コラム
» 2019年02月02日 20時00分 公開

お金の力で幸せになりたい――「フルートが吹けるわたし」を夢見て、17万円のフルートを買った日(1/3 ページ)

フルートが吹けるようになったら、きっと。

[ちおる,ねとらぼ]

 いい買い物ができるようになりたい。年を重ねるごとに自分の欲しいもの、必要なものが正確にわかるようになったら良い。けれど、単純な経験のみで買い物上手になれるわけではない気がする。

フルートエッセイ

 20歳そこそこの頃。単行本を1冊出して、次作を出すぞー!と意気込んでいたものの、ほとんどニートだったときの話だ。貯金は20万円ちょっとで、梱包のアルバイトで得るわずかな資金で食い扶持を確保していた。3パック67円の納豆を主食にして、本を買うのを我慢して図書館に通ったり、喫茶店に行くのをやめたりして出費を抑えた。バイト先では陶器や掛け軸のような静物とだけ向き合っていたし、家ではPCや本ばかり開いていたから、このまま声を失っても支障ないくらいひとりだった。寂しすぎる。でも、人に会うのにも交通費が気になる。「会いたいけど、往復で千円くらいかかるなぁ。それなら豚肉と玉ねぎ買った方が」みたいな理由で優しい友達からの誘いをなんども反故(ほご)にした。段々とLINEすら届かなくなり、文字を通して人と交流する機会さえ減っていった。会えないし、話してない。お金がなくなると孤立する。ひとりになると心が折れる。これはどうにかしなきゃいけない。一刻も早く解決すべき難題だった。

 悲しい気分にならないように、と焦ったわたしは、とにかくお金をかけずに人と会える方法を見つけなければ、と思った。小さい頃なら、誰かと会いたいときには「公園であそぼう」だけで十分だったのに、高校生くらいから「カラオケ行こう」とか「ファミレス行こう」みたいに何をするか、どこに行くか具体的にしておかないと声をかけにくくなったし、大人になってからは「会って話したい」=「飲みに行こう、ご飯食べに行こう」になった。お財布無しで人に会いに行けない。

 金銭を持たずに人に会いたい、好かれたい、と思った私は、17万円のフルートを買った。

 銀色の高価な笛だ。わりと唐突に買った。フルートなんて一度も吹いたこともないし触ったこともない。フルートの音色が好きだったわけでも、強い憧れがあったわけでも、なんでもないのだけど、切羽詰まって買ってしまった。一人きりの自分を孤独から救い出してくれるのは音楽かも、と思ったからだ。もっと安いフルートもあったけれど、どうせはじめるなら最初からそこそこいいのを持っていた方が良いと思った。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2110/15/news148.jpg 工藤静香、バブルの香り漂う33年前の“イケイケショット” ファンからは「娘さんそっくり」「ココちゃん似てる」
  2. /nl/articles/2110/15/news016.jpg 棚の上で転がる猫、次の瞬間→飼い主「ウワァァァ!!!(驚)」 飼い主の顔面に落下した猫ちゃんの映像が衝撃的
  3. /nl/articles/2110/14/news129.jpg 福原愛の元夫・江宏傑、4歳娘のバースデーショット公開「ずっと大好きだよ」 日台からお祝いコメントが殺到
  4. /nl/articles/2110/15/news030.jpg 学ラン男が実は美少女で結婚を約束した幼なじみで妹で余命半年だった! “あるある”を詰め込みすぎたラブコメ漫画が情報量だけで笑う
  5. /nl/articles/2110/14/news111.jpg 国鉄コンテナに「住める」だとぉぉ! JR東日本が鉄道コンテナ型ハウス、マジで発売 1台297万円から
  6. /nl/articles/2110/14/news017.jpg 猫「おう、帰ったか。で、メシは?」 帰宅難民となった飼い主を迎える猫のデカイ態度に思わず笑ってしまう
  7. /nl/articles/2110/15/news142.jpg 市川海老蔵、長女・麗禾のテレビ出演を見届ける 「もう、なんか涙」と愛娘の晴れ姿にうるうる
  8. /nl/articles/2110/15/news087.jpg 「日本で一番歌が上手い愛理ヲタ」 鈴木雅之、グッズフル装備で鈴木愛理のライブに参戦する姿がめっちゃ楽しそう
  9. /nl/articles/2110/14/news012.jpg 殺処分待ちだった子犬と家族に、はじめは不安げな表情だったが…… 少しずつ笑顔を見せる元保護犬の漫画に共感集まる
  10. /nl/articles/2110/14/news068.jpg お父さんとお母さんの帰宅に喜びあふれる柴犬 かわいすぎるお出迎えに「笑顔になる」「しっぽ取れちゃいそう」

先週の総合アクセスTOP10