ニュース
» 2019年06月17日 16時00分 公開

東京ディズニーランドホテルの「アナ雪目隠しダイニング」でレリゴーを考えた(1/3 ページ)

この記事には「レリゴー」が61回出てきます。

[宮田健(dpost.jp)ねとらぼ]

東京ディズニーリゾートで“アナ雪版”目隠しダイニングを楽しむ

 東京ディズニーリゾート、東京ディズニーランドホテルにて8月3日〜18日、目隠しをしてディズニー映画の世界観の中でコース料理を堪能できる「食」のエンターテインメントプログラム「ディズニー・ダイニング・ウィズ・ザ・センス〜ディズニー映画『アナと雪の女王』より〜」全26公演を開催します。2019年1月〜2月に実施された公演の再演です。

 以前ねとらぼでも、このプログラムの「美女と野獣」バージョンをご紹介しました。そのころから比べても大変パワーアップした内容で、初めての人も何度目かの人も十分楽しめるエンタテインメントに仕上がっています。しかも今回は誰もが知るあの「アナと雪の女王」。魔法のアイマスクをすれば、あなたもアレンデールに降り立ち、アナとエルサと仲間たちと“出会う”ことができるのです。聞き慣れたオラフの声も“新鮮に”聞こえるかもしれません。

レリゴー 「ディズニー・ダイニング・ウィズ・ザ・センス〜ディズニー映画『アナと雪の女王』より〜」

 ……が、ディズニーを追いかけてきた私にとって、このアナ雪というコンテンツは少々気になる立ち位置であるため、とある一点だけが気になっていました。ひとまず開催概要は記事の最後にも書きますが、詳細は先に紹介した記事でどうぞ。

 以下、余談レベルのお話です。

レリゴーという罪と罰——「アナと雪の女王」 の異質さ

 ディズニーが公開した長編アニメーション第53作目「アナと雪の女王」という映画は、アメリカでは2013年11月27日に、日本では遅れに遅れて2014年3月14日に公開された作品です。主人公はダブルヒロインとしてアナとエルサの姉妹が登場し、ご存じのように世界中で大ヒットとなった、記念碑的作品です。

 特に注目したいのは、やはりメインの楽曲となった「Let It Go」(以下、レリゴー)。エルサが氷の力を抑えきれず、地位と俗世間を捨て、1人で雪山の中で暮らす決断を歌った楽曲です。意外なことにこの楽曲は物語のクライマックスではなく、かなり早い段階で披露されます。

問題の「レリゴー」(シングアロング版)

 公開からはや5年。皆さんも恐らく映画館で、DVDで、テレビ放送でこのアナ雪をご覧になったかと思いますが、いま思い出すシーンはやっぱりそのレリゴーなのではないでしょうか。そもそも当初はこのアナと雪の女王、邦題の通りアンデルセンの「雪の女王」をベースにしたストーリーであったといわれていますが、とある事件から大きく話を変更したとされています。当初はエルサ自身が物語のヴィランズであったとも。

 それを大きく変え、いまのようなアナ雪のストーリーに落ち着いたわけですが、個人的にはこのストーリー自体に注目すべき点はないと思っています。特にラストシーンでは「愛よ!」のひと言で全てを解決するという、だったら最初からそれをやれよ、というスットコドッコイ感を初見時に感じました。オレ内映画判断基準として「巨大化して愛を叫んだらもうそこでおしまい」のパターンです。「リトルマーメイド」? 「パイレーツ・オブ・カリビアン3」? それそれ。

 正直、ストーリーを評価基準にするのならば、アナ雪はその後に続く「ズートピア」、そしてオレ内ディズニー長編アニメ最高傑作「モアナと伝説の海」に比べるまでもなく、アナ雪は佳作レベルというのが正しい評価だと思ってます。しかし、そう切って捨てられない事情こそが、誰もが絶賛する「レリゴー」にあります。

 ストーリーが大きく変えられる原因はこのレリゴーの完成度だった、という話もあります。楽曲を体験した方ならばもうお分かりかもしれないでしょうが、この曲のパワーは計り知れないものがあります。

レリゴーを“狙って”作った夫婦とは

 そもそもこのレリゴーは誰が作ったのでしょうか。

 本作の音楽は天才夫婦、ロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン・ロペスの夫婦が担当しています。これまでもオフ・ブロードウェイでマペットと人間が共存する世界を舞台にしたミュージカル「アベニューQ」を作ったり、夫のロバートはサウスパークの作家とモルモン教をコミカルに、そして鋭く描いたミュージカル「ブック・オブ・モルモン」を作り出しています。この夫婦を一躍有名にしたディズニー長編作品がこの「アナと雪の女王」でした。ロペス夫妻はレリゴー一曲で、ディズニーのかなりの部分を変えてしまいました。

レリゴー レリゴーを作り出したロペス夫妻(D23 Expo 2015にて撮影)

 ロペス夫妻の作風はとても異質で、天才としかいいようがない、というのが私の評価です。ディズニーミュージックを聞きかじった人ならば、ディズニーのミュージックメーカーといえば実写版「アラジン」でもおなじみ、アラン・メンケン&ハワード・アシュマンというコンビが思い浮かぶかもしれません。彼らも天才ではあるのですが、ロペス夫妻は「過去に登場した天才たちの音楽をベースにし、新しい音楽を作り出す」というタイプの天才です。悪くいえばパクリ、よく言えば高度なオマージュです。

 例えば、「アベニューQ」の冒頭で流れる「What Do You Do with a B.A. in English?」という楽曲は、同じくジム・ヘンソンによるカーミットの「Rainbow Connection」のメロディを反転させたものだといわれていますし、「ブック・オブ・モルモン」に登場するウガンダの少女、ナバルンギが“夢のような場所”を夢みて歌う「Sal Tlay Ka Siti」(注:夢のような場所=モルモン教の聖地、ソルトレイクシティ)は、まさにアラン・メンケンミュージックの真骨頂ともいえる、人魚が人間の世界を夢みて歌う「パート・オブ・ユア・ワールド」そのものです。しかしロペス夫妻がすさまじいのは、これが単なるパクリではなく、完全にロペス夫妻の色として、最高のオマージュとして楽曲が完成しているところにあります。

 ロペス夫妻の作風は、音楽という仕組みを換骨奪胎する力を持ち、それを聴いたものの感情を意のままに操るタイプの楽曲を作る力を持っているように見えます。制作陣からの「ここでいい感じのヒット曲になり得る、ぶわっと盛り上がるヤツをシクヨロ」的なオーダーをそのまま曲に仕上げたのではないかと思うほど。結果として、オーダー通りの大ヒット曲を作り出し、映画そのものを変え、しかも世界で大ヒットという結果をもたらしました。怖いよロペス夫妻。ちなみにピクサー作品「リメンバー・ミー」の同名曲を作ったのも、このロペス夫妻です。

動画が取得できませんでした
こちらも一曲で映画の全てを変えてしまった「リメンバー・ミー」

 ご存じのように、日本においてはエルサの声を松たか子さんが担当。レリゴーも松たか子さん自身が歌い上げ、これまた大変なヒットとなりました。影に隠れてしまっていますがエンドソング版のMay J.さんだって素晴らしい歌声でした。街中ではありとあらゆるところでレリゴーを聞くことができ、テレビでも繰り返し放送された結果、子どもたちはあの振りを覚え、レリゴーのピアノのイントロが流れた瞬間に、みんながレリゴーモードになってしまうまでになったわけです。

 当時の子どもたちの熱狂っぷりは、下記のレリゴー動画を見ても分かると思います。とてもほほえましいなか、ティアラを捨てる、手袋を風に飛ばす、足を踏みつけるといったエルサのレリゴームーブがきっちり子どもたちに伝わっているのが分かると思います。

 しかし、長くディズニーを見てきた者にとって、このレリゴーとは違和感のかたまりです。なぜなら……。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2311/29/news043.jpg マックで「プレーンなバーガーください」と頼んだら……? 出てきた“予想外の一品”に驚き「知らなかった」
  2. /nl/articles/2311/29/news200.jpg 38歳の元グラドル・小阪由佳、“15年ぶり電撃復帰”に待望の声 表紙登場のグラビア姿に同行人「浜辺美波の隣だ!」
  3. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  4. /nl/articles/2311/29/news146.jpg “ベスト級に美しい芸能人”、出会った上沼恵美子が大絶賛 あまりの完璧超人ぶりにほれぼれ「人間として魅力を備えてて」「頭がいい育ちがいい」
  5. /nl/articles/2311/30/news023.jpg くつろぐウサギ、そのおなかの下からピョコンと出現したのは……!? 151万再生を突破した“衝撃展開”に「何回でも見ちゃう」
  6. /nl/articles/2311/30/news047.jpg 「あなたは日本人?」突然送られてきた不審なLINE、“まさかの撃退方法”に反響 「センス良い」「返しが秀逸」
  7. /nl/articles/2311/30/news025.jpg 浜辺で目撃された“バグった鳥”の姿に震撼 摩訶不思議な動きに「滑ってるみたい」「ムーンウォーク?」
  8. /nl/articles/2311/30/news124.jpg 元大相撲力士、引退後1年で188キロ→“73キロ減”の劇的ビフォーアフター 角界の奇跡に「誰かわからなかった」「素晴らしいの一言」
  9. /nl/articles/2311/30/news142.jpg 34歳の田中れいな、モー娘。ライブで“現役感ハンパない”ショートパンツ姿 ゲストなはずが「まだまだアイドル行けるね」
  10. /nl/articles/2311/30/news168.jpg 「GLAY」HISASHI、溺愛の“激シブ国産旧車”が街中で注目の的 「文句なしのカッコ良さ」「後世に残してほしい車」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  2. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」
  3. 愛犬と外出中「飼いきれなくなったのがいて、それと同じ犬なんだ。タダで持ってきなよ」と言われ…… 飼育放棄された超大型犬の保護に「涙止まりません」
  4. ミキ亜生、駅で出会った“謎のおばさん”に恐怖「めっちゃ見てくる」 意外な正体にツッコミ殺到「おばさん呼びすんな」「マダム感ww」
  5. 永野芽郁、初マイバイクで憧れ続けたハーレーをゲット 「みんな見ろ私を!」とテンション全開で聖地ツーリング
  6. 道路脇のパイプ穴をのぞいたら大量の…… 思わず笑ってしまう驚きの出会いに「集合住宅ですね」の声
  7. 柴犬が先生に抱っこしてほしくて見せた“奥の手”に爆笑&もん絶! キュンキュンするアピールに「あざとすぎて笑っちゃった」
  8. 病名不明で入院の渡邊渚アナ、1カ月ぶりの“生存報告”で「私の26年はいくらになる?」 入院直後の直筆日記は荒い字で「手の力も入らない」
  9. 小泉純一郎元首相、進次郎&滝クリの第2子“孫抱っこ”でデレデレ笑顔 幸せじいじ姿に「顔が優しすぎ」「お孫さんにメロメロ」
  10. デヴィ夫人、16歳愛孫・キランさんが仏社交界デビュー 母抜かした凛々しい高身長姿に「大人っぽくなりました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「酷すぎる」「不快」 SMAPを連想させるジャンバリ.TVのCMに賛否両論
  2. 会話できる子猫に飼い主が「飲み会行っていい?」と聞くと…… まさかの返しに大反響「ぜったい人間語分かってる」
  3. 実は2台持ち! 伊藤かずえ、シーマじゃない“もう一台の愛車”に驚きの声「知りませんでした」 1年点検時に本人「全然違う光景」
  4. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 西城秀樹さんの20歳長男、「デビュー直前」ショットが注目の的 “めちゃくちゃカッコいい”声と姿が「お父さんの若い頃そっくり」「秀樹が喋ってるみたい」
  7. “危険なもの”が体に巻き付いた野良猫、保護を試みると……? 思わずため息が出る結末に「助けようとしてくれてありがとう」【米】
  8. 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. おつまみの貝ひもを食べてたら…… まさかのお宝発見に「良いことありそう」「すごーい!」の声
  10. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」