「盛り上がりすぎたので急きょメディアに公開」 タカラトミーの“社内”ゾイドコンテストが自由にもほどがあった
いや……なんというか、自由だな……!
タカラトミー社内で現在展示されている「ゾイドコンテスト」がいろいろすごいらしい。グループ社員による社内コンテストながら、集まった作品数は実に200点以上。もともと一般公開はしておらず、仕事などでオフィスを訪れた人にしか公開していなかったが、あまりにも盛り上がってしまったので、急きょメディアに向けて公開することにしたのだという。
ということで、立石のタカラトミー本社まで見に行ってきたのがこの記事です。レポートは元模型雑誌編集者で、ライターのしげるさんにお願いしてみました。
ライター:しげる(@gerusea)
岐阜県生まれのライター。プラモデル、アメリカや日本や中国のオモチャ、制作費がたくさんかかっている映画、忍者や殺し屋や兵隊やスパイが出てくる小説、鉄砲を撃つテレビゲームなどを愛好。「ゾイド24」のサンドスピーダが好きだけど、あれは厳密にはゾイドではない気もする。
「もったいないから社内の模型コンテストをメディア向けに公開します」って普通やる?
2018年の6月から、タカラトミーが展開しているゾイドシリーズの新作「ゾイドワイルド」。およそ12年ぶりとなるゾイドの新製品として登場し、従来の1/72スケールから1/35スケールへのサイズ変更や、ランナーに部品がくっついたプラモデル形式ではなく、バラバラに箱に入っている部品を「発掘」して組み立てるプロセスへの変更など、旧シリーズからの大きな変化があった。
この「ゾイドワイルド」、実際なかなか好調らしい。確かに発売当初は店頭在庫の売り切れが続出したり、クリスマスおもちゃ見本市2018では「おもちゃ屋さんが選んだクリスマスにおすすめのおもちゃ」ランキングでワイルドライガーが男児向け玩具第3位にランクインしたりしている。だからというわけでもないだろうけど、タカラトミーでは「ゾイドのキットを使った社員の作品コンペ」を開催したとのこと。当然ながら参加者は全員タカラトミーの社員とその家族のみ。しかしそのコンペが思いの外盛り上がっちゃったので「俺の私のゾイドコンテスト」としてメディアに向けて作品を公開するらしい。
確かに、模型メーカーなどで社内のプラモデルコンテスト的なことをやる会社はある。しかし、大体そういうのって結果が会社のブログに載ったりする程度である。「案外たくさん応募があったし、もったいないから社内の模型コンテストをメディア向けに公開します」って、聞いたことがない。どういうことなんだろう……?
というわけで立石のタカラトミー本社にお邪魔してきたわけですが、
いや、多くね?
垂れ幕、でかくね?
あと普通、垂れ幕2種類も作らなくね?
もう作品が展示されているエントランス周辺がゾイド一色。床もゾイドだし、入り口の横ではおもちゃショーとかでもおなじみのデカいギルラプターがお出迎えだ。エントリー総数は200点以上だし、フロアマップまである。
ちなみにこのイベント、一応コンテストなので人気投票があり、会場の隅には投票箱が置かれている。投票するのはタカラトミー社員と、仕事などで来社したお客さんたち。作品を作ったのも社員なら投票するのも社員なので、「気を遣って上司に投票してしまう」「会社の上層部の人が参加している(具体的には言えないレベルのマジで偉い人も参加しているらしい)のでいろいろ忖度してしまう」みたいな事態を防ぐためか、展示作品は全て作者名が伏せられている。正真正銘のガチンコだ。
で、肝心の展示されている作品なんですが、
「ゾイドもゾイドなんだけど、横のお前はアニアの"ブルー"だろ!」と声をかけたくなるようなジュラシックなやつとか、
Zナイトに「屍って言うな!」って叫ばせるのずるいでしょっていうやつとか、
ワンカップとウコンの力と焼き鳥をくくりつけられてしまったトリケラドゴスとか、
スコーピアが天ぷらにされたりとか、酒に漬けられたりとか、
ゴリラがいじられがちだったりとか、
パンとか、
美川憲一とか……。
いや……なんというか、自由だな……。
美川憲一とか天ぷらとかだけではなく、模型的にしっかり作ってあるものも。「なんでこうなったのか」が分かりやすいので、ゾイドの天ぷらや美川憲一ゾイドの後に見ると安心しますね。
後はナックルコングがこちらの言葉に反応したり、音楽が流れて踊ったりする作品も。この辺の「動いて音が出る」みたいなギミックに凝る感じは、さすがにおもちゃ屋さんの社員の作品だな〜!
「ゾイドワイルド」の企画開発担当である平位俊雄さんによれば、今回の社内コンテストの前に、ゾイド担当チームだけのゲリラ的コンテストがあったとのこと。それが案外盛り上がったため「じゃあ次は全社で……」ということで今回のイベントにつながったという。
そもそも、「ゾイドワイルド」自体が展開から半年経過し、開発チームにはこの先は「改造すること」の面白さを伝えていきたいという考えがあった。買ってきただけでも「発掘→復元→本能解放(各ゾイド固有の必殺技が出る)」というプロセスを楽しめる「ゾイドワイルド」だが、さらにユーザー個人個人が自分の想像や妄想をぶつけるという遊びを楽しんでほしい……という、次のフェーズに入りたいという構えである。じゃあ取りあえず、まずは社内で実際にそれをやってみましょう、というのが今回のコンテストだったわけである。突発的に勢いで開催したのかな……と思いきや、まあまあ真面目に「ゾイドワイルド」の今後の展開を見据えたイベントだったのだ。
Twitterの“中の人”も参加! それぞれの作品を見せてもらった
で、タカラトミー内の各部署を代表して、顔出しOKな参加者の皆さんが集まってくれたわけですが……。
左から、ニュープロダクト企画開発室で「プリントス」を作った土肥雅浩さん、ボーイズ事業部で「ベイブレード」などを担当している濱博之さん、ガールズ事業部で「L.O.L. サプライズ!」などを手掛ける間瀬玲奈さん、タカラトミーアーツ(タカラトミーのグループ会社)で缶に取り付けられるビアサーバー「ビールアワー」を手がけた中村友香さん、そしてタカラトミーのTwitterの“中の人”である。中の人の実物を初めて見て、正直テンションが上がってしまった。実在したんですね、中の人……。
早速それぞれの作品を見せてもらうことに。土肥さんの「電脳支配グラキオサウルス」は、ゾイドそのものはほぼキットのままながら、搭載する基盤を全て自作。光るしスチームは噴射するし電光掲示板みたいなのはついてるしで、模型というよりほぼ電子工作。「これはプリントスを作った人の作品」って言われたら、なるほどな〜と納得してしまう。
ボーイズトイを担当する濱さんの作品が「ミラージュドラゴン」。ボーイズトイ部門のスタッフということで、とにかく男児ウケする要素がパンパンに詰まった作品だ。いや〜、分かる。とんがった部品がたくさんくっついた竜、男子ウケが悪いはずがない。カツカレーとか焼肉とかと同レベルのウケ具合なのは間違いないだろう。
Twitterの中の人の作品がこちらの「密林に潜む1対の霊長類」。「草が生える」というネットスラングから「ゾイドに草を生やしてみたらウケるのでは……」と着想したという、Web担当らしいのかそうでもないのか判断保留な一作である。ちなみにこの作品を風呂場で塗装したら緑色の塗料が風呂場中に散ってしまい、しばらく風呂に入るたびに緑色の粒子まみれになったそうである。壮絶だ……。
間瀬さんの作品がこの「GORINCH」。「グリンチ」のファンだとのことで、なるほどクリスマスが近いからグリンチね……アニメ版の映画もやるしね……と寄って眺めたところ……
顔が実写版グリンチだコレ。聞けば顔は紙粘土で自作したとのこと。すごい。あと、ちょっと怖い。
中村さんの作品がこちらの「ワイルド屋 今月のゾイ丼 旬のかぼちゃとスコーピア天」。スコーピア以外もタカラトミー製品で固められており、かぼちゃはトミーテックのNゲージから「新潟交通かぼちゃ電車ラッピングバス・モハ14電車セット」、ご飯はタカラトミーアーツの「チネリータ」で作ったという愛社精神あふれる作品である。しかし、スコーピアは天ぷらにされすぎではないのか。
電車とサソリ型ゾイドが並んで天ぷらにされて飯の上に載っているという、恐らく人類の誰も見たことがない光景。天ぷらの衣は着色して溶かしたロウをお湯に垂らし、そこにゾイドや鉄道模型をくぐらせるという食品サンプルと同じ作り方で製作し、タレはマニキュアを調合、ネギに至ってはゾイドキャップそのまんまという、ていねいさとパンクさが混ざった作品である。あなたは鉄道車両が天ぷらになったところを見たことがありますか……?
というわけで、フリーダムすぎる発想が火花を散らした俺の私のゾイドコンテスト、結果発表は12月27日にタカラトミー公式ツイッターアカウントで行われる予定である。さらに今後タカラトミーでは、一般ユーザー向けに「俺のゾイドコンテスト」を開催予定! こちらは2019年1月中に「ゾイドワイルド」公式サイトにて詳細が発表される。ゾイド担当チーム的には「詳細は今後発表いたしますが、何かしら順位をつけて上位の人には何か賞品を出したりとか、公式サイドからの継続的な働きかけはしたいですね! 募集してそれで終わり……ということはありません!」とのこと。
というわけなので、ゾイダー諸氏はアイデアを練っておいていただきたい。取りあえずゾイドに衣をつけて揚げるネタは、もう避けたほうが無難だと思う。
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