「トランスフォーマー」を創る男たち―― 日本生まれの変形ロボットは、なぜ世界130カ国で愛される一大コンテンツとなったのか(3/3 ページ)

» 2018年12月17日 10時00分 公開
[しげるねとらぼ]
前のページへ 1|2|3       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

関節一個で労力が数倍に! 全力投球のトランスフォーマー設計

蓮井:まあ簡単に言ってるんですけど、腰をひねるようにするのはけっこう大変でした。1個関節が増えるとその分パーツの負担が増えるので。

―― やっぱり関節を増やすのは大変なんですか?

蓮井:全身の関節の中でも、特に足の接地は変形の構造をすごく限定するんです。変形しないのであれば、足はなにか四角いコの字のパーツがあればいいんですけど、そこに横向きのヒンジを設けるということはヒンジのスペースを確保した上で変形を考慮しなくちゃいけない。だから、いつもやっている変形ができなくなるんです。でも足を接地させることによって、ちゃんと銃を構えて撃っている表現、地に足をつけて戦っているという表現ができるようになる。シリーズのコンセプトとして外せない要素なので、今回は全部そういう構造にしています。

―― そもそも、トランスフォーマーの設計において、関節が増えることの負担ってどういうことなんでしょうか?

蓮井:コスト的な面が一番大きいですね。トランスフォーマーは、ユーザーにお届けするバリューを考慮し、変形を考える前にパーツ数や重量、サイズなど、全て枠組みを決めてから作るんです。全体の仕様の枠が設計の前に決まっているから、その中で2パーツ使うとかはけっこう大ダメージなんですよ。


トランスフォーマーシージ インタビュー

―― え! 設計が決まってから仕様を固めてるものだと思ってました。

蓮井:そうじゃないんですよ……。だから、まずはビークルからロボットに変形させるのが一番の目的なんですけど、そこに可動というプラスアルファが乗ってくるとけっこう大変です。もちろん極力可動するのが一番いいんですが、以前はやってなかったことを今回はやるということになると、別のところを削らなくちゃいけない。

―― 関節がひとつ増えると、トレードオフする部分が出るということですね。

蓮井:まさにそうです。だからこのサイドスワイプも、本当は別の変形を考えていたけど、そうでないところに落ち着いたんです。感覚としては、仕様に従って何か要素を落としたというよりは、全てを考慮して導き出された答えがこれだったという方が正しいですね。

―― はあ〜……大変だ……。変形機構はどうやって考えるんですか?

蓮井:自分は3通りくらいの変形を考えて、枝葉が分かれていって……という感じです。分岐したけどゴールにたどり着かなかったパターンもある中で、ちゃんとゴールにたどり着いたものが採用される。途中でダメになるものもあれば、別の分岐と組み合わせることでうまくいくこともある。ある程度は脳内で考えて、途中から紙に書き出してますね。

―― そこはアナログなんですね。

蓮井:最初のうちは全部手書きです。ゴールが決まっていればPCでやりますけど、ゴールが決まってないのに3通りの設計を同時にPCで書くわけにはいかないんですよ。だから最初は走り書きで大枠の変形を決めて、だんだん細分化していく。最後の「ここだけはどうしても決まらない」っていうところをうまくパーツを使って収めたり。それが解決しないものはゴールにたどり着かないから、いいところまで行っても使わなかったプランもたくさんあります。

―― 実写映画の商品も同じプロセスで考えているんですか?

蓮井:あれも最初は手書きでやってます。

岡部:どの映画でもそうなんですけど、最初はビークルとロボット形態の簡単な画像しかないんですよ。


トランスフォーマーシージ インタビュー

蓮井:こちらの方は上映される1年前には商品の設計を終わって、試作を作って金型を始めないといけないけど、映画は1年前には出来上がってないんですよね。コンセプトアートだけとか、シルエットしかないとか。顔を想像で作ったこともあります。だから劇中と全然違う顔になってるものもあるんですよね……。推測だったので。

―― た、大変だ……。

蓮井:同じロボットでも2つプランがあって、プロポーションが全然違うんだけどどっちが使われるか分からない。で、こっちだろうと作ったものが違ってて、なんでこんな映画本編と違うプロポーションになってるんだって言われたりします。でもそういうのも全部発売してますね(笑)。

岡部:そういう事情もあり、今年4月から展開中の、歴代の映画キャラを最新のデザインで発売する「スタジオシリーズ」がユーザーにとても受け入れられています。




蓮井:スタジオシリーズのいいところは、もう映画が出来上がった後だから3Dを見ながら作れるところですね。

―― そういう設計のノウハウってどうやって身につけるんですか?

蓮井:トランスフォーマーの変形の仕組みには伝統工芸的なところがあって、師匠の背中を見て学ぶというか、作品を見つつ、そこでどう変形させてるかとか、過去の商品を見ながら勉強しました。もともと自分は大学でバイオサイエンス的なことを勉強していたので、設計とは関係なかったんですよ。ロボットの絵が描けるわけでもなかったし。

―― バイオサイエンス! 確かにロボットのおもちゃとあんまり関係なさそう……。

蓮井:昔は変形のイメージができなかったので、自分がやりたい変形に近しいおもちゃを探してました。だから、1個変形ロボットを作るたびに3〜4個は手元におもちゃが増えていくんですよ(笑)。ここのこの可動は作りたいものと同じだとか、そういうのを見つけてきてそれをまねて紙に書き出して作ってみる。それを繰り返しているうちに、他のおもちゃを見なくても作れるようになりました。

―― 蓮井さん以外にも、設計を担当されている方がいらっしゃるんですよね?

蓮井:そうですね。うちのチームで特殊なところは、自分の書いた図面をチーム全員でレビューする点ですね。もう懺悔(ざんげ)というか、裁判みたいな感じです(笑)。「ここ弱すぎるだろ!」「絶対割れるだろ!」「こんなカカトじゃ立たねえよ!」とか、いろんなダメ出しを喰らいながら作るんです。だから自分の図面を持っていくのは恐怖ですよ……。それをパスできるものをどうやって作るかが勝負ですね。


トランスフォーマーシージ インタビュー

―― うわ〜……怖いですねそれは。

蓮井:昔のトランスフォーマーって可動をそれほど必要としないおもちゃだったんですが、90年代に日本にも「スポーン」とかのフィギュアが入ってきて、アクションフィギュアというジャンルにも対応したものを求められるようになってきたんです。可動は可動、変形は変形で、両方の関節が入るとすごい数になる。ただ、今はどうシンプルにできるかという技術ができてきたので、一概に昔より変形が複雑になったというわけではないんです。担当者によっても嗜好が違うので、それによっても変わってきますね。

―― ほんと奥が深いですね、変形……。


で、「シージ」って今後どうなるんですか?

―― 今後、「シージ」ってどこかでストーリーを展開する予定はあるんですか?

岡部:今は公式サイトで、今後の展開を予想させるような数分の動画をあげています。ただ、ストーリー面で今後どのような展開をするのかはまだ言えませんが、今回は「トリロジー(三部作)」なので、今後の展開にぜひご期待ください。


動画が取得できませんでした

―― あ、ほんとだ! ロゴにしっかりトリロジーって書いてありますね。

岡部:そうなんですよ。やっぱりどこかのタイミングでセイバートロン星からは脱出するはずなので、そういう展開もあるのかな〜ということで。

―― コグみたいなサポートメカは今後も出ますか?

岡部:今発表しているところだと、シックスガンなんかはそうですね。あと海外ではブラントっていう戦車のキャラクターもリリースの予定があって、国内でも発売の検討をしています。



トランスフォーマーシージ インタビュートランスフォーマーシージ インタビュー 6種類のサポートパーツに分離するシックスガン


蓮井:「シージ」をやるにあたって、トランスフォーマーには「バラバラになって他のキャラクターを強化する」っていう種族がいるんじゃないのかっていうのを考えたんですよ。それこそコグみたいな。

―― なるほど、コグやシックスガンはああいう種族ということなんですね。

蓮井:それを突き詰めて商品化してる感じですね。各装備は全部5ミリのジョイントでくっつけられるので、だから「シージ」にはブロック遊びみたいな要素もあるんですよ。だから、ぜひ自分だけの武器を作ってみてほしいですね。今までの商品にも取り付けられますし。それがキャラクターを強化して掘り下げるギミックにもなっている。

―― 今後シージというシリーズはどうなるんでしょうか?

蓮井:キャラクターの関係性を踏まえつつ、ロボットモードのスケールを統一しているので、どんどん集めるとより世界が広がっていくと思います。今はトリロジーの1年目ですが、2〜3年目を見据えて現在も設計を進めてます。タイタンクラスの巨大な商品もラインアップに入っていますよ。

岡部:先行してカセットロンの予約が始まっていたんですが、サウンドウェーブの情報も公開になりました。今後はディセプティコン側の主要キャラクターも揃ってくる感じですね。


トランスフォーマーシージ インタビュートランスフォーマーシージ インタビュー 「シージ」ではブレインシップへと変形するサウンドウェーブ


蓮井:コグみたいな、いままでスポットが当たってなかったキャラも出していくので、「このキャラがこういう武装用キャラクターで出るのか」という点も含めて、今後も楽しめるシリーズになるのかなと思っています。ほんと、コグは長年やりたかったんですよ。レジェンズのフォートレスマキシマスを作ったあたりから、どうフォローアップをしていけるかを含めてアイデアは出し続けてたんで、やっと実を結んだなと(笑)。そういう点も含め、長く集められるシリーズになっていくといいなと思っています。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2408/31/news036.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほどの変貌が379万表示「そこだけボッ!ってw」 半年後の現在について聞いた
  2. /nl/articles/2408/30/news121.jpg 「地獄絵図」「えぐすぎやろ……」 静岡・焼津市の地下歩道が冠水 “信じられない光景”にネットあぜん
  3. /nl/articles/2408/31/news073.jpg 「よくこんなものが……」 米不足でメルカリに米出品→疑問の声も 運営は“禁止出品物”に「然るべき対応」
  4. /nl/articles/2408/31/news025.jpg 次男に塩対応の柴犬、いよいよ次男の帰省最終日を迎え…… 本音が出た瞬間に「不意に泣かせるのやめて欲しい」と感動の声
  5. /nl/articles/2408/30/news017.jpg 最上位グレードのハイエースを“50万円の底値”で購入したら…… 驚きの実物に「ある意味最強」「正直、羨ましい」
  6. /nl/articles/2408/30/news188.jpg 実写「着せ恋」、キャストに物議 海夢の再現度が高すぎるタレントを推す声あがる 「逆になんであかせあかりさん以外の人……」
  7. /nl/articles/2408/29/news193.jpg 「なんで欲しいと思ったんですか?」 酔った勢いで購入 → 後日届いた“まさかの商品”に反響 「理性あったら買わないw」
  8. /nl/articles/2408/28/news142.jpg 明石家さんま、69歳バースデー迎え長男から幸せ呼ぶ“輝かしいプレゼント” 同席した元妻・大竹しのぶは「最高の笑顔でした」
  9. /nl/articles/2408/31/news084.jpg 仕事早いな! 大谷翔平の愛犬“デコピン”、大反響の始球式がさっそくTシャツ化 「こ、これは……」「欲しい!」と爆売れの予感
  10. /nl/articles/2408/30/news113.jpg 「これ600円なの?」 大谷翔平が長く愛用しているデコピンの“おやつ入れ”、始球式で注目「おそろだった」「真美子さんが選んだのかな」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  2. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  3. 「苦手な芸能人は誰?」 あのちゃん、女性芸能人を“実名で即答” 「ここ最近で一番笑った」「強すぎる」
  4. ホテルでチェックアウト、忘れ物で多いのは? ホテル従業員が教える「圧倒的に多い忘れ物」
  5. 乳がん闘病中の梅宮アンナ、抗がん剤治療で「髪の毛ほとんどなくなっています」 帽子かぶり「ああ、来たか」
  6. 「キティちゃんのお面だと思ったら……」 ひっくり返すと“まさかの正体”に11万いいね
  7. 「凄すぎる…」「ガチで滝」 “市ケ谷駅の冠水”が衝撃与える 階段に大量の水が流れる様子も…… 東京メトロに経緯を取材
  8. 「早すぎます」「一体なにが」 52歳ボディービルダー、訃報1週間前に最期の投稿で“人生初の試み” 恋人は「亡くなる数時間前まで普通にお出かけも」
  9. お盆で帰省した次男に、柴犬も猫もまさかの反応→どちらも豹変して爆笑 「涙出てきました」「おもろ可愛過ぎ(笑)」
  10. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」