ほろ酔いになると父がいつもしてくれた話 終戦後の食糧難の時代、孤児に食べものを分けた実話漫画に称賛
優しいお話にじーんと来る。
終戦後の食糧難の中で、孤児に食べ物を分けた実話を描いた漫画「柿の木」が称賛を集めています。作者・泉福朗(@okaeri_eripiyo)さんのお父さんが体験したことを描いたお話です。
終戦の年(1945年)の秋、当時8歳だった少年(泉さんのお父さん)の家は空襲の被害を免れ、広い敷地を利用して自給自足を行っていました。ある日、敷地内の柿の木に登って柿を食べていた少年は、塀の外で落ちている柿を拾って食べている孤児の姉弟を見つけます。少年は、落ちているのは渋柿なので食べてはいけないと声をかけ、木の上から甘い柿を投げてあげました。喜ぶ2人を見て少年は良い気分になり、それから毎日2人に柿をあげていました。
そのうち甘柿のシーズンが終わり、あげられるものがなくなってしまった少年は、家の中の干し柿に目をつけます。しかし父親に見つかり、「大人たちが苦労して作った大切な食料は何もしてないお前が勝手に持ち出して良いもんじゃない」と叱られます。さらに、「毎日のように孤児に柿を投げてやってるというのは本当か」と問われ、それを認めるとゲンコツをされてしまいます。
「人様に物を差し上げるのに上から投げ与えるとは何ごとだ! おまえはいつからそんなに偉くなったのだ」と父親は叱り、おわびに次からは家に入ってもらうよう少年に伝えます。その後、孤児たちは少年の家で一緒にごはんを食べられるようになり、冬になると親戚に引き取られて行きました。その女の子が初恋の相手だったと、泉さんのお父さんはほろ酔いになるといつもこの話をしてくれたそうです。
みんなが生きるのに必死だった戦後の時期に、柿をあげた泉さんのお父さん、食べものの大切さを教え、ふるまいを叱りつつも、孤児を受け入れたお祖父さんの教えがステキです。泉さんによると「早世した祖父は慈悲や慈愛が人の基本と考えていたそうで、その考えを、次は父が私に伝えてくれました」とのことで、とても温かい考え方ですね。
漫画の読者からは「この時代に、わが子にこういう教えをなされたお父上(作者の祖父)が素晴らしい」「孤児の姉弟に食べ物をあげるお父様も、人としてやってはいけない事を叱りながらも孤児を受け入れるお爺様も本当に素敵」「無関係の人を施しではなく助け合う精神を説き実践されたおじい様の心意気に打たれました」「職場なのに泣きそうになりました」など、胸を打たれたというコメントが寄せられています。
作者の泉さんは、『海王ダンテ』『ポセイドンの財宝』の原作を担当。Twitterでは毎週木曜日にエッセイ漫画を公開しており、「柿の木」もその一環として投稿されました。
画像提供:泉福朗(@okaeri_eripiyo)さん
泉福朗さんの書籍(Kindle Storeで配信中)
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