「所有できない電子書籍」問題 サービス閉鎖後、購入者はどうなる?

電子書籍購入者にとっては不安なところ。

» 2018年05月06日 11時00分 公開
[マッハ・キショ松ねとらぼ]

 先日、電子書籍サービス「Digital e-hon」の終了が発表され、ネット上には「購入したコンテンツが閲覧できなくなる」と問題視する声が続出しました。購入金額相当のポイント提供などの対応が取られていますが、手に入れたつもりだったものが消えてしまうことへの不満が強いようです。

 iPadが登場した2010年は「電子書籍元年」と呼ばれ、国内ではいくつものサービスが誕生。そして、その数多くが消えていきました。電子書籍市場は年々拡大を続けていますが、裏側にはサービス撤退の歴史があるのです。もしも利用中の電子書籍ストアが終了したらどうなるのか、これまでの事例から考えてみましょう


電子書籍サービスが終了するとどうなる?


電子書籍サービスが終了するとどうなる? これまでに登場し消えていった、国産電子書籍サービスの一部。運営元が有名企業だからといって、終了しないわけではないようです

対応事例:購入金額に相当するポイントを返す

 「電子書籍ストアが閉鎖すると、そこで購入した本が読めなくなる」という問題は、以前から知られています。この原因は、同サービスの多くがユーザーにコンテンツを所有させるのではなく、利用権を提供する形式をとっていること。購入後、本屋がつぶれても手元に残る紙の本とは大きく異なるところです。

 消えていったサービスを振り返ると、この問題に「ポイント提供」「他サービスへの引き継ぎ」で対応した事例があります。例えば、ローソンの「エルパカBOOKS」は2011年に誕生し、2014年に電子書籍サービスを終了。その際、コンテンツの閲覧はできなくなるものの、その購入金額相当をPontaポイントで返金する方針が明らかにされました。



対応事例:他サービスで引き続き読めるように

 同時期に発足、撤退した「TSUTAYA.com eBOOKs」(2011年〜2014年/T-MEDIAホールディングス)では、購入した電子書籍を他社が運営する「BookLive!」で閲覧できるようにするとの発表が。なお、一部引き継げないものに関しては、購入金額分をTポイントで返還するとしていました。

 また、「ポンパレeブックストア」(2013年〜2018年/リクルートライフスタイル、メディアドゥ)の場合は、「スマートブックストア」で購入コンテンツの利用が継続できる形になりました。

 スマートブックストアは2012年にソフトバンクモバイルが立ち上げたサービスで、2015年に運営元がメディアドゥに移行しています。ポンパレeブックストアのケースは単なるサービス終了というより、「同社による電子書店の統合」に近いかもしれません。


電子書籍サービスが終了するとどうなる? スマートブックスに移行するような形になったポンパレeブックストア

対応事例:アプリが生きている間は読めるように

 終了後も他サービスでコンテンツが利用できるように。利用できなくなるなら購入金額に相当するポイントを返す―― これ以外の場合では、「サービス終了後もしばらく閲覧できる状態にする」という対応が取られることも。

 「本よみうり堂デジタル」(2012年〜2017年/読売新聞)、「BookGate」(2010年〜2015年/廣済堂)は、サービス終了後も専用アプリをインストールしていれば、ダウンロード済みのコンテンツは閲覧可能と発表しました。

 ただし、OSアップデートでアプリが起動しなくなる、端末の故障、買い替えなどにより読めなくなる恐れがあり、言ってみれば「すぐに読めなくなるわけではないから、その間に楽しんでほしい」という対応の仕方です。




電子書籍サービスが終了するとどうなる? こちらは類似の対応をとったBookGateの終了発表

 特に厳しそうなのは、電子書籍が読める状況を維持するためには、OSアップデートを回避しなければならない点。更新が続く他のアプリが利用できなくなるなどのトラブルが考えられます。

 ユーザー側は「いつか消えるコンテンツと割り切り、読めるうちに読んでおく」、あるいは「長期間コンテンツを保持するために、スマホやタブレットを“高価な電子書籍用端末”にする」という選択を迫られる形になりそうです。

購入した電子書籍が本当に消えそうになったら、どうなる?

 これらの対応を取らなかったことで、炎上騒動に発展したのは「ヤマダイーブック」(2012年〜2014年/ヤマダ電機)。新サービス立ち上げに伴うサイト閉鎖で、以下のような告知を行いました。

  • 購入コンテンツは新サービスに引き継がれない
  • クレジットカード決済などで購入するサービス内の独自ポイントについては、返金などを行わない

電子書籍サービスが終了するとどうなる?電子書籍サービスが終了するとどうなる?電子書籍サービスが終了するとどうなる? 当初の告知

 これに対してSNSだけでなく、一部メディアからも批判的なコメントが飛び出し、ヤマダ電機は同日中に謝罪。「新サービスでも閲覧できるように調整」「独自ポイントには返金など対応」と、当初の告知とは180度異なる方針を取るとしました。

 なお、この騒動があった2014年、出版社・ディスカヴァー・トゥエンティワンは「外部の電子書籍ストアが停止した際に、同社のコンテンツを無償提供する」というサービスを打ち出しています。

 「電子書籍サービス終了→コンテンツ消失」という問題が起こると、「該当のサービスだけでなく、電子書籍一般に対する不信感が高まる」という声が現れることがありますが、当時は電子書籍ストアの閉鎖が相次いでおり、不安を抱くユーザーが多かったそうです。


電子書籍サービスが終了するとどうなる? サービス開始時の発表。2014年当時は「電子書籍ストアのサービス停止が相次いで見られるようになり」「突然読めなくなる不安から、電子書籍の購入をためらうユーザー」が多かったことを受けた対応とのこと


 サービス終了に伴うこういったトラブルを回避する方法の1つとして、DRMフリーの電子書籍を利用することが挙げられます。DRMとはデジタルコンテンツの違法コピーを防ぐ技術のことで、これを採用していないストアで購入した電子書籍は、撤退後も利用し続けることができます。

 ただし、DRMフリーで提供しているストアは、コンピュータ関連書籍などを扱うカタいところが多いのが難点。「漫画村」を巡る騒動などを考えると、娯楽色が強いコンテンツで同じことをすると、違法コピーが横行してしまうかもしれません。

 現時点では、やはり「長期間持っておきたい本は紙で、そうでなければ電子書籍」のように使い分けるのが確実そうです。

マッハ・キショ松

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  2. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  3. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  4. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  5. 田代まさしの息子・タツヤ、母の逝去を報告 「あんなに悲しむ父親の姿を見たのは初めて」
  6. 「遺体の写真晒すのはさすがに」「不愉快」 坂間叶夢さんの葬儀に際して“不適切”写真を投稿で物議
  7. 大友康平、伊集院静さんの“お別れ会”で「“平服でお越しください”とあったので……」 服装が浮きまくる事態に
  8. 妊娠中に捨てられていた大型犬を保護 救われた尊い命に安堵と憤りの声「絶対に許せません」「親子ともに助かって良かった」
  9. 極寒トイレが100均アイテムで“裸足で歩ける暖かさ”に 今すぐマネできるDIYに「これは盲点」「簡単に掃除が出来る」
  10. 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」