1話切りした人にこそ伝えたい 「東京独身男子」があたたかく描く“今を生きる男性の悩み”(2/2 ページ)

» 2019年06月01日 14時15分 公開
前のページへ 1|2       
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 かずなが薫に話を聞きに行ったおかげで、ずっと関係を修復しようとトライし続けていたことを知った三好。「たぶん、別れたくなかったんだよ。でも、離れるしかなかったんだと思う」というかずなの言葉に、三好はようやく自分の行動を振り返る。

 三好「俺はずっと、目の前の『これだ』ってことにガッて飛びついて、夢中で走って走って走り抜けて、それが自分らしさだって思ってた。ずっと側にいてくれた君のほうを、見ることも気にすることもなかった。幸せにできなくて、ごめん。家族になれなくて、ごめん」

 三好は、結婚しても変われなかった男だった。そして、お互いを幸せにすることができずに失敗してしまった。

 一般的には、三好の失敗談を礎にして「やっぱり結婚するなら、変わらないとね。お互いに歩み寄らないとね」というような結論を出すだろう。しかし、本作のメッセージはそうではない。今度は、岩倉と透子に 「変わらないまま、2人で幸せになること」にチャレンジさせようとしているのだ。

 さらに、岩倉は言う。

 岩倉「君は変わらなくていい。変えようとも思わない。だが、一緒に暮らさないか、君と俺と親父、3人で」

 2人で幸せになるだけでなく、三好が達成できなかった「家族になること」にも挑もうとしている。「え、3人……?」と返すしかなかった透子。今まで余裕の表情ばかりだった透子の素の感情が、初めて表れていた。

四十にして惑わない滝藤賢一の成熟

 太郎が38歳、三好が37歳、岩倉が45歳。3人集まってワイワイしているときにはあまり感じなかったこの年齢差による違いが、徐々に表れてきている。

 透子の「え、3人……?」という驚き顔を見てほほえむ岩倉を見て、「四十にして惑わず」という言葉が頭をよぎった。その前にあった、太郎と岩倉がお互いに体当たりしながらキャッキャと夜道を歩いていたシーン。「走る?」「走るか?」と学生のようなはしゃぎようの2人のあとに、「変わらない」女と家族になるという難しい道を歩む決意をした岩倉の笑顔。未熟と成熟のコントラストだ。

 成熟した大人・岩倉と透子がいるのは、夜ではなく朝だった。まだ人生に迷っている太郎と三好がいるのが夜明け前。人生においてひとつ大きな決断をしようとしている岩倉は明るい空の下にいる。夜の街で女性の間をジタバタと行ったり来たりしていたAK男子たちがまっすぐに生きられるとき。それは、自分で惑いを取り払い、決断したときなのかもしれない。

 本作のこうした場面や小道具の使い方には、毎回感心してしまう。岩倉の惑いが消えたことを人生における「朝」として通勤シーンで自然に表現していることもそう。そして、三好の「元気問題(男性更年期障害)」が、歯科診察台の蛇口から漏れそうで漏れない水滴や、薫がくれた硬くて太く天に向かって立つ水晶で表されていることもそうだ。

 他人の気持ちがわからない問題、男性の元気問題、親の介護問題などなど。AK男子たちが抱えている問題は、どれも真面目なひとつのドラマになってしまいそうなくらい深い。それをコメディで描いているので、深刻になりすぎず、ハッと気づきをもらうこともできる。「こういう男いるいる!」と「こんな奴いねーよ!」のはざまでデフォルメされたAK男子だからこそ、笑ってしまうくらいわかりやすい比喩表現が生きている。

 第1話での、AK男子たちのやりたい放題、言いたい放題っぷりに拒否反応が出て、残念ながら見るのをやめてしまったという声も聞く。でも、こうした制作陣の隙のない仕事ぶりには、今を生きる男性たちへのあたたかい視線を感じる。男性が惑わざるを得ない時代に本作を生む優しさを、この時代だからこそ感じてほしいと思う。

これまでの「東京独身男子」振り返り

むらたえりか

宮城県出身のライター・編集者・ハロヲタ。 

Twitter

たけだあや

イラスト、粘土。京都府出身。

Twitter

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2403/26/news158.jpg 元横綱・貴乃花、再婚後の激変ぶりに驚きの声 ヒゲ生やした近影に「ショーケンみたい」「ワイルドー」
  2. /nl/articles/2403/27/news130.jpg 中山美穂、金髪&ミニ丈の大胆イメチェンに視聴者びっくり! “格付け”出演の最新ビジュアルに「誰だか分からなかった」
  3. /nl/articles/2403/26/news169.jpg 「『ちゅ〜る』の紅麹色素は大丈夫?」 小林製薬の「紅麹」報道で飼い主に不安広がる
  4. /nl/articles/2403/27/news126.jpg ミス筑波大モデル、25キロ減量したビフォーアフターに「ホント凄い」 整形疑う声も「元々は埋もれてたようですね」
  5. /nl/articles/2403/26/news161.jpg 【まとめ】小林製薬「紅麹」問題 味噌や酒など紅麹原料メーカーの自主回収相次ぐ 20社以上が発表
  6. /nl/articles/2403/27/news127.jpg 日本エレキテル連合・中野、ネタで酷使し容姿に異変→手術を決断 「ダメよ〜、ダメダメ」でブレイク、2022年にがん公表
  7. /nl/articles/2403/20/news067.jpg 「紫のトトロ買った」 “ジブリを1ミリも知らない”友だちから連絡→まさかの正体に爆笑 友だちはその後ジブリを見た?
  8. /nl/articles/2403/26/news016.jpg ドイツ人家族が日本のバウムクーヘンを実食、一番おいしいと絶賛したのは…… 満場一致の結果に「参考になります」「他の食べ比べもお願い」
  9. /nl/articles/2312/30/news041.jpg 「紫のトトロ買った」 “ジブリを1ミリも知らない”友人から連絡→まさかの正体に爆笑「それトトロやない」
  10. /nl/articles/2403/26/news145.jpg 「ご安心ください」 “紅麹ショック”でDHCとファンケルが声明…… サプリ販売は継続中 小林製薬では死亡患者がサプリ摂取
先週の総合アクセスTOP10
  1. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  2. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  3. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  4. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  5. 田代まさしの息子・タツヤ、母の逝去を報告 「あんなに悲しむ父親の姿を見たのは初めて」
  6. 「遺体の写真晒すのはさすがに」「不愉快」 坂間叶夢さんの葬儀に際して“不適切”写真を投稿で物議
  7. 大友康平、伊集院静さんの“お別れ会”で「“平服でお越しください”とあったので……」 服装が浮きまくる事態に
  8. 妊娠中に捨てられていた大型犬を保護 救われた尊い命に安堵と憤りの声「絶対に許せません」「親子ともに助かって良かった」
  9. 極寒トイレが100均アイテムで“裸足で歩ける暖かさ”に 今すぐマネできるDIYに「これは盲点」「簡単に掃除が出来る」
  10. 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」