「年間40万円台」でヨットは維持できるキャプテンながはまの100万円で「船長」になる(5)(1/2 ページ)

コンパクトカーの維持費と大きくは変わらないのです。

» 2018年10月26日 15時30分 公開
[長浜和也ねとらぼ]

(前回に戻る)

 「本当は船に乗りたいけれど、大金が掛かるから」と諦めていた人に、「いえいえ、国産コンパクトカーを買い、維持するくらいの費用で船が持てますよ」という事実を伝えたいこの連載。

 これまで、船の買い方・選び方マリーナ事情と選び方船舶免許の取り方ヨットの動かし方をクリアし、めでたく「船長」として船で暮らしたり、船で旅をしたりできる身分となりました。

photo 筆者所有のヨット「阿武隈」

 そうなって気になるのも、やはりオカネですかね。「買ったはいいけれど、ヨット趣味を維持するのに一体いくらかかるのか」ということですね。今回は筆者のヨット維持費を例に「かかる費用」をひもといて解説します。

最も多くを占める「係留費」

 港に船を泊めておく係留費については第2回目「月2万円台でマリーナに船を係留できる」で紹介しました。

 念のため費用をおさらいしましょう。老舗の名門マリーナは、25〜26フィート(7.5〜8メートル)クラスの船で年間100万〜200万円。第三セクターの横浜ベイサイドマリーナならば、年間42万円で月額3万円台、漁港併設のみうら宮川フィッシャリーナならば、年間32万4000円で月額2万円台です。係留費は、クルマ維持費における月極駐車場代に相当します。

 なお、海上係留と比べて安くなるはずの陸置きマリーナですが、関東近辺のマリーナでは2018年現在、横浜ベイサイドマリーナやみうら宮川フィッシャリーナよりも高額なところばかりなのが現状です。また、陸置きマリーナは海に降ろしたり、帰港して海から揚げたりするのに必要なクレーンの費用が毎回かかります。

 とにもかくにも、ヨット趣味の維持費で最も多くを占めるのが係留代です。

年イチ発生「船底掃除/船底塗装費」

 本連載で勧める「海上係留マリーナ」は、船底やスクリュープロペラに海藻や貝などの海生生物がどうしても付着します。これが増えると抵抗になって、船が進まなくなります。そのため、最低でも年に1回は陸上に船を上げて、付着した海藻や海生生物をそぎ落として、ペンキを塗り直すメンテナンスが必要です。

海上係留する船は、年に1回、船を陸に揚げて船底塗装を行うメンテナンスが必要

 このときに併せて、船を電蝕から守るための部品「亜鉛ブロック」も交換します。これらのメンテナンスを「船底掃除」「船底塗装」といいます。海上係留の船は避けては通れません。

海藻や海生生物が船底やスクリュープロペラに付着する
そこで年に1回、船底の付着物をそぎ落として、ペンキを塗り直すメンテナンスが必要

 参考費用は、船をマリーナの整備エリアや造船所に引き上げる「クレーン代」、陸上に船を置いておくために一時的に借りる「台」の費用、新たに塗る船底用とスクリュープロペラそれぞれの「ペンキ代」、交換用の「亜鉛ブロック」の部品代で、約8万円です。

 クレーン代と船を置く台の費用はマリーナや造船所によって異なります。そして「付着物の除去」「ペンキ塗り」「亜鉛ブロックの交換」などを業者に依頼するならば、その分の作業工賃がかかります。その費用は2万円ほど。自分でやるならば発生しません。

年間1万円くらい ヨットだから抑えられる「燃料費」

 エンジンで航行するボートに対して、ヨットは風の力を使って航行できます。帆走を主体とするならば、エンジンを使うのは帆をしまった状態で走る出港の30分、同じく帰港の30分の約1時間程度で済みます。

 本連載で勧めている25〜26フィートクラスのヨットは、ほとんどがヤンマー製の「1GM」というディーゼルエンジンを搭載しています。このエンジンは(もちろん整備状態や航行状況によって差はあるものの)「1時間動かすと燃料の軽油を約1リットル消費」します。

 一例として、月に4回出港するならば、出港と帰港でエンジンを1時間使うので12カ月×4回で年間48リットル。それに加えて、年に2回だけ片道12時間かかる港まで遠出し、それを全てエンジンを使う航海だとすると、エンジン使用時間が1回24時間×2の48時間で約48リットル。ということでざっくりと年間100リットル、燃料費は年間約1万3000円くらいです。

クルマの車検に当たるが、意外と安価な「船舶検査費」

 船にもクルマの車検と同様の「定期検査=船舶検査」があります。本検査は6年に1回、本検査と本検査の中間(本検査から3年後)に中間検査を受けることが義務付けられています。

関東近隣の港を母港した小型船舶で「限定沿海」を取得すると、伊豆諸島の御蔵島まで航海できる

 搭載している安全関連設備によって、ヨットを含めた小型船舶は航行できる海域が定められています。「遠洋」「近海」「沿海」「限定沿海」「沿岸」など、幾つか種類がありますが、ほとんどのヨットは「限定沿海」を選択しています。費用もこの種類で算出します。

 検査手数料は、全長25フィートまたは26フィートの船の定期検査で2万4300円、中間検査で1万4900円です。このほかに、検査のたびに使用期限がある「信号紅炎」の部品代5400円も必要です。検査を受けて交付される書類を郵送で受け取る場合には、その郵送費の実費も発生します。

 ともあれ車検ほどひんぱんにはなく、基本費用もそこそこ安価です。

これがその“南限の島”となる「御蔵島」
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/25/news108.jpg 「ふざけてる」「作品を知らないのになぜ?」と怒りの声 マクドナルドと「HUNTER×HUNTER」コラボの“PR施策”が物議【台湾】
  2. /nl/articles/2410/26/news025.jpg 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた
  3. /nl/articles/2410/22/news162.jpg たった築8年で“ぶっ壊れた”マイホームのリアル おそろしい戸建て事情に「声出た」「我が家もそうでした」
  4. /nl/articles/2410/24/news052.jpg 大家に「好きにしていいよ」と言われて薄暗い部屋をDIY改装したら…… あまりの変貌に仰天「すっげえええ」 投稿者に話を聞いた
  5. /nl/articles/2410/25/news019.jpg 【今日の計算】「3+3÷3−3」を計算せよ
  6. /nl/articles/2410/13/news082.jpg 荒れ放題の“悪夢の庭”をたった1人で11時間掃除したら…… あっぱれすぎる働きぶりに「あなたはヒーロー」と称賛
  7. /nl/articles/2410/25/news207.jpg 一度も髪を切ったことがない女性が、髪をほどくと…… 美容師も驚がくのスーパーロングヘアに470万いいね「リアルラプンツェル!」【海外】
  8. /nl/articles/2410/26/news028.jpg 生後0日→1歳10カ月の赤ちゃん成長ビフォーアフターが衝撃の700万再生 それから2年たった現在は…… さらに驚く姿に反響
  9. /nl/articles/2410/26/news023.jpg 2歳娘が一時保育に行ってる隙に“空き巣”が…… まさかの正体に「留守を狙ったんですね」「かくほしちゃうぞ」
  10. /nl/articles/2410/23/news154.jpg 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫が、1年後…… まさかまさかの“現在”に「うわあ!よかったねえ!」「お幸せに」と100万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  3. 「Snow Man」の映像が中国で物議→公開停止 所属会社「歴史的事象に対する配慮に欠けた」と中国語と日本語で謝罪
  4. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  5. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  6. 「かわいいってこういうこと」 生後1カ月の子猫が暖をとる場所は……幸せしかない姿に「この角度から見るのが最幸」
  7. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  8. 「ボットン便所を簡易水洗にしたい」→「どれどれ……」 建設会社スタッフが驚がくした“歴史的遺物”に大反響 「相当貴重なもの」
  9. 「その手があったか!」 ほぼ卵焼きだけの弁当?→“まさかのサプライズ”が800万再生 「天才すぎて泣いた」
  10. 飛行機で傷口が感染し「身体の一部を切除」 133万フォロワーの元アイドル「痛みで涙が止まらない」悲痛の現状報告
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声