「学校に来ると声が出せなくなる子」にどう寄り添うか 小学校に潜む病や障壁と向き合う『放課後カルテ』で作者が描こうとしたもの(1/3 ページ)
マンガのレビュー連載「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」第94回は6月に完結を迎えた『放課後カルテ』の日生マユ先生にインタビューしました。
ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。
社主おすすめのマンガを紹介してきた本連載も、まもなく6年目。いつもご愛読ありがとうございます。
さて、連載第94回目となる今回は、毎年夏恒例のマンガ家さんインタビューをお届けします。お会いしたのは、女性マンガ誌『BE・LOVE』(講談社)にて2011年から連載されていた医療マンガ『放課後カルテ』(全16巻)の作者・日生マユ先生です。
7年間にわたる長期連載も、6月に発売されたコミックス16巻でついに完結。実は本連載でも過去に一度紹介したことがあるのですが、完結を迎えての心境などをあらためてうかがいました。
『放課後カルテ』は、小学校の保健室に校医として赴任してきた小児科医・牧野が、子どもたちの日々の生活の中に表れる、一見気付きにくい小さな異変から病気や障害を見つけ出し、診断する医療ドラマ。牧野はその口の悪さとぶっきらぼうな態度のせいで、最初は子どもだけでなく、教師からの印象も最悪。ですがその的確な診断から次第に信頼されるようになり、また牧野自身も子どもたちと接していく中で、少しずつその態度に変化が見られるようになります。
「アレルギー」「喘息」といった比較的知られた病気だけでなく、今回のインタビューで詳しくお話を聞いた「場面緘黙症」「注意欠陥多動性障害(ADHD)」のような障害、そして「孤食」など、子どもと保護者を取り巻くさまざまな問題を深く、丁寧に描き続けた本作。
どのようにして作られたのか。その創作姿勢や、作品を通じてのメッセージ、そして病気や障害と子どものことなど、完結した今だからこそ聞けることをたくさん語っていただきました。
キャラが乗り移るまで、考える
―― 7年間の連載おつかれさまでした。子どもの病気や障害という難しいテーマについて、これほど密度の濃い作品をずっと描き続けるのは大変だろうなと、毎回「あとがき」での苦闘を見ながらハラハラしてました(笑)。完結した今はどんな心境ですか?
「終わったなあ」とも思うんですが、これは描いていた時から思っていたんですけど、それよりも自分の手から離れてどこか遠くに行って、他人のものになったような感じで。
―― 喪失感、というのではなく?
ではないですね。『カルテ』の場合自分が作ったものという感覚より、実際に中の人たちが自分で考えて動くように、現実に生きているように考えていて。
そうやって続けた16巻だったので、どこかでみんな元気でやってくれているだろう、みたいな(笑)。作品が巣立って「みんな元気にやってるかしら?」っていうような感じですね。
―― では、満足して描き切ったという感じですか?
キャラ同士の物語を描いていくような脱線するやり方もあったかもしれませんが、私は絶対に嫌だったので最初から最後までブレないようにしました。例えば、栄養士の左保田先生の過去の話も入れようかと考えてたんですけど、どうしても脱線した感じになって、子どもや読者を置いてけぼりにしてしまうって思ったら描けないなって。
―― やっぱり子どもと先生、そして病気が物語の軸としてあるんですね。掲載誌『BE・LOVE』は女性誌ですが、女性に限らず広く人気がある作品だろうなと感じていました。読者さんはどういう方が多かったですか?
小学4年生から50代くらいの方までいっぱいいらっしゃるんですけど、お手紙をくださるのは小学生から中高生、若い人が多いですね。大学生や若い社会人、看護師さんとかも見ていらっしゃるようです。
―― 『カルテ』で取り上げた病気の患者さんも?
お手紙をくださる方にはいますね。他にはキャラクターと同じ悩みを持っている方だったり。長い手紙をいただくことが多いです。
―― それだけ、自分の境遇と重なっているように感じる人が多いっていうことですね。『カルテ』の登場人物はみんな内面の描写がすごくリアルですよね。
自分が子供の頃に経験していたことを思い出して描くことがほとんどです。いろんな子どもを描いてきましたが、その根本にある「さみしい」「認めてもらいたい」「私は誰なんだろう」みたいなことは、どんな人も絶対いつかどこかで考えたことがあると思うんです。
―― 「よほど作者がキャラとシンクロしてないとこのセリフは描けないな」と感じることが多かったです。
その子が乗り移るまで考えます。例えば羽菜ちゃんの自傷のような悩みは、上っ面で描くと絶対に良くないテーマなので、本で勉強しながら毎日彼女のことを考えていました。ある日熱が出て起きられなくなって。描くと涙が出るし、苦しかったです。でもこれが羽菜の心境なんだと思ったら、彼女の言葉を見つけることができました。その子が意思を持って、ちゃんと生まれて、今ここまで12年間生きてきた子っていうふうになるまで考える。
―― いえ、壮絶な創作姿勢だなと思いました……! そうすると、完成まですごく時間がかかりそうですね……!
ストーリーとキャラクターがうまくかみ合うまで、プロット、ネーム、下絵のそれぞれが、自分の中でどんどん変わっていくんです。違和感があったら、絶対何かが違う。読んでいる人が止まってしまったり、違和感を覚えるっていうのはよくないですね。
さらっと読んでもらうのが大事なんですけど、一方でひとつの表情で考えてももらいたいから、「ここは笑った方がいいんだろうか」とか考えつつ、全体がきれいに流れるように構成しています。
医療知識ゼロから挑んだ初連載
―― 『放課後カルテ』は日生先生初めての連載作品とのことですが、内容も絵も、とても初連載とは思えないほど、しっかりした作品だと感じました。どういう感じで連載が決まったのでしょうか?
マンガの投稿はしていたんですけど、なかなかデビューできなくて、それで3年間くらい1ページも描けなくなっちゃって。でも、マンガが描けなくなることが一番恐ろしい。私はデビューしたいんじゃなくて、マンガが描きたいんだと。
それで「デビューはもういいや」と、19歳のときに初投稿して評価されたマンガを描き直してコミティア(※)に出したんです。そうしたら、それを読んで感想をくださった方が1人いて。それを励みに描き続けて3冊目を出したとき、『BE・LOVE』の編集さんに「投稿しませんか」って声をかけてもらったんです。
※COMITIA(コミティア):東京で年4回開催される「オリジナルの創作モノ」に限定した同人誌即売会
―― その3冊目は『カルテ』の原型になるようなお話だったんですか?
いえ、でも小学生の話でした。1冊目で描いたのは15歳が主人公で、少女時代の暗い内面を描いた話でした。「15歳」という年齢にこだわっていた時期があって。成長途中の、どこかあいまいで灰色な部分を描きたいと思っていたんです。
―― 『カルテ』とは全然違う方向のストーリーですね……!
私、それまで医療マンガって見たことなかったんです。でも、当時の編集部には「この方には王道マンガを描いてもらいたい。保健室に校医がいるマンガが欲しい」というイメージがあったみたいで。「でもどうして校医が保健室にいるんですか?」って私が聞いたら、「さあ?」って(笑)。
―― じゃあ全く知識ゼロの状態から、ここまでのお話を作り上げたというわけですね。それは本当にすごい。
王道マンガ、いわゆるヒューマンドラマもそんなに見てなかったと思いますね。だから参考に『Dr.コトー診療所』とか『医龍』とか『おたんこナース』とかいろいろ送られてきたんですけど、最初はなかなかネームが通らなくて……。そこで編集部と話し合って、先生目線から子ども目線の物語に変えたら、ネームが通ったんです。最初は5話でって言われていたので、5話で終わるんだって描き始めたら、続くことになってしまって。
―― 読者の評判が良かったってことですね。
第1話の時に「感想がものすごく来てる」って言われてびっくりしました。ネットアンケートなので1行だけのものなんですけど、それがFAX用紙いっぱいに。とにかく予想外の反響で、担当編集さんが「編集長大喜びですよ!」って。最初の5話は1話完結ですけど、連載が決まって以降は1話で完結しない話になりました。
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