50万円の仕事でヤクザに殺されかける愛ちゃんが不憫…… なかよし連載、エクストリーム小学生漫画『秘密のチャイハロ』を読みました:マシーナリーともコラム
雪江さんのキャラが濃い。
バーチャルYouTuber、マシーナリーとも子による不定期コラム第21回(連載一覧)です。今回は講談社のなかよし編集部から「令和の家なき子として推したい作品がある」と連絡がありました(※)。少女漫画を読むのは久しぶりというとも子。果たしてその反応は――?
※ステマではありません。
ライター:マシーナリーとも子
徳で動くバーチャルYouTuber(サイボーグ)。「アイドルマスター シンデレラガールズ」の池袋晶葉ちゃんのファンやプロデューサーを増やして投票してもらうために2018年4月に活動開始。前世はプラモ雑誌の編集をしていたとも言われているが定かではない。現在はBOOTHでグッズを売ったりLINEスタンプを売ったりしている。
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/barzam154
新しいテーマ曲ができたから聞いて!:https://youtu.be/tEdayh6oEXg
ポータルサイト:https://www.machinery-tomoko.com/
ああ、それにしても金が欲しいッ……! マシーナリーとも子よ。先日急に漫画を読んでみてほしいと言われました。やったぜ少女漫画! 『なかよし』でマシーナリーとも子のコミカライズお待ちしてます。少女たちにシンギュラリティの素晴らしさと池袋晶葉ちゃんのカワイさを布教していきたいね。
というわけで本題へ。
お題はこちら、『秘密のチャイハロ』(原作:鈴木おさむ、まんが:桜倉メグ)。ってコレ前に委員長もレコメンドしてたやつじゃん! 万札が舞うなか泣き腫らす小学生というビジュアルがもうすさまじいな。
表紙だけ見るとカワイソ系の話に見えるので大丈夫かな〜っ。私カワイソ系苦手なんだよなぁ〜っ! ってちょっと心配になったけど、まあ万札がたくさん描かれてるしもしかしたら『銀と金』みたいな話かもしれない。そんなわけで読んでみたわよ。
あらすじ
家が貧乏で学校で引くほど虐められている主人公の愛川愛ちゃんはイケメン教師から「悔しいなら環境を変えろ」と言われ子ども専用のハローワーク「チャイハロ」で働くことになるが、チャイハロには危険な仕事がいっぱいで……?
チャイハロのゆかいななかまたち
愛川愛(あいかわあい)
主人公の小学4年生。家がどん引きするほど貧乏。右足が動かない病弱な母親と、親戚の金持ちの家の物置に身を寄せている(家賃は払っている)。基本的に万人に優しいめちゃめちゃないい子なのだが、周囲の人間がことごとく異常なために主人公である彼女も異常なサバイバリティを自然と身に付けていく。
山沢雪江(やまざわゆきえ)
愛ちゃんの大家。当初は「貧乏な親戚の世話を見ている自分」を客人に見せることで、周囲からの自分の評価をageるという目的で愛ちゃんたちを物置に住まわせていたが、物語のテンションがアップしていくにつれ「現金を燃やす」「犬をけしかける」「生肉を食わせる」「おろしたてのコートを着させたまま切断する」など謎の方向に暴力性を発揮し始める本作のメインヴィラン。
華嵐聡(からんさとし)
やさしい新任教師で、数少ない愛ちゃんの理解者。優しい憧れのお兄さん枠ではあるのだが、そもそも愛ちゃんが貧乏でいじめられてることに気付きながら「いじめられてるのは環境が悪いんじゃないかな?」と言い出した揚げ句にチャイハロに引き込むという、ある意味今作最大の黒幕。実はこいつがいちばん邪悪なんじゃないか? って気もしてる。「結局誰もたすけてくれない」じゃなくてイジメっ子は裁いて、愛ちゃんには金を稼がせるんじゃなくて生活保護の申請を薦めたほうがいいんじゃないですか教師として!?
強(つよし)
仮面ライダーバース。チャイハロの稼ぎ頭ですでに5000万円の貯金があるが、家はバキの家みたいになってしまっている。割とマジ気味に愛ちゃんを殺しかけたこともあるが、それはそれとして本作の本当に貴重な良心。作中いちばんかわいいと思う。かわいい。
龍羽努(りゅうばつとむ)
チャイハロの社長。繰り返し呼ばれるので愛称とかじゃなくて本当に社長っぽいんだけど、そもそもこのチャイハロとかいう組織が会社組織ということに一定の驚きがあります。いわゆる「おもしれー女……」タイプのイケメンなんだけど、なんかめちゃめちゃ子どもたちの仕事からピンハネしてそう(後述)だしあまり経営者として有能そうに見えないという難点がある。サディストとしても「ゴーヤを生で食べさせる」「焼却死させようとする」「ワニで脅す」など、どうも雪江さんに比べると工夫が足りず、インパクトで大きく劣るので今後に期待。
……と、攻撃力の高い仲間たちから取っ替え引っ替えイジめられたり、ときには一緒にお金を稼いだりしながら愛ちゃんは強く生きていきます。
学びすら得られる気がする強烈な作風
原作を人気放送作家・鈴木おさむ氏が務めていることもあってか、読んでると「“勝ち”に来てるのお……!」という圧倒的な「闘気」を感じることができる本作。読んでいてとくに感じるのは引きの強さというかクリフハンガー展開のうまさだね。
第1巻からいきなり愛ちゃんが焼却炉に突き落とされるというドラマ版バットマンみたいな引きで「死ぬじゃん!?!?!?!?!?!?」って思わされてしまうし……。
その後も殺人を告白するゲストキャラの父親。
いきなりうなじをブッ刺される愛ちゃん、といった抜群の引きで「エエエエエエこのあとどうすんの!?」と思わされてしまう。
人類の上位種たる殺人サイボーグの私ですら「エエエエエエ」ってなってしまうんだから『なかよし』の読者である小中学生の少女たちにはどんなふうに刺さるのか想像すると……いやはや、辣腕と言わざるを得ない。
引き以外にも「凄んでみせるためだけに偶然飛んできた蝶を裏拳で潰す市長」とか「小学生に怒られたので泣きながら小学生にすがるオッサン」とか「これシリアスなのかギャグなのかわかんなくなってくるんだけどいいの!?!?!?!?」ってなるシーンがめじろ押しでマジで「なんなのこれ!?」ってなります。いやマジでなかなかここまで極端なキャラ描写って結構難しいと思うんだよね……。だって我々には理性があるから……。
普通は「ここまでやっちゃうとショッキングっていうよりギャグになっちゃうな」って思ってしまうはずなんだよマトモな感性の持ち主なら……。なんだろう、原作と漫画の2人体制なのもこの「やってしまえる感」にひと役買っているような気がします。すごい。
その極端描写の権化が大家さんの雪江さんであり、それゆえに我々は彼女の一挙一動に目が離せないというわけだな……。
彼女はわざわざ作った豪華な弁当を犬に食わせてから食べさせようとする、お母さんが着た服を脱がせず伐採する、肉を生で食わせるといった血も涙もない行為をすさまじいオーバーリアクションで魅せてくれる。作中もっともワクワクさせられる存在です。
雪江さんは物語が一段落すると愛ちゃんに襲い掛かっては「お金が必要だ!」と再認識させるためのトリガーとなるキャラなので、だんだん「早く新しい雪江さんを見たいから早くお話を畳んでくれ」とすら思うようになってしまう。本稿執筆段階での最新巻、第5巻ではちょっと長めのシリーズが進行中なので、私なんかはちょっぴり雪江さんロスになってしまっていたりする。多分6巻では会えると思うんだけどな……。早く私たちにそのバイタリティあふれる虐待を見せてくれ! 雪江さん……!
愛ちゃんは転職したほうがいいと思う
というわけでいろいろうならせられる『秘密のチャイハロ』なんだけど疑問点もあることはあって……。
それは報酬の安さだ。
例えば愛ちゃんが最初に受けた仕事「愛犬を処分して10万円」は、まあ文字面だけ見ればそんなもんかもな……って気もするけど実際のミッション内容は「親子の関係にヒビが入らないように犬を処分する」というもの。「犬を飼っている家族と仲良くなって娘に気付かれないうちに犬を奪取してこっそり焼却炉で燃やす」となかなかの工数で……いやキッツくね??
その後も第3巻ではかなり厄介な性格と立ち位置の子役女優と友達になってくれという仕事を請け負う愛ちゃん。なんとか関係性を育んでいくぞ! って思ってたら、後からアイツ殺してくれって言われたり、父親探しが始まったり(これは依頼外の半自主的なものなんだけど)、なんだかめちゃめちゃ有機的かつ、結構な長期に渡って仕事をこなし、最終的には心からの友人になれたんだけど成功報酬は10万……10万!?
第4巻からは窃盗団に潜入し、政治家やヤクザと取引を交わしつつ窃盗団を潰すというあまりにも重いミッションがスタート! 報酬は50万……50万ンンンン!?!?
や、安い! あまりに安すぎる……安いってかリスクとリターンがまったく合ってないよ! どうなってんだよ! 銃で撃たれとるんやぞ! 「危険な仕事に見合う高額な報酬が得られる」のがチャイハロなんじゃないのかよ! 50万ってお前……。
私が流しのバーチャルYouTuberというめちゃめちゃ不安定なフリーランスで食ってるからなのか、イヤに愛ちゃんの報酬の低さが気になってしまう。私は悲しいよ。まあでも読者層の金銭感覚にスケールするとこうなるのかな? って気はするけどね。あるいはめちゃめちゃこの国が不景気なのかどちらかだなッ!
多分社長がめちゃめちゃ中抜きしてるんだろうな。許せん。人材派遣会社がこの野郎……!
うーーーん愛ちゃん……チャイハロ辞めてアイドルかYouTuberでもやろう! その会社は愛ちゃんをやりがい搾取してるぞ!!
愛ちゃんには『銀と金』の銀さんみたいな人と出会って、チャイハロから逃げてほしいなあと思いました。もしくはアレだな……マンション麻雀やるとか……ロボット操縦する傭兵になるとか……たぶんもっと……命張るに値する割がいい仕事あると思うから……ガンバれ! 愛ちゃん!
愛ちゃんが「名前は愛川愛……背景は無い!」って言うところみたいなあ。
まあそんなわけでめちゃめちゃつよつよメンタルに育っていってしまっている愛ちゃんは将来独立できるのかどうか!? そんなところも気にしつつ読むと楽しいと思います『秘密のチャイハロ』。まあタイトルからして独立はしねえと思うけど、金銭以上に仕事を通して愛ちゃんがめちゃめちゃ「強く」なっていく様は素直に楽しく、カッコいいです。ヒーロー感あるわ。そういった意味では彼女はいまとても素晴らしい経験をしているのかもしれんな……。ちょっとエクストリームすぎるけど……。
というわけで『秘密のチャイハロ』は現在単行本5巻まで発売中! 「マシーナリーとも子がオススメしてるから買っちゃった?!」って言いながら、買おうね! それじゃあな。
(C)鈴木おさむ 桜倉メグ/講談社
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「ジョーカーゲージ」が見える。
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