いつからゴミだと思っていた? ストロー袋の写真ばかりを集めた同人誌が一種のアート作品司書メイドの同人誌レビューノート

あなたは取り出した後のストロー袋をどうしていますか?

» 2019年02月24日 12時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 このあいだ小雪混じりの風に首をすくめていたと思ったら、ここのところにわかに暖かくなってきました。このまま春に向かっていくのでしょうか。冬の間は温かい飲み物ばかりを飲んでいましたが、ぽかぽか陽気になると、ひんやり冷たい飲み物も急に目につきはじめたり。今回は、冷たいお飲物のお供、ストローについての同人誌です。いえ、もっと詳しくお伝えすると、こちらの同人誌は「飲み物」でもなく「ストロー」でもなく、ストローの「袋」しかも「ストローの袋のゴミ」ばかりを集めた同人誌です。

今回紹介する同人誌

『ストローの袋のゴミのかたち図鑑』A5 20ページ 表紙・本文カラー

作者:ふねこあみ


同人誌 シャッツキステ ストローの袋のゴミのかたち図鑑 ストローの袋だけが載った同人誌です

出会って、気付いて、収集して。きっかけはお父さんの喫茶店

 この同人誌は、著者さんがお父さまの経営する喫茶店でアルバイトをされていたのがきっかけだそうです。ある日お客さんが帰った後に残されたストローの袋に目をとめ、そこから興味を持って集め始め、2017年4月から10月までの7カ月間に渡る収集の成果がいまここに!

同人誌 シャッツキステ ストローの袋のゴミのかたち図鑑 あああ、あるある! と言いたくなる「イモムシ」型などおなじみの形

ちょっぴりアート? ゴミから見える形の面白さ

 ご本の中にはたくさんのストロー袋の写真が掲載されています。なにげないストロー袋のゴミ。それに「ヤブル」「ネジネジ」「クシュクシュ」など、著者さんが名付け、近しい形ごとに分類してあります。並べてある名前を見るだけで、ストロー袋のゴミには「開ける」「ストローを取り出す」「そのあと加工する」のアクションが発生していることに気付きました。これは多彩な!

 とはいえ、きっとこのストロー袋が卓上にあったら「あ、ゴミね」と思って片付けてしまうでしょう。それなのにこうして分類され、並べられると急に一つ一つの形の面白さにも目がとまります。無造作に丸めてあるもの、ねじったり、折り込んだり。人の手わざとは、限られた材料でありながらこのようにさまざまな姿を作り上げるものなのか! と感嘆さえ湧いてきました。

 それらを黒の背景で並べることにより、ストロー袋の白さが際立ち、一種のアート作品のたたずまいです。最終的にはリサイクルのロゴがワンポイントのアクセントにすら見えてくるほど。

同人誌 シャッツキステ ストローの袋のゴミのかたち図鑑 「別名Xポーズ」とも呼ばれる、という解説にストロー袋界の奥深さを感じます

ストローの袋に過ごし方が反映される。あなたはどの形?

 「イモムシ」にあるあると思ったり、結び目をわざわざ2つも作っている袋にはなぜ? と興味が湧いたり……暇だったのでしょうか。そんな風に思いをはせて、いつもの間にか残された物の形から、使った人の過ごした時間を想像していました。

 著者さんも「無意識のうちに行われる何気ない行動が『かたち』となって現れていることにとても魅力を感じるようになりました」と書かれているように、ストローの袋はほとんど記憶に残りません。先週飲んだオレンジジュースのストロー袋をどんな風にしたか覚えてる? と聞かれても、自信をもって答えられる気がしません。そんな通り過ぎてしまう喫茶店の一瞬を、ストロー袋はその体めいっぱいを使って記録しているんですね。しかも「ストロー袋」という本体の付属品という宿命ゆえのはかなさと、使った人の癖が見えるような見えないような……という不確かな情報具合が絶妙のバランスです。

 巻末のごあいさつは「日常に溢れる些細な違いを少しでも楽しんでいただければ幸いです」と結ばれています。「ちょっと違う」が並べてみるとこんなに面白くなるんですね。明日、冷たい飲み物を飲んだら思い出してしまいそうなご本です。

同人誌 シャッツキステ ストローの袋のゴミのかたち図鑑 ただ取り出すだけにも個性が。あなたはどんな風に開けます?

サークル情報

サークル名:ねみみみみず

Webサイト:https://nemimi.sss-fc.com/

Twitter:@funekoami

note:https://note.mu/funekoami

参加予定のイベント:おもしろ同人誌バザール(4月6日開催)


今週のシャッツキステ

シャッツキステ メイド 同人誌 本棚の背を整えるときは、指の甲でそろえる派です。ちょっとした動作にも「自分流」ができていたりしますね

著者紹介

シャッツキステ メイド 同人誌 司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

関連キーワード

同人誌 | 面白い | 芸術


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/17/news077.jpg “この子はきっと中型犬サイズ”と思っていたら……たった半年後とんでもない姿に 「笑わせてもらいました」
  2. /nl/articles/2502/16/news087.jpg 「さすがに無神経な内容」 “暴言受けた”伊藤友里が降板発表→岡田紗佳の直後の投稿に批判の声 Mリーガーも反応
  3. /nl/articles/2502/17/news125.jpg 2020年から脳出血で療養中の俳優、近影にファン感動 「だんだんと顔が……」「大集合してる!」
  4. /nl/articles/2502/16/news086.jpg 年の差21歳で「夫は娘の同級生」 “両親大激怒”で結婚は猛反発されるも……“まさかの行動”で説得
  5. /nl/articles/2502/11/news012.jpg 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  6. /nl/articles/2502/17/news034.jpg 自然発火する危険な合金を液体窒素に入れたら…… 衝撃のラストが1600万再生 「狂ってる」【海外】
  7. /nl/articles/2502/17/news061.jpg ママが反抗期の娘に作った“おふざけ弁当”がギミックてんこ盛りの怪作で爆笑 娘「教室全員が見に来た」
  8. /nl/articles/2502/16/news009.jpg 「これすごい」 飛行機のエコノミークラスに搭乗→“まさかの機内食”に思わず二度見 投稿者に話を聞いた
  9. /nl/articles/2502/16/news028.jpg 山奥にあるゴミだらけの“ボロボロ廃墟”→2年間コツコツ片付けたら…… まさかの激変ぶりが50万再生「いやぁ〜すごい」
  10. /nl/articles/2502/16/news088.jpg 16歳で結婚&出産  今日好き“しゅんまや”が約5年で離婚発表に衝撃の声続々 「信じられない……」「子どもは大丈夫?」
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  2. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  3. 14歳のとき、親友の兄と付き合うことになった女性→13年後…… “まさかの結末”に「韓国ドラマみたい」【海外】
  4. リンゴを1年間、水の中で放置→顕微鏡で見てみたら…… 衝撃の実験結果に「これはすごい」「息をのみました」【海外】
  5. 海釣り中、黒猫に「ちょっと来い」と呼び出された釣り人 → 付いて行くと…… 運命のような保護から2年、飼い主に話を聞いた
  6. “駐車場2台分”の土地に、建築家の夫が家を建てたら…… “とんでもない空間”に驚き「すごい。流行る」
  7. 「なんだこの暗号は……」 マクドナルドの“大人だけが読めるメッセージ”が410万表示「懐かしい〜」「読める人同世代w」
  8. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」 投稿者に話を聞いた
  9. ズボラ母が5人分サンドイッチを爆速で作ったら…… 目からウロコの時短テクと美しい仕上がりに「信じられない」
  10. 【今日の計算】「7−2×0+9」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議