「キャリア、ライフステージ、そしてオタク事が三つ巴」――“オタク女子と労働”の大変さと楽しさを『本業はオタクです。』劇団雌猫かんさんに聞いた:女子と労働(1/2 ページ)
みんなラクラク両立できてるわけではない!
SNSを見ていると「この人、どうやって仕事と趣味を両立しているんだ!?」と不思議に思うくらい、“全力”でオタ活を楽しんでいる女性たちがいます。
オタク女子たちはどんなことを思って仕事をしているのか? オタク趣味が仕事に生きるのはどんなとき? オタク女子たちが抱いている仕事の悩みとは?――「オタク女子と労働」のあれこれを、『本業はオタクです。-シュミも楽しむあの人の仕事術』編著者の劇団雌猫かんさんにインタビューしました。
意外に知らない、オタク仲間の仕事の話
――「オタク女子のお仕事」をテーマにしたのはなぜでしょうか。
劇団雌猫はもともと“インターネットで言えない話”をテーマにした同人誌「悪友」を発行してきました。趣味でつながっているインターネットの仲間たちって、オタク以外の部分でどういう生活をしているかわからなかったりして、たまに知るとすごく面白い。Zing!さんから連載のお話があったときに、「オタク女子たちの“生活に欠かせない話”を聞きたい」とみんなでいろいろと案を出しました。
その中で出てきた話が「オタク、めっちゃ忙しいよね」。女子アイドル現場用語に「おまいつ」(「おまえいつもいるな」の略。どのコンサートやライブに行っても参加しているファンを指す)という言葉があるのですが、「おまいつ」の人もほとんどが仕事をしているはず。どうやってスケジュール管理をしているんだろう、どうやって仕事とオタ活を両立しているんだろう、そもそもどういう仕事をしているんだろう? ……という疑問から始まった連載です。
――そういえば確かに、オタク仲間の仕事の話ってなかなか聞かないです。
キャリアプランどころか、どういう風に生計を立てているかも全くわからない(笑)。でも聞いてみると、当たり前ですが、けっこうみんなしっかり働いているんですよね。しかもオタク趣味のおかげでかえって仕事をうまくやれている人もいる。推しのコンサートに行くためにスケジュールを巻いたり、なぜかPhotoshopやHTMLがちょっとわかって評価されたり。
「趣味があること」って、職場では「仕事を片手間にやっている」のようにネガティブにとられることもあると思います。でも、仕事以外にモチベーションがあることで、仕事に還元されて結果が出ることもある。オタクはそこの相乗効果があるのが素晴らしいと思います。
――本の構成は3章仕立て。1章は「仕事は仕事、シュミはシュミ」と、比較的仕事を「手段」にしている女性たちです。一方2章は「仕事でもシュミを強みに」と、仕事も「目的」になっている女性のお話……という構成。劇団雌猫のみなさんはどちらですか?
私たちはほとんどのメンバーが、章にならうなら後者で、さらに全員転職を経験しています。自分たちに近い働きかたの人に偏らないよう、「仕事は仕事」派と「仕事も趣味」派、どちら側の話も半々になるように意識しました。
転職はしなくてもいいけど、転職活動はしてみよう
――前半のみんなのいろいろな働き方を読んでいくと、後半は「この先、どうしよう?」とみんなで考えるような、キャリアについての章になってきます。
主に3章「私たちのキャリア、どうすれば? 『お仕事のプロ』に聞いてみた」の部分ですね。2019年3月のトークイベント「よいこのおしごと」の内容を加筆修正した章で、キャリアコンサルタントの西尾理子先生にキャリアについて聞いています。「転職はしなくてもいい、転職活動はしてみよう」というメッセージへの反響が大きいです。
――私も転職経験はないので、「転職活動しても、転職しなくていいんだ」とはっとします。
西尾先生によると〈「えーい! 転職しちゃおう」はすごくリスキーなんですが、「まだ決めてないけど……」と思いつつ転職活動をしてみるのは、むしろおすすめしたいです〉。転職と転職活動は紐づいているというか、ひとつのものだと思いがち。でも転職活動をすることで、自分の市場価値を確認したり、自分の働き方を振り返る素材になる。いい企業に巡り合えたら転職すればよいですし、他の企業を見てみて「うちの会社、意外といいじゃん」と思いなおすことだってあります。恋愛で例えたら、恋人とマンネリ気味のときに合コンに行ってみるといった行動に近いかもしれません。
――本では「自分の現在地を確認しよう」という自分のキャリアを考えるための図がありました。
シンプルに「お金」の縦軸と「時間」の横軸で分けて、(A)お金にも使える時間にも満足している、(B)お金には満足しているが時間的余裕が少ない、(C)お金には満足していないが、時間的余裕がある、(D)お金も時間も足りなくて不満である――と分けるという考え方ですね。イベントで来場者にアンケートを取ったときは、(C)の人が多かったです。
――これで「お金」「時間」の軸で考えるのがわかりやすかったです。今の自分は、「やりがい」とか「楽しさ」とかを横軸にしようとして、うまく考えや気持ちがまとまっていない状態なので……。
仕事って、本当に係数が多い! お金や時間だけじゃなくて、人間関係、やりがい、得意不得意……といったパラメータがあって、しかも全部満たされる仕事なんてほとんどないので、実際の転職活動のときは「どこのパラメータを重要視して、どこのパラメータを妥協するか」が難しすぎる。
ただ、オタクの場合……特に現場があるオタクの場合、お金と時間の重要度が少し高いので、外せないポイントを見極めやすいのかなと思います。お金がないとチケットを買えないけど、時間の融通がきかないと買ったチケットの時間に会場に行けない。
――わかりやすい。
世の中って……なんていうかうまくできてますよね。20代で年収1000万円以上稼げるような仕事って、だいたい24時間ずっと働いていて趣味に費やす時間がない。ものすごくやりがいがあるけど、メチャクチャ忙しくて給料が低いいわゆる“やりがい搾取”の仕事もありますよね。私もやりがいにステータス全振りで、経験としてはよかったと思うけれど、時間もお金もなくてオタ活ができなかった時代もありました。転職して時間の融通がきくようになって、K-POPや宝塚にハマった。前の職場にまだいたら、どっちのジャンルのオタクもできてなかっただろうな……。
――でも、そういうやりがい全振りの仕事が楽しいという時期もありますよね。自分の人生のタイミングというか。
そうそう、やりがい全振りでお金と時間が全然ない仕事をするのも悪いことではない。そこでの経験はそのあとの仕事にすごく生きてきますし。
やってみて分かりましたが、転職ってメッチャ大変なので、「転職しよう!」をすすめるつもりはないんです。転職が当たり前にはなってきているけど、年齢のわりに転職回数が多いと嫌われることもあるというし、人事業界には「この人の履歴書はきれい(新卒で入った大企業にずっと勤めているなど)」といった表現も残っていると聞きます。でも「現在地」に不満があったら、転職活動だけでもしてみるといいのかなと思います。
関連記事
- 「『この人、辞める!』でスイッチが入った」――宝塚の“贔屓”の退団に全力を出すため、仕事をほとんど辞めた女
- 「趣味がないから、働くことを趣味にしたかった」霞が関で20代を過ごした女性職員が、国家公務員を辞めた理由
- 「傘を預かる仕事」「仙台で5時間過ごす仕事」 不思議な副業“隙間仕事”の話を聞いてみた
- 「死にたいくらい悩んでる人に読んでほしい」 異才・アッチあいの新作『ポチごっこ。』完結記念インタビュー
- 「こんな生活があと40年も続くの?」 社会人2年目で悟った“社会人のつらさ”を描いた漫画に共感集まる
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
-
「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
-
“ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
-
高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
-
「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
-
「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
-
「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
-
“歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
-
黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
-
走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
- 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
- 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
- ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
- 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた