コラム
» 2019年02月16日 12時00分 公開

32平米ワンルーム×材料費2万5000円の賃貸DIY。空間を「仕切る」のではなく「重ねて」暮らすということ(1/2 ページ)

建築家による、自分たちが住む賃貸住宅のDIY改装。

[小笹泉(IN STUDIO),ねとらぼ]

 あなたは今住んでいる賃貸の部屋に満足していますか。いや、賃貸の部屋に満足している人などいるのでしょうか。こうした部屋という部屋はほぼ全て、住人のことを知らない誰かが作った空間なので、住んでいて満足できるはずもありません。では、どうすれば満足する部屋に住むことができるのでしょうか。

 その答えは、ある哲学者が教えてくれました。どうやら「建てることは、住むことに根ざしていて、それこそが考えることなのだ」とのことなのです。1950年のハイデガーの講演「建てる・住まう・考える」の一節ですが、もっと誤読すれば、よく考えて・DIYして・住むことで生きることが豊かになるらしいのです。

 私たち夫婦は2人とも建築家で、「全ての空間と人は良い関係を結ぶことができる」をポリシーとし、建築設計事務所IN STUDIOを運営しています。豊かに生きたい私たちは、あるとき自分たちの賃貸住宅をDIY改装したことがありました。今回はそのケーススタディーをご紹介します。

賃貸DIY

「標準化した住宅」への失望と、新しい生活への想像

 結婚を期に夫婦で引っ越すことになり、新しい生活を想像しながら部屋を探しました。最寄り駅と駅までの距離と家賃を伝え、検索システムから出てきた物件。いくつも見て回った結果わかったことは、ほぼ全ての物件がいくつかの小さな部屋と水回りの集合であるということです。

 当たり前のようですが、住宅の空間構成はみごとに標準化しています。微差しかない住宅の間取りを前に新しい生活の想像を巡らしても、家具を置いたらあとは貧しい空間が残るだけだろうとしか思えず、希望がしぼんでいく感じがしてきました。

 そんなとき、良い生活を想像できる物件が見つかりました。少し大きな32平米のワンルームです。

 なぜ住宅は標準化するのか。

 住宅というものは、寝たり食べたり料理する空間であって、それらの機能は明確に仕切られた各部屋におさまるものだ、という住宅生産者の共通認識があり、そのうえで住宅は設計され、生産され、住まれています。だから、土地を分け、建物を建てたら住戸を分け、そのなかに部屋を分けることで、生活空間を生産するのだ、ということになっているようです。大量生産された住宅とは機能が成り立つまで空間を小さく小さく分けたものになっているのです。

 ですが、そんな細切れの部屋は人間の生活を本当に支えられているのでしょうか。生活とはそんなに単純なものでしょうか?

 生活とは、寝る、食べる、料理する、くつろぐ、持ち物をしまうといった、機能的活動の束です。ただしそれだけではなくて、家族の世界をつくって住むことであり、街に住むことです。人生をともにしてきた持ち物とともに生き、寝起きや食事を繰り返すなかで家族の時間を積み重ね、次第に街に定着していくことが生活ではないかと思います。

 空間を小さく分けていっても、よい生活空間は生まれそうにありません。そうであれば、空間にまとまりをもたせたり、重なりをもたせる設計をしてはどうだろうか。それが、私たちの新しい部屋でのチャレンジでした。

賃貸DIY
賃貸DIY

空間をまとめ、重ねる設計

 買った材料は15枚のベニヤと12メートル分の2×4材で、およそ2万5000円。

 まずはベッドを置いて寝るための場所をつくります。ベッドの高さは20センチで、74センチの棚に囲まれています。子どもの大きな家族ならば壁で仕切る必要がありますが、私たちはこの程度の腰壁で問題ありません。棚はベッドの外を向いていて、キッチンの収納の役割を果たします。

賃貸DIY

 次にテーブルと椅子をこの棚につけて置いて食事の場所をつくり、残りの場所を床座でくつろぐ場所に。

賃貸DIY

 部屋の一面には持ち物を見せる棚を作りました。とても大きいサイズにしたことで、部屋の印象を決定づけています。元からあった押入れは扉を外して布地を掛けました。

賃貸DIY

 こうしてできた部屋では、場所の重ねあわせが起こります。

 ベッドで寝ているとき、見上げた天井は窓際まで広くつながっていて、朝には外の光がなめてきます。テーブルで食事しているときは、ベッドの上のピンナップと、棚の本や飾り、育てているベランダの植物が見えます。私たちはよく自炊をするので、植物は時々摘み取られ、料理に加えられます。

 寝ているときも、食事するときも、そのとき使っていない空間まで場所の広がりに参加しているし、そのとき使っていない持ち物も場所に時間を感じさせるようふるまいます。重なりあい、まとまりをもった場所のなかで、毎日毎年生活のリズムは繰り返され、広がっていくのです。

賃貸DIY
賃貸DIY

 空間は切り分けることもできますが、重ねて使うこともできる。そして重ねて使ったところで減るようなものではなく、むしろ良さが増えるものなのです。

賃貸DIY
賃貸DIY
賃貸DIY
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2110/25/news149.jpg 「くそが……!」 最上もが、奮発した「Uber Eats」の対応に怒り爆発 1400円ステーキの“中身”に「絶望」「もう頼まねえ」
  2. /nl/articles/2110/24/news050.jpg 庄司智春、愛車ダッジ・チャレンジャーが廃車に ガソリンスタンドで炎上、ボンネットから発煙し「やばい」
  3. /nl/articles/2110/25/news079.jpg 浜崎あゆみ、帝王切開の経験を告白 「お腹の傷を愛おしく誇りに思う」と“消えない偏見”に思いつづる
  4. /nl/articles/2110/25/news007.jpg 「ロード・オブ・ザ・リング」の重要アイテムがカプセルトイで登場 “ひとつの指輪”も手に入ってしまう
  5. /nl/articles/2110/25/news051.jpg 「アッ...アッ......困りますお客さま…!」 子猫を迎えて2日目、すっかり懐いて飼い主を無事メロメロにしてしまう
  6. /nl/articles/2110/24/news049.jpg 本田望結、小型船舶免許を取得し免許証を公開 姉・真凜もびっくり「凄っ、知らんかったって笑」
  7. /nl/articles/2110/23/news032.jpg 『ちいかわ』が“幸福論を問う作品”であるという決定打 なぜ「オフィスグリコちゃんのカエル」でTwitterがどよめいたのか
  8. /nl/articles/2110/24/news027.jpg 所さんのピンクのフィアット500が事故で「水没」 めっちゃかっこいい、からの「普通に失敗しちゃうところも好き」の声
  9. /nl/articles/2110/24/news044.jpg 深田恭子、2022年のカレンダーで花に囲まれた美女ショット ファン「美しすぎる」「来年も一緒に過ごします!」
  10. /nl/articles/2110/21/news028.jpg 本当にあったZoomの怖い話 母がうっかりカメラON、100人に実家が丸見えになった実録漫画が地獄みしかない

先週の総合アクセスTOP10

  1. 葉月里緒奈、美人な元マネジャーと“再会2ショット” 「共演した俳優さん達は私ではなく彼女を口説いてました」
  2. docomo×進撃の巨人キャンペーンの商品「リヴァイ兵長フィギュア」が悲惨な出来だと話題に → 公式が謝罪「対応方法を検討しております」
  3. 有吉弘行、妻・夏目三久との“イラストショット”を公開 蛭子能収からのプレゼントに「下書きも消さずにうれしい!!」
  4. 「印象が全然違う!」「ほんとに同じ人なの!?」 会社の女性に勧められてヘアカットした男性のビフォーアフター動画に反響
  5. 梅宮アンナ、父・辰夫さんの看板が黒塗りされ悲しみ 敬意感じられない対応に「残酷で、余りにも酷い行為」
  6. 子猫が、生まれたての“人間の妹”と初対面して…… 見守るように寄り添う姿がキュン死するほどかわいい
  7. 工藤静香、バブルの香り漂う33年前の“イケイケショット” ファンからは「娘さんそっくり」「ココちゃん似てる」
  8. 板野友美、エコー写真とそっくりな娘の顔出しショットを公開 ぱっちり目の美形な姿に「こんな美人な赤ちゃん初めて見た」
  9. 後藤晴菜アナ、三竿健斗との2ショット写真で結婚を報告 フジ木村拓也アナ、鷲見玲奈アナからも祝福のコメント
  10. 「とりあえず1000個買います」 水嶋ヒロ、妻・絢香仕様の“白い恋人”に財布の紐が緩みまくる