「所有できない電子書籍」問題 サービス閉鎖後、購入者はどうなる?
電子書籍購入者にとっては不安なところ。
先日、電子書籍サービス「Digital e-hon」の終了が発表され、ネット上には「購入したコンテンツが閲覧できなくなる」と問題視する声が続出しました。購入金額相当のポイント提供などの対応が取られていますが、手に入れたつもりだったものが消えてしまうことへの不満が強いようです。
iPadが登場した2010年は「電子書籍元年」と呼ばれ、国内ではいくつものサービスが誕生。そして、その数多くが消えていきました。電子書籍市場は年々拡大を続けていますが、裏側にはサービス撤退の歴史があるのです。もしも利用中の電子書籍ストアが終了したらどうなるのか、これまでの事例から考えてみましょう。
対応事例:購入金額に相当するポイントを返す
「電子書籍ストアが閉鎖すると、そこで購入した本が読めなくなる」という問題は、以前から知られています。この原因は、同サービスの多くがユーザーにコンテンツを所有させるのではなく、利用権を提供する形式をとっていること。購入後、本屋がつぶれても手元に残る紙の本とは大きく異なるところです。
消えていったサービスを振り返ると、この問題に「ポイント提供」「他サービスへの引き継ぎ」で対応した事例があります。例えば、ローソンの「エルパカBOOKS」は2011年に誕生し、2014年に電子書籍サービスを終了。その際、コンテンツの閲覧はできなくなるものの、その購入金額相当をPontaポイントで返金する方針が明らかにされました。
対応事例:他サービスで引き続き読めるように
同時期に発足、撤退した「TSUTAYA.com eBOOKs」(2011年〜2014年/T-MEDIAホールディングス)では、購入した電子書籍を他社が運営する「BookLive!」で閲覧できるようにするとの発表が。なお、一部引き継げないものに関しては、購入金額分をTポイントで返還するとしていました。
また、「ポンパレeブックストア」(2013年〜2018年/リクルートライフスタイル、メディアドゥ)の場合は、「スマートブックストア」で購入コンテンツの利用が継続できる形になりました。
スマートブックストアは2012年にソフトバンクモバイルが立ち上げたサービスで、2015年に運営元がメディアドゥに移行しています。ポンパレeブックストアのケースは単なるサービス終了というより、「同社による電子書店の統合」に近いかもしれません。
対応事例:アプリが生きている間は読めるように
終了後も他サービスでコンテンツが利用できるように。利用できなくなるなら購入金額に相当するポイントを返す―― これ以外の場合では、「サービス終了後もしばらく閲覧できる状態にする」という対応が取られることも。
「本よみうり堂デジタル」(2012年〜2017年/読売新聞)、「BookGate」(2010年〜2015年/廣済堂)は、サービス終了後も専用アプリをインストールしていれば、ダウンロード済みのコンテンツは閲覧可能と発表しました。
ただし、OSアップデートでアプリが起動しなくなる、端末の故障、買い替えなどにより読めなくなる恐れがあり、言ってみれば「すぐに読めなくなるわけではないから、その間に楽しんでほしい」という対応の仕方です。
特に厳しそうなのは、電子書籍が読める状況を維持するためには、OSアップデートを回避しなければならない点。更新が続く他のアプリが利用できなくなるなどのトラブルが考えられます。
ユーザー側は「いつか消えるコンテンツと割り切り、読めるうちに読んでおく」、あるいは「長期間コンテンツを保持するために、スマホやタブレットを“高価な電子書籍用端末”にする」という選択を迫られる形になりそうです。
購入した電子書籍が本当に消えそうになったら、どうなる?
これらの対応を取らなかったことで、炎上騒動に発展したのは「ヤマダイーブック」(2012年〜2014年/ヤマダ電機)。新サービス立ち上げに伴うサイト閉鎖で、以下のような告知を行いました。
- 購入コンテンツは新サービスに引き継がれない
- クレジットカード決済などで購入するサービス内の独自ポイントについては、返金などを行わない
これに対してSNSだけでなく、一部メディアからも批判的なコメントが飛び出し、ヤマダ電機は同日中に謝罪。「新サービスでも閲覧できるように調整」「独自ポイントには返金など対応」と、当初の告知とは180度異なる方針を取るとしました。
なお、この騒動があった2014年、出版社・ディスカヴァー・トゥエンティワンは「外部の電子書籍ストアが停止した際に、同社のコンテンツを無償提供する」というサービスを打ち出しています。
「電子書籍サービス終了→コンテンツ消失」という問題が起こると、「該当のサービスだけでなく、電子書籍一般に対する不信感が高まる」という声が現れることがありますが、当時は電子書籍ストアの閉鎖が相次いでおり、不安を抱くユーザーが多かったそうです。
サービス終了に伴うこういったトラブルを回避する方法の1つとして、DRMフリーの電子書籍を利用することが挙げられます。DRMとはデジタルコンテンツの違法コピーを防ぐ技術のことで、これを採用していないストアで購入した電子書籍は、撤退後も利用し続けることができます。
ただし、DRMフリーで提供しているストアは、コンピュータ関連書籍などを扱うカタいところが多いのが難点。「漫画村」を巡る騒動などを考えると、娯楽色が強いコンテンツで同じことをすると、違法コピーが横行してしまうかもしれません。
現時点では、やはり「長期間持っておきたい本は紙で、そうでなければ電子書籍」のように使い分けるのが確実そうです。
(マッハ・キショ松)
関連記事
- 電子書籍サービス「Digital e-hon」が終了へ 7月末を最後に購入済みコンテンツもほぼ閲覧不能に
購入者には、全国書店ネットワークや「BOOK☆WALKER」で使えるポイントを返還。なお、医学文献は終了後も閲覧できます。 - 「買った電子書籍が無駄になる」は「記載不備」 ヤマダイーブックがサービス終了告知についておわび
電子書籍「ヤマダイーブック」のサービス終了の対応が批判されていたが、「記載不備」だったと謝罪した。 - Googleも手を引いた「URL短縮サービス」、終了後にユーザーはどうなる?
収益化困難、詐欺への悪用……。 - 「Flash終了」までの20年とはなんだったのか? ネット文化からアニメへ至るFlashの歴史を振り返る
「おもしろフラッシュ倉庫」とかいろいろあったなぁ(遠い目)。 - 一度課金してしまった「ゲーム内通貨」は払い戻しできる? サービス終了したゲームはどうなる?
もう使っていないゲーム内課金、ありませんか?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
-
60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
-
「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
-
皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
-
真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
-
71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
-
新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
-
家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
- 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
- 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
- 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
- セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」