リリース前から「似てる」と指摘―― 物議を醸した艦船擬人化ゲーム「アビス・ホライズン」はどこまで“アレ”にそっくりなのか:モバクソ畑でつかまえて
「艦これアーケード」公式が、「関連性を指摘されているサービスがある」と注意喚起を行ったことで、一部で話題になっていました。
去る6月28日にリリースされた、スマートフォン用艦船擬人化ゲーム「アビス・ホライズン」(iOS/Android)が一部で物議を醸しています。
【2018年7月11日追記:セガ・インタラクティブおよびC2プレパラートが、同ゲームの日本国内における配信差し止めを求める仮処分命令申立てを行いました】
きっかけは同じ日に「艦これアーケード」が公式サイトで、「関連性を指摘されているサービス」について注意喚起を行ったこと(関連記事)。具体的なタイトルこそ書かれていませんでしたが、ユーザーの間では「『アビス・ホライズン』のことだろう」という声が多くあがっていました。
「画太郎ババァタワーバトル」の時にも書きましたが(関連記事)、何かがヒットしたら似たゲームが次々リリースされるのはゲーム業界では昔からよくあること。そんな中で、オリジナル側があえて「関連性はない」と表明するのはなかなか珍しいケースではあります(最近ではPUBGと荒野行動のように訴訟に発展するケースもありますが)。
果たして「アビス・ホライズン」と「艦これアーケード」はどこまでそっくりだったのか。モバクソゲーサークル「それいゆ」発起人であり、そっくりゲームに詳しい「怪しい隣人」(@BlackHandMaiden)さんに、実際に遊んで比較してもらいました。
ライター:怪しい隣人
出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。
リリース前から「似ている」の声あった
6月28日にリリースされた海戦アクションゲーム「アビス・ホライズン」。7月に入ってCMを打ったり山手線で中吊り広告を掲出したり、新宿駅でピールオフ広告を掲示したりと、宣伝活動も大変アクティブ。リリース前から「艦これアーケード(以降艦これAC)に似ている」と別の意味で有名だった作品ですが、リリース直後に艦これ運営から類似ゲームについての注意喚起があったことで(関連記事)、ある種の「疑惑」は頂点に達したように思います。
確かに見た目は非常に似ているゲームですが、実際プレイした感触も似ていたのかといわれると「プレイ感覚は全く異なる。似ていない」というのが私の結論になります。では、アビス・ホライズンは面白いのか? プレイヤーの声を聞いていると「面白い」という声もあるのですが、私は「面白い」と思うところまで到達できませんでした。独自のものを目指してはいるが、それが完成していない。そんな印象を抱かせるゲームです。プレイした感覚と面白さ。この2つの点から、艦これ運営の警告は杞憂であったと考えます。そう感じた理由について、これから解説いたします。
見た目はそっくり、プレイ感覚は別モノ
アビス・ホライズンは、3Dフィールドを舞台にして「艦姫」という少女たちが、アビソールという平行世界からの侵略者と戦う海戦アクションゲームです。設定上は「戦艦の擬人化」ではなく、アビソールの中でも人間の形を取っている「鬼姫」たちの技術を元に開発した「姫艦装甲」という装備の適合者とのこと。過去の擬人化兵器ものとは異なる設定ですが、ステージをクリアするごとに挟まるストーリーからはそういう要素は見えてきません。ただし、テキストは国内の経験豊富な方が担当しておられるため、中国のゲームとは思えない、クオリティーの高い日本語文章が読めます。
お話や設定は独自性を追求しようとしているのですが、一方で、見下ろし型の移動シーンおよび戦闘シーンはスクリーンショットを見る限り艦これACっぽいものを作ろうとしたとしか思えません。索敵機を放って敵の居場所を発見。そこに突入し、敵を中心に距離が3重の円で描かれた戦闘フィールドで定期的に主砲を撃ちつつ副砲を連打して敵をけん制。そして敵に圧倒的な差で勝利すると表示される「完全勝利S」これだけ書くとそのままじゃないかといわれてしまいそうです。
ですが、プレイした感触は全く異なります。操作方法が大きく異なるのは、艦これACが専用筐体であり、アビス・ホライズンがスマホゲームであることから当然のことなのですが、例えば陣形の変更(上下左右にスワイプ)、これが思わぬタイミングで暴発しがちです。艦これACは「陣形切り替えボタン」がタッチパネルの上に用意されているので暴発の心配はあまりありませんでした。
ゲームの進行についても大きな違いがあります。艦これACは基本1ステージごとに海の上を移動して索敵、相手を見つけて接敵したら戦闘を繰り返して敵のボスである主力艦隊を発見して倒し、ステージをクリアするのですが、アビス・ホライズンではこの戦闘を「会戦」と呼び、他にも移動するだけのステージである「急行軍」や索敵なしで敵と闘うだけの「遭遇戦」があります。ですが、それがバリエーションとして面白い要素になっているわけではないのが残念です。
艦これACの戦闘は、加速減速を繰り返して敵の攻撃を回避したり、有利な位置を取ったりする要素があるのですが、アビス・ホライズンにそれはありません。アビス・ホライズンの戦闘シーンは実質ターン制です。画面の上にゲージがあるのですが、こちらが主砲を数回撃つとそのゲージがなくなり、敵の攻撃へと移行します。そしてこの敵の攻撃を回避する手段として「加速」「急ブレーキ」「急旋回」があるのですが、私がヘタクソなのかこの3つを駆使して敵の攻撃を回避できたことがありません。結局相手を最初のターンにどれだけ倒すかというゲームになってしまいます。
また、ささいな要素ではあるのですが、艦姫たちの装備がレールガンだったり熱線砲だったりと妙に現代的です。一応ストーリーは20XX年代の平行世界ということなのですが、艦姫に1950年代以降のミサイル巡洋艦があったりすることに説明はありません。そもそも本家艦これも「なんで第二次世界大戦の船が女の子になって戦争してるのか」という説明はないのですが。
そんな艦姫さんたちは毎度のごとくドロップか建造で入手することとなります。建造については素材はシンプルに1種類。これを決まった数消費するだけで建造は完了です。複数引いた同キャラを合成とするとスキルが使えるようになり、戦闘は派手になるのですが劇的な変化は感じられません。
このスキル解放をはじめ、さまざまな要素にやたらとロックがかかっているのも気になりました。スキンもロック、敵の鬼姫が使えるらしい要素もロック。うっかりタッチすると「○○後に開放」と出てくるのでうっとうしいことこの上ありません。「無課金だと解放されない要素がたくさんあります」というゲームがやり玉に挙げられることがありますが、お金の代わりに時間を要求されている、そんな印象を受けるゲームでした。同種で後発のコンテンツなのだから、その辺はもっと遠慮なくいろいろと見せてほしかったですし、もう少しとっつきやすくしてほしかったなと思います。
もし「艦これAC」に似ていなかったどう評価されたか
現時点では残念なゲーム、と評価しているアビス・ホライズンですが、これがもし艦これACに似ていないゲームだったらどう評価されただろうと思ってしまいます。例えば美少女化した戦車が走り回るゲームとかだったら、少なくともパクリ扱いはされなかったのではないか、とか。
そもそも、遊べばここまで「パクリではない」と分かるゲームなのになぜ艦これ運営はコメントを出したのでしょうか。近年、「荒野行動」と「PUBG」のように「後発のパクリもの」に対してメーカーも厳しく対処する流れがあるように思います(関連記事)。また、ファンからメーカーへ「あれを放置するのか」というお怒りの声が届くこともあるでしょう。そうなる前に一言添えておいたというのは先行するメーカーのふるまいとしてはありかな、と思います。
ともあれ、アビス・ホライズンは残念なゲームとして認識してしまいましたが、「もう箸にも棒にもかからないようなゲーム」というわけでもありません。今後の調整でどのように変化していくか、時折見守りたいと思います。
関連記事
- 「艦これアーケード」が類似ゲームについて注意喚起 「類似するサービスは一切提供しておりません」
「アビスホライズン」ではないかとの声も。 - 「PUBG」開発元が「荒野行動」など競合タイトル2作品を提訴 配信・開発の停止を求めて
両作品によって「回復不能な被害を受けた」と主張。 - 集英社、アプリ「画太郎ババァタワーバトル」の配信を停止 「『どうぶつタワーバトル』への敬意と配慮欠いた」
一部で「どうぶつタワーバトル」との類似が指摘されていました。 - モバクソ畑でつかまえて:わずか29時間で配信停止に 「画太郎ババァタワーバトル」は何がダメだったのか
他の“そっくりゲーム”とは何が違っていた? - モバクソ畑でつかまえて:どう見てもギリギリアウトな「機動少女 -GundamGirls」にあらためて中国ゲームの深淵を見た
そのタイトル大丈夫!? → 何一つ大丈夫じゃなかった。
関連リンク
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