「楽しく正しい性の知識を伝えたい」 医師夫婦ユニット「アクロストン」に聞く「男子のための生理教室」の大切さ

性をタブーにしないために。

» 2019年09月26日 11時00分 公開
[不義浦ねとらぼ]

 小学生のころ、女子だけが別室に呼ばれ、生理について説明を受ける日があったのを覚えているでしょうか。記者の場合、女子がナプキンの使い方などを教えられている間、男子は学校の中にある畑の世話に駆り出されていたと記憶しています。

 しかしよく考えると不思議です。自分の身に起こらないことなら知らなくてもいいのでしょうか? そうではないはずです。身近な相手を思いやるためにも、男子も生理について知っておく必要があります。

男子のための生理(月経)教室 生理をひとごとにしない性教育

アクロストンの「男子のための生理教室」

 「子どもたちに楽しく正しく性の知識を伝えたい」――そんな思いから「男子のための生理(月経)教室」を開いたのが、医師夫婦によるユニット「アクロストン」です。結成の背景は、子どもたちへの性教育を考えたことだったといいます。

「そもそもは私たちの子ども(10歳、8歳)に楽しく性教育をしたいと思ったのが結成のきっかけです。子どもが簡単にスマホやタブレットでネットにアクセスできる今、心の準備をせずにHなマンガやAVの広告などを目にすることがあり得るので、その前に楽しく正しい性の知識を伝えたいと考え、活動を始めました」(アクロストン/以下同)

男子のための生理(月経)教室 生理中の身体がどうなっているのか、女性以外も知っておく必要があります

 アクロストンの「男子のための生理(月経)教室」は、公立小学校の5年生と6年生の男子を対象に行われました。これまでも保健の授業を担当したり、性教育のワークショップを担当することはあったものの、このような教室を開催するのは初めてだったそうです。

「教室を開催するに至った直接のきっかけは、女子生徒がワコールの『ツボミスクール』(※1)に参加する時間、「男子生徒達に何か授業をしてください」とお願いされたことです。もともと4年生の性教育を含む保健の授業を数時間担当していたため、信頼していただいて授業を任されたのだと思いますが、まさか生理教室を開催するとは学校側も予想していなかったと思います」

 ※1……ワコールが小4〜中2の女の子とその保護者を対象に開催している教室。思春期の身体の変化や下着の選び方について教える。

「男子のための生理教室」プログラム

 教室の流れは以下のようなものです。最初に生理の基礎知識を確認したあと、男子が生理について学ぶ必要性を伝えます。

「ただ生理(月経)の話をすると『なんで男子に女子の話をしてくるんだ? 関係ないじゃないか!』と思う生徒も出てくることが予想されたので、なぜ男子も自分の体には起こらない生理現象である月経について知ったほうがよいのか、丁寧に説明しました

男子のための生理(月経)教室 ナプキン、タンポン、月経カップ……生理が来る人でも全部使ったことがある人は少ないかも?

 そしてメインとなるのは、「大地震が起き、小学校にたくさんの人が避難している」という状況設定で、生理用品を必要な人に適切に配るシミュレーションゲームです。子どもたちは班ごとにナプキン、タンポン、月経カップなど、さまざまな生理用品を渡され、「どうやって使うもの?」「これが必要な人はどんな人?」などの設問に回答していきます。

男子のための生理(月経)教室 ナプキン

 子どもたちは自らパッケージを熟読し、わからないことを質問しながら、最終的にはみな使い方や名前を説明できるようになりました。ナプキンをいくつ配るべきか、という質問には「大体5時間おきに交換だから一日5個必要。5から7日続くとして25から35個」としっかり計算して答えた班、「余裕をもって少し多めに渡す」と回答した班など、渡す相手のことを真剣に考えた答えが出たそうです。

 アクロストンのお2人は、実はもともと男女わけて行う性教育には否定的でした。お互いの身体についてお互い理解しあう必要があるためです。しかし同性だけでワークショップを行うことにより、性教育により主体的に参加できるようになる可能性も大いにあると言います。

「以前4年生の授業のときに生理用品を持って行ったのですが、男子生徒も興味を持って近づいてくるものの、女子が色々と手にとっている輪には入りづらそうだったのを見ていたので、男子が思う存分手に取って、自分たちで考えて体感できるワークになるよう工夫しました

男子のための生理(月経)教室 月経カップは水で洗うと何度も使えます
男子のための生理(月経)教室 タンポン

より開かれた性教育へ

 一方、家庭内で性教育を行う場合は、どのような配慮が必要なのでしょうか。

「最も大事なことは『性の話で聞きたいことがあったら、この人(親・保護者など)に聞いてもいいんだ』という安心感を子どもに与えることです。

 子どもがきいていくる性教育に関わる質問は『どうして赤ちゃんがうまれるの?』『なんで女の人にはおちんちんがついてないの?』など、とっさに答えるのが難しい場合もあります。その場合は即答する必要はありません。ただ、『今忙しいから』などとごまかさずに、一緒に考えたり、調べたり、『あとで答えるね』と約束して数日後に答えてあげるなど、性の話をタブーにせずに、家庭内で信頼して話せる空間を作っていくことが大事だと考えています」

 今後やってみたい取り組みについて尋ねると、「3歳頃〜小学2、3年生向けのワークショップで使用するシール絵本がちょうど完成したところです。まだ自作の域を出ていないので、より多くの方が手に取ることができるように出版できたらいいな、と思っています。あとは性教育のボードゲームを作ってみたいです」とのことでした。アクロストン流の開かれた性教育は、子どもたちの未来を変えるのかもしれません!

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/29/news100.jpg 大谷翔平、妻・真美子さん妊娠公表→エコー写真に“まさかの勘違い” 「デコピン妊娠?」「どう見てもデコピンで草」
  2. /nl/articles/2412/29/news101.jpg チェジュ航空社長、日本語で謝罪 犠牲者は170人以上との報道 公式サイトは通常のオレンジからブラックに
  3. /nl/articles/2412/30/news070.jpg 大谷翔平の妻・真美子さん妊娠→現役時代に語っていた「将来の夢」に感動の声 「なんか泣けてくる」
  4. /nl/articles/2412/29/news005.jpg 母「昔は数十人もの男性の誘いを断った」→娘は信じられなかったが…… 当時の“想像を超える姿”が2800万再生「これは驚いた」【海外】
  5. /nl/articles/2412/29/news075.jpg 「スマホ入荷しました」 ハードオフ店舗がお知らせ→まさかの正体に大横転 「草しか生えない」
  6. /nl/articles/2412/30/news071.jpg 子どもがお店で“高額おもちゃ”を欲しがる→通りすがりの“五輪選手がまさかの理由”でプレゼント 「すごすぎる話」「今年一番感動」
  7. /nl/articles/2412/29/news098.jpg 大谷翔平と妻・真美子さん“家族ショット”に210万いいね 「素敵な1枚」「幸せな家族写真!」【“大谷家”の新たな一歩】
  8. /nl/articles/2412/29/news013.jpg 毛糸で“お花をぷくぷく”編んでいくと…… 思わず笑顔になるアイテム完成に「なんて美しい」「母に編んであげよう」
  9. /nl/articles/1611/04/news117.jpg 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  10. /nl/articles/2412/30/news039.jpg ヤクルトが“投げ売り状態”かと思ったら…… 「大勘違い」引き起こしかねない光景に「さすがに飲めない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  3. 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に【大谷翔平激動の2024年 「お菓子」にも注目集まる】
  5. 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  6. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  7. 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  8. 「昔モテた」と言い張るパパ→信じていない娘だったが…… 当時の“驚きの姿”が2900万再生「おおっ!」「マジかよ」【海外】
  9. トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  10. “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」