【たぶん中学生の数学力でも分かる】政治家の“子ども3人産んで発言”がおかしい理由(2/2 ページ)

» 2019年10月09日 12時00分 公開
[キグロねとらぼ]
前のページへ 1|2       

 この式を変形すると、「p>2/m」になります。“子ども3人産んで発言”の通り、1組の夫婦が産む平均の子どもの数(m)が3人になったとしましょう。

 すると、「p>2/3」という結果が得られます。この式が意味するのは「子どもを3人産んで人口が増えるのは、結婚する女性の割合が67%を超えている場合である」ということです。



でも、そもそも結婚している女性の割合が少ない

 では、現実のデータはどうなっているでしょうか。2015年の国勢調査の結果を見てみましょう。

 妊娠出産に適していると考えられる25〜35歳の女性に注目すると、その人口は753万0680人。そのうち、有配偶者(現時点で夫のいる人)は374万0621人。つまり結婚している女性の割合は

  • 7530680÷3740621×100=49.67176%

 なんと、たったの50%しかいません。67%には遠く及ばないのです。

 最近は晩婚化が進んでいるので、年齢を上げて30〜40歳の結婚している女性の割合を計算してみましょう。この範囲の女性人口は864万2168人、有配偶者は558万9314人。

  • 8642168÷5589314×100=64.67491%

 約65%。必要な67%にわずかに足りません。

 このデータは有配偶者、つまり「現時点で結婚している女性の人数」です。過去に結婚していたが今は離別/死別した人は含まれていません。こうした人たちも含めるとどうなるでしょう?

 25〜35歳では、その値は約57%と、やはり足りません。一方、30〜40歳では約73%に達し、何とか足ります。

 つまり、現在の30〜40歳の人たちが、離別/死別した人も含めて平均3人以上の子どもを産んでいれば、子世代は親世代より多くなるはずなのです(ただし、現実にはそうなっていないため、少子化が進んでいます)。

婚外子を考慮すると?

 ここまで、結婚した人限定で話を進めてきましたが、「子どもを産むかどうか」だけに注目したら、どうなるでしょう。いわゆる婚外子も含めた場合です。

 この場合、公式は次のように書き換えればよいでしょう。

  • 子世代の人口=親世代の女性人口×女性のうち子どもを産む割合×子どもを産む女性が平均して産む子どもの人数

 これも文章のまま書くと面倒なので、全部記号に置き換えましょう。



c=nqs

  • c:子世代の人口
  • n:親世代の女性人口
  • q:女性のうち子どもを産む割合
  • s:子どもを産む女性が平均して産む子どもの人数

※ちなみに、sはいわゆる出生率より大きな値になるはず。出生率は「子どもを産まない女性も含めた平均」なのですが、sは「子どもを産んだ女性だけ」で計算するからです

 これが親世代の人口2nを超える(c=nqs>2n)ためには、どうなっていればよいでしょう?

 この式を変形すると「q>2/s」という式が得られます。記号が違うだけで、さきほどの式とそっくりですね。式の意味するところもほとんど同じです。

 さて、子どもを産む女性が平均して3人の子どもを産むとしましょう。すると、qは67%以上になり、この式からは以下のように読み取ることができます。

 「結婚するかしないかに関わらず、子どもを産んだ女性が平均して3人産む場合、人口が増えるには、子どもを産む女性が67%を超えていないといけない」。

円グラフを見れば、こうなる理由が一目で分かる

 「子どもを3人産んでも人口が増えるとは限らない」というのは直感に反する結果かもしれませんが、円グラフを描いてみると理由が一目で分かるはず。





 人口を増やすためには「産む人数を増やす」か「産まれる人数を増やす」しか方法がありません。そしてこの2つの間には、簡単な数式で表せる関係があります。

 例えば、「親世代の女性のうち、半分が子どもを産む」ということは「親世代の4分の1が子どもを産む」ということになります。少子化がストップするのは平均4人以上産んだときです。

 もしも世の中が“子ども3人産んで発言”の通りに動いたとしても、さらに「女性の3分の2(約67%)が子どもを産む」という条件を満たさないと子世代の人口は減ってしまうのです。

 今回の例に限らず、「これをやるためには、具体的に何を目標にすればよいのか?」という疑問に、数式が答えてくれる場合があります。なかなか思い通りにコトが進まないなと思っている方は、やろうとしていることを数式で表してみるとよいかもしれません。それは自分が思っているよりも、大変な目標なのかもしれませんよ。

2019年10月9日15時15分 修正:タイトルを一部変更しました

キグロ

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  5. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  8. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  9. /nl/articles/2411/21/news186.jpg 「円形脱毛の域超えてない?」 44歳・遠野なぎこ、“閲覧注意”な頭部公開「笑えないレベルになってるよね」 受診を勧める声も
  10. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた