ずかしい? 「(1/3)−(1/3)」を計算せよ!【算数クイズ】
  10. /nl/articles/2505/21/news056.jpg 「100円だったので即決購入」 ハードオフで一目ぼれした“思わぬ掘り出し物”が590万表示 「くっそ懐かしい」「最高すぎだろ」
先週の総合アクセスTOP10
  1. マクドナルド、ハッピーセットの「早期終了」を発表 横行する転売――モラルのない行動に第2弾販売への不安広まる
  2. 小5のときに描いた絵→4年後…… 「ねぇ何があったん?」「鳥肌立った」中3になって描いた絵が160万再生
  3. 50年間放置して“ジャングル化”したおばあちゃんの家 → 掃除したら…… “木の中から現れたもの”が170万再生 「予想を超えた」「ブラボー」【海外】
  4. “1K8.5畳”の新居を一人暮らし男子が模様替え→1年後…… 「もうホテルやん笑」生まれ変わった空間に驚き「こんな部屋に住みたい」
  5. 「娘の目が大きいのは赤ちゃんだから」と思っていたママ、成長すると…… 驚きの姿に「ディズニープリンセスだ」【海外】
  6. ショウガを土に埋めて水やりすると……「すごすぎる!!」 想像もつかなかった、とんでもない状態に37万再生
  7. ボランティアで庭を掃除していたら…… 物置から見つかった“ヤバいもの”で警察沙汰に 「通報して正解」「絶対に触らないで」【海外】
  8. 皇后さま、全身「真っ白な衣装」に18万いいね
  9. 日本人のママと米国人のパパが国際結婚→生まれた子どもは…… 290万再生の“まさかの現在”に「びっくりしました」「心温まる」【海外】
  10. 「子供泣くぞこれ」 トーマスの塗り絵、描き始めて2秒で…… “予想を超えた変貌ぶり”に反響「夢に出てきそう……」「ヒィィ…!!」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 築53年家賃4万円・何てことない団地のドアを開けると…… まさかの空間出現に驚きの声「素敵」「ここまでお洒落に」
  2. 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
  3. 49歳病没の大宮エリーさん、生前開催の個展で「体調も万全でなかったので不安」 3カ月前には苦しげな姿も「声が出にくい」
  4. 自販機に“1000円”を入れたら……? 出てきた“とんでもないお釣り”にお口あんぐり「こんなん初めて見た」
  5. 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫、1年後の姿に「泣いた」と大反響 それからどうなった?現在の様子を聞いた
  6. 100万円の“錦鯉”を自宅の池に入れたら…… 「おかしいでしょ」3日後、まさかの事態に「鯉は難しい…」「信用が大切ですね」
  7. パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
  8. 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  9. 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  10. 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」