こういうの助かる! “同人誌をレビューする同人誌”が新たなジャンルへいざなってくれそう司書メイドの同人誌レビューノート

今回は「棚から一掴み 第9号」をご紹介。レビュー本をレビューしてみました。

» 2017年03月19日 12時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 シャッツキステでは時々、「同人誌を持ち寄ってゆるゆる紹介し合いましょー」という催しを行っているのですが、そんなときご参加の方から「二次創作じゃない同人誌ってどんなのがあるのか知らなかった」というお声を聞くことがあります。

 また、先日はこんなお話も聞きました。「夏コミに初めて行ったんだけど、想像していたのと違いました」「えっ、どんな想像をしてたんですか?」「グッズを売ってるのかなーって……」。ははぁー! コミックマーケットは確かにグッズを出される方もいらっしゃいますが、“同人誌即売会”なので、本の形をした同人誌がたくさん出されているのですよー……といった風に、行き慣れた者にとっては当然の、でも初めての人には「?」がいっぱいなのが、同人誌界隈(かいわい)かもしれません。

 先にお聞きした、「二次創作じゃない同人誌を知りたい」というお声にも、初心者さんではないかもしれませんが、いろ〜んなジャンルで活動する人がたくさんいるあまりに、自分が活動しているジャンル以外はなかなか目が行き届かないですよねぇ、と頷いてしまいます。

 とにかく「同人誌」とひとくくりにするには、みなさんの書いているものが多種多様すぎる! とても全部なんてチェックできない。でも、何か面白そうな本と出会いたい……。そんなときにはこんな「同人誌評論本」がありますよー。

今回紹介する同人誌

「棚から一掴み 第9号」 B5 24ページ 表紙・本文モノクロ

著者:teke


同人誌「棚から一掴み 第9号」 同人誌ブックガイド本を出されてもう9号目です

2015〜16年の評論・情報・趣味系同人誌から19冊をレビュー!

 こちらは2015〜16年にかけて購入された同人誌のうち、「面白い、おすすめしたい」と思った19冊がレビューされています。ジャンルはグルメ、街歩き、同人誌活動についてなどなど、“評論系”と称される中から広くチョイスされています。

同人誌「棚から一掴み 第9号」 堅実に書かれたまえがきから、同人誌を楽しんでほしいという意気込みを感じます

 トップを飾る「ザ・閉店 ラーメンの四半世紀篇」(サークル名:「ガキ帝国」さま)は、ラーメン店のレポート本です。ただし、載っているお店は全て閉店済み。商業誌ではとても特集が組みにくそうな本を「同人誌ならではの自由な発想が活かされた、大変ユニークな一冊である」とレビューしています。

同人誌「棚から一掴み 第9号」 「ザ・閉店」表紙もあってイメージしやすいですね

 続く、居酒屋「清龍」さんのファンブック「清龍ファンブック」(サークル名:「うどん会」さま)では、ご自身が実際に行ったときには、実はそこまで魅力を感じなかったお店だと告白。けれど、お店が好きな人たちの熱量あふれる同人誌を読むと「読み手の清龍に対する価値観が変わる、そんな協力な魅力を持った一冊だ」と、自分の中に新しい視点が示されたことを楽しんでいらっしゃいます。

同人誌「棚から一掴み 第9号」 「清龍ファンブック」文頭のキャッチフレーズも分かりやすい!

 さらに、街歩きを楽しむ本「散歩の凡人」(サークル名:「NEKOPLA」さま)は、ネットで一瞬の遭遇で終わってしまうハプニング系面白画と比較し、日常にあふれる何でもないことにあえてスポットを当てた面白がり方に着目されています。

一期一会の同人誌のきらめきを切り取った、記念アルバムのよう

 ほかにも、カメラの本、女子プロレスの本、かつて同人誌界で一世を風靡した同人誌ペーパーについてまとめた本などなど、多彩なジャンルの本をレビューしています。

 しかし、めったにお目にかかれないような面白ジャンルがあると言うことは、裏返して見ればそれは、あまり多くの人が活動しているジャンルではないともいえるわけで……。もちろん、カメラや鉄道のように既に多くのファンの方がいるジャンルの中からも「ここに注目しましたか!」という同人誌を取り上げていらしたりもするのですが、それでも基本的に同人誌は個人や同好の士の間で発行されるものなので、手に取れるチャンスは限られています。

同人誌「棚から一掴み 第9号」 あっ!「鶏と鉄道2」はこの連載でもご紹介した本ですね。被るとうれしい

 実は、先に紹介した「ザ・閉店 ラーメンの四半世紀篇」も、もう完売しているんです。欲しい本が必ず入手できるとは限らない……同人誌って一期一会なんですよね。でも、「ザ・閉店 ラーメンの四半世紀篇」を評して、「閉店した現在から遡って閉店したラーメン店を眺めることにより(中略)、『時代の文脈』について理解できる点が面白い」と書かれているように、過ぎ去ってしまったものを読むことで、今を考えることにつながっていくのではないかと思います。何より、こうして書き記してあることで、「こんな同人誌があるんだ! あったんだ!」と振り返られるのが、単純にわくわくします!

すてきな同人ライフを!

 あらためて本全体を見渡すと、その選定っぷりに「やっぱりすごい!」とうなってしまいます。いろんなところに目配りしてあるので、「どんな同人誌があるんだろう?」と興味を持ちはじめたばかりの方にも向いているバランスの良さです。

同人誌「棚から一掴み 第9号」 タイトルからも興味をひかれる「銀座線で見た野良サイン」(サークル名:Eidantoeiさま)なんて本も!

 しっかりと短文にまとめられたレビューからは、同人誌がお好きでらっしゃるんだなぁ……とひしひし伝わってきます。そして、自分の買った同人誌と同じものが載っていると「私もこの本いいと思いました! あっ、あなたはこういう風に読んだんですね」とうれしく会話しているような気持ちになったりも。

 同人誌の世界を広げてみたい方、ぜひご参考になさってくださいませ。

サークル情報

サークル名:KZA2企画

Twitter:@KZA2_teke

Webサイト:http://tanatsuka.blog46.fc2.com/

入手先:COMIC ZINシカク

次回参加予定:資料性博覧会10(申し込み済)、COMITIA120、コミックマーケット92(申し込み中)


今週のシャッツキステ

シャッツキステ 久しぶりにお裁縫道具を広げました。繕いものなどは日常の合間にちくちくしているのですが、大きな布を扱う時は「えい!」って気分になりますね

著者紹介

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

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同人誌 | レビュー | コミケ | 興味


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