46年前からあった「若者の○○離れ」と、今起きている「お金の若者離れ」(3/3 ページ)

» 2018年05月20日 11時00分 公開
[辰井裕紀ねとらぼ]
前のページへ 1|2|3       

20-24歳は1978年ごろと比べて横ばい

 まずは20-24歳から。最新2016年の年収(名目賃金)は258万4000円。実質賃金は258万6587円です。統計でいちばん古い1978年では、年収は170万3000円。これを実質賃金に直すと255万3223円。ほんの少しだけ2016年の方が多いです。

 ただ、その前年2015年の年収は252万5000円(実質賃金も同じ)で、1978年のものより低くなっています。これを見ると、20〜24歳での比較では、ほぼ横ばいと言っていいようです。


若者の○○離れ 名目賃金のトップは1997年で282万2000円、物価を勘案した実質賃金のピークはバブル最後期1991年の295万4400円。そのバブル期〜90年代と比べるとかなり減っている

35-39歳で、後れを取りはじめる……

 しかし、そろそろ賃金が増えてほしい35-39歳で比較すると、現代の世知辛さが浮き彫りになります。2016年の35-39歳は名目賃金が432万8000円、実質賃金は433万2332円とほぼ変わりません。

 対して1979年の35-39歳は名目賃金こそ313万4000円ですが、実質賃金は453万5455円2016年の方が20万円ほど少ないのです。その前後の年も同様に、昔の実質賃金が現在のそれをやや上回っています。


若者の○○離れ 給料が上がらず、実質賃金は下がった。さらに90年代との差は歴然

 いまの企業では、昇給の伸びを抑えようとする流れが多く出てきています。もしかしたら、いまの20-24歳が35-39歳になるころには、年収はもっと下降線をたどっているのかも知れません。


逃げ切れる世代? 55-59歳の実質賃金は……

 そして最後は55-59歳の年収を見てみましょう。

 2016年の名目賃金は493万6000円。実質賃金で見ても494万0941円です。これに対して、1978年の名目賃金は273万8000円、実質賃金は410万4948円。55-59歳では逆に2016年の方が80万円以上も上回るという結果に。

 昇給を下げる動きに飲み込まれずに定年を迎えられる、いわゆる「逃げ切れる世代」ということなのでしょうか。東京工業大学准教授の西田亮介氏によると、「年長世代の退職金を作るために若い世代の昇給が抑えられている」と言います。


若者の○○離れ 年配世代は80万円以上上がっている

国民年金保険料は100円、大学授業料は3万6000円だった!

 若者が得られるお金は昔とほぼ変わっていない一方で、若者が支払わなければいけないお金は増えています。非正規社員が増え、払うべき人が多くなっている国民年金保険料。1978年度は2730円でしたが、2017年度は1万6490円と、約6倍にも上がっています。

 実は1966年の12月まで、35歳未満は保険料が100円でした。当時と2017年の消費者物価指数の差を考えても3.91倍なので、いまの391円にしか当たらないことになります。

 さらには大学授業料も国立大学が1975年度の3万6000円から、現在は53万5800円に。私立大学も同年度の18万2677円から、2014年度の水準で86万4384円にまで跳ね上がっています。これでは奨学金の支払いなども大変です(※1)。

※1:1975年当時と2017年の消費者物価指数の差は1.86倍ほど




 「若者の○○離れ」という言葉は、単に若者がそれらから離れている事実のみを指す場合もあるので、一概に使用するのが悪いということではありません。ですがこの言葉が、消費しない若者を“皮肉って”使われる場合、「それにお金を使わないのは、若者の意識が低いわけではなく、必然なのです」と訴えたいところです。

 それと同時に中高年世代の「大卒初任給が非常に安かった(1970年の場合、実質賃金で12万6700円ほど)」「家族を育てる負担が大きかった」などの言い分も聞き、世代間の対話を深めていくことが理想的と言えるのかもしれません。


辰井裕紀


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/01/news003.jpg パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. /nl/articles/2412/01/news031.jpg 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. /nl/articles/2412/03/news082.jpg 「ほ、本人……?」 日本に“寒い国”から飛行機到着→降りてきた“超人気者”に「そんなことあるw?」「衝撃の移動手段」の声
  4. /nl/articles/2412/03/news111.jpg 才賀紀左衛門、娘とのディズニーシー訪問に“見知らぬ女性の影” 同伴シーンに「家族を大切にしてくれない人とは仲良くできない」
  5. /nl/articles/2412/02/news009.jpg 【今日の難読漢字】「誰何」←何と読む?
  6. /nl/articles/2412/05/news006.jpg 「今やらないと春に大後悔します」 凶悪な雑草“チガヤ”の大繁殖を阻止する、知らないと困る対策法に注目が集まる
  7. /nl/articles/2412/03/news148.jpg 武豊騎手が2024年に「武豊駅に来た」→実は35年前「歴史に残る」“意外な繋がり”が…… 街を訪問し懐古
  8. /nl/articles/2412/03/news092.jpg 大谷翔平、“有名日本人シェフ”とのショット 上目遣いの愛犬デコピンも…… 「びっくりした!!」「嬉しすぎる」
  9. /nl/articles/2412/03/news055.jpg ハローマックのガチャに挑戦! →“とんでもない偏り”に同情の声 「かわいそう」「人の心とかないんか」
  10. /nl/articles/2412/03/news034.jpg 古着屋で“インパクト大”なブランケットをリメイクすると…… 劇的な仕上がりに386万再生「これはいいね、欲しい!」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
  4. 勇者一行が壊滅、1人残った僧侶の選択は……? 「ドラクエでのピンチ」描くイラストに共感「生還できると脳汁」
  5. 「笑い止まらん」 海外産アプリで表示された“まさかの日本語”に不意打ち受ける人続出 「何があったんだw」
  6. パパが好きすぎる元保護子猫、畑仕事中もくっついて離れない姿が「可愛すぎる」と反響 2年以上がたった現在は……飼い主に話を聞いた
  7. アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
  8. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  9. 「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
  10. PCで「Windowsキー+左右矢印キー」を押すと? アッと驚く隠れた便利機能に「スゲー便利」「知らなかった」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」