東京ディズニーランドホテルの「アナ雪目隠しダイニング」でレリゴーを考えた(2/3 ページ)
何もかも間違っている——レリゴーの“目標”問題
ディズニーに限らず、ミュージカル作品の基本展開として「アイウォントソング」というものがあります。これは主人公/登場人物が自分の願いを歌うというもので、基本的にはストーリーの最初の部分で歌われるものです。ディズニーにおいては、例えば白雪姫なら「いつか王子様が」(Some day my prince will come)、美女と野獣なら「ベルのひとりごと」(Belle(リプライズ))、リトル・マーメイドならばアリエルの「パート・オブ・ユア・ワールド」(Part of your world)がアイウォントソングです。もちろん、アナと雪の女王ではアナが「生まれて初めて」(For the First Time in Forever)、エルサにおいてはレリゴーこそがそれです。
もう少しこのディズニー版アイウォントソングを掘り下げてみましょう。白雪姫が願う「いつか王子様がやってきて、キスをしてくれる」というものは映画の後半でかないますし、ベルが歌う「どこか遠くに冒険したら、私を分かってくれる人が現れる」というのもまさに美女と野獣のストーリーを表しています。アリエルもアイウォントソングで、まさにこの後にかなえる話を歌い上げています。夢は単に願うだけではなく、言葉にして歌にしてかなえる、というお話がディズニーの基本ともいえるものでした。
さて、では「レリゴー」はどうでしょうか。日本語版の訳詞ですとあんまり表現されておらず、かなり意訳に近いというお話はテレビ放送がされるたびにブログでバズるネタではありますが、実はこのレリゴー、アイウォントソングとして捉えると、エルサが願うのは「全てを捨て去って一人で暮らすのでほっといてください」という願いを切々と歌い上げているわけです。
しかし、アナ雪のストーリーは、アイウォントソングであるレリゴーの歌詞通りにはなりません。引きこもることは正解ではなく最終的には愛を持って、アレンデールの永遠の冬を取り消すことになります。そう、このレリゴーという曲は、アイウォントソングながら「その時点におけるエルサの想像の限界」を歌う歌だったのです。例えるならば高尾山口駅にいて高尾山の山頂を願うが、実はその先にはもっと大きな富士山という本当の願いがあったことに気が付かなかった、というような(?)。
アナ雪においてレリゴーはエルサの本心でもストーリーの本質でもないという、実際にはとても中途半端な立ち位置の曲です。しかし、それでもすさまじい出来の、最高のヒット曲が作られてしまったというのがレリゴーの問題の根幹にあります。その結果、エンディングに至るクライマックスがかすんでしまい、中途半端に愛を叫び、中途半端に解決したように見えてしまうのです。全てはレリゴーの半端ないクオリティーが悪い。
余談ですが、この構造は(日本プロモーションでは)レリゴーに続かせたかったであろうアイルゴーことモアナの「どこまでも〜How Far I'll Go〜」でもまったく同じ。これもその時点での想像の限界を歌うアイウォントソングでした。真のアイウォントソングである「モアナ」とのメロディの違いはたった5音。こちらまごうことなき天才、リン=マニュエル・ミランダによる作品です。
ディズニーテーマパークに課せられた使命
出来はすさまじく一回聴いたら絶対に心に残るメロディながら、メッセージ的にはかなり後ろ向きなこのレリゴー。もっとも困ったのは誰でしょうか。それは恐らく、ディズニーのビジネスにおいて「映画がヒットした後にコンテンツを展開させ継続的に売上を上げる」という立ち位置である、テーマパーク部門です。
2013年に公開されたこの作品は、2015年春には新作短編「アナと雪の女王 エルサのサプライズ」(Frozen Fever)を公開、2016年には中編「アナと雪の女王/家族の思い出」(Olaf's Frozen Adventure)を立て続けに公開し、2019年11月には続編「アナと雪の女王2」を公開することが決定しています。予想するに1作目の公開後、大ヒットが分かったタイミングにてこういったスケジュールがほぼ決定していただろうと考えると、ディズニーのテーマパーク部門に課せられた使命はただ一つ、「レリゴーの火を絶やしてはならない」にほかなりません。氷なのに火かよ。
通常、テーマパークにおける映画コンテンツの本格展開は、それなりに時間がかかるものです。しかしアメリカにおいては映画公開の翌年、2014年3月にはアナとエルサがパレードに登場しています。その後、ちょっと面白い事象が観測できていました。
2015年7月、本家ディズニーランドが開園60周年を迎えました。この時、ナイトパレード、花火、ナイトショーが一新された(参考:本家ディズニーランドは60周年! 「ダイヤモンドセレブレーション」5月にスタート)のですが、その全てでレリゴーが組み込まれたのです。
それ、レリゴー追加できない? 「規定演技」としてのレリゴー
そもそも、レリゴーというのは「氷」の世界を表現した歌です。反面、ディズニーテーマパークにおける夜のショーは花火やレーザーなど、熱や熱さを感じるものが多いので、実際のところ本来は合わないコンテンツといえるかもしれません。しかし、恐らくですがディズニーテーマパークとしては続編公開までレリゴー混入は必須であったのでしょう。想像するに、ショーを作り出すディズニーのイマジニア、デザイナーが素晴らしい完成度のシナリオを上司に決裁もらおうとしたら、「いいね、でもレリゴーないよ?」みたいな形で差し戻されたりしてるんじゃないでしょうか。なんだよその日本企業みたいなイメージ。
その結果、華々しい60周年の祭事は、いつのまにやら規定演技「レリゴー」の品評会のようになってしました(いい意味で)。花火においては最初から最後までレリゴーを聞かせられることを生かし、あのピアノイントロが流れた瞬間、濃いファンであっても「またレリゴーかよ!」と失笑を誘うも、寒色系の花火を多用し氷の世界を見事再現。結果として再度のドア締めドーンのところでは、失笑していた家族も涙目で大拍手するという感動をもたらしました。
パレードではレリゴーを使うものの、場所によって全フレーズを聴かせられるわけではないので、レリゴーの超おいしいところだけをつなぐという技巧的なレリゴーを披露。レリゴー評論家も間違いなく太鼓判を押す、見事な規定演技でした。反面、同時期にスタートした香港ディズニーランドの新ショーでは、どう考えてもこのシーンいらなくない?という雑なレリゴーが加わるなど、レリゴー一つとってもいろいろな苦悩が裏側にあるのだろう、と勝手に想像できるようになりました。
そしていま。既に続編の情報が次々に登場しつつあり、ディズニーパークスにおけるレリゴー推しの役割は一定の成果をあげ、終演に近づきつつあります。呪縛からの解放、といってもいいでしょう。ウォルト・ディズニー・ワールドで2017年にスタートした新たな花火ショー「ハピリー・エバー・アフター」においては、アナ雪のシーンがあるのにレリゴーが使われないという衝撃的な展開で、レリゴー愛好家としてはのけぞるほどにびっくりしました。
余談ですが2015年に1年間だけ開催されていた、そのレリゴー込みの花火ショーがディズニーランドにて久々に復活を遂げました。その初日の動画を拝見したのですが、街頭シーンでは老若男女全ての人間がレリゴーを大合唱している様が大変印象的でした。レリゴー飽きたは甘え。やっぱり我らにレリゴーは不可欠であり、レリゴーのある世界に生まれて良かったともう1度認識すべきなのである(断言)。
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