なぜあなたは「LINEを既読スルーする男」に惹かれてしまうのか?(2/2 ページ)

» 2019年02月20日 20時00分 公開
[japanfieldねとらぼ]
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(1)一定回数行動を行えば必ず報酬がもらえる(n回レバーを引けばエサがもらえる)

(2)一定時間経てば必ず報酬がもらえる(n時間経てば必ずエサがもらえる)

(3)行動に応じて報酬がもらえるが、行動回数はランダム(5回レバーを引けばもらえるときもあれば、1回レバーを引いただけでもらえるときもある)

(4)経過時間に応じて報酬がもらえるが、時間はランダム(1分でエサをもらえるときもあれば、1時間経った時点でもらえるときもある)


 学習しやすいのは、(1)や(2)です。単純なルールなので、すぐに行動が強化されるのですね。ですが、ここで問題にしたいのは、「強化が消失しやすいのはどれか」です。

 強化されてきた行動は、報酬が与えられなくなると消失します。つまり箱の中のネズミは、エサがもらえなくなればレバーを引くのをやめます(このように、強化された行動が消失することを「消去」といいます)。

 実験の結果、(1)と(2)の場合、ネズミはエサがもらえなくなった時点ですぐに行動をやめました。一方(3)と(4)の場合、もはやエサがもらえなくなったとしても、長いことレバーを引き続けた、つまり、「消去」が起こりにくかったたのです。

※ちなみに専門用語では、(1)〜(4)はそれぞれ、「固定比率スケジュール」「固定時隔スケジュール」「変動比率スケジュール」「変動時隔スケジュール」と言われています。

 一見すると不思議な現象ですよね。ある行動をすれば絶対に報酬がもらえるほうが、よりつながりは強固に学習されそうです。しかし実際には、ランダムに与えられる方が、行動は消去されにくくなるのです。

 どうしてそうなってしまうのか。これは、「ゲームのルールが変わったことがわかるか」が影響しています。

  毎回レバーを引けばエサがもらえているとき、もらえなくなった瞬間に「ゲームのルールが変わった(もうレバーを引いてもエサはもらえない)」とすぐにわかります。そのため学習しやすい分、消去もされやすい。

 しかし、報酬が得られるタイミングやルールがランダムな場合、ルールが変わったことに気付きにくい。だから行動を続けてしまうのです。

「既読スルー」でかえって依存してしまう仕組み

 これを恋愛の話に当てはめてみましょう。

 「ネズミのレバー」(強化された行動)は、自分からメッセージを送ること。エサ(報酬)が「相手から返ってくるメッセージ」「好意の言葉」です。

 既読スルーは、行動をしているのに報酬がもらえない状態です。その状態が続けば、行動をやめることができますが、たまに返事が返ってくる、時には即レスで戻ってくる、となれば、「変動比率」かつ「変動時隔」という、最も執着が強まる報酬の与え方になります。

 この状態になってしまえば、メッセージを送り続けてしまうし、相手がもう返事をしない(ゲームのルールが変わった)としても、しばらく気付かずに送り続けてしまいます。

 実際、精神が不安定な女性のサポートをしている団体から、話を聞いたことがあります。そこでは強く「サポートしている対象からメッセージをもらったら、“必ず”即レスする」というルールが設けられているそうです。そうすると、サポート対象者が支援者に依存しにくくなり、良好な関係が築けるのだとか。

既読スルー問題 「既読スルーをしてくる男」に惹かれてしまう仕組み

 気付いた方も多いでしょうが、これは恋愛に限った話ではありません。

 たまに褒めてくるパワハラ上司から離れられない部下。

 気分屋の親に振り回される子ども。

 これらはみな、同じ心理の動きから依存“させられている”のです。

 では、「既読スルーしてくる相手」に惹かれてしまう現象に、どう対抗すればいいのでしょうか。

 はっきり言うと、人間心理をハックしているので、まずは「抗えない」と認識しておいたほうがいいです。唯一対抗できる手段は、そのような「ランダムな報酬」を発見したときに「そもそも人間の心はこういうものに依存しやすくできている」と思い出す習慣を持つことです。構造に惹かれている自分がいると認識したら、まずは相手から距離をとり、冷静になりましょう。

 ……とはいっても、それができないのもまた、人の心なんですけどね。

japanfield

幼少期からマジックに傾倒。東京大学大学院では、認知心理学からのアプローチで、催眠術を研究する。現在は出版社で働く傍ら、催眠術師としても活動している。Twitter:@japanfield

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