50万円の仕事でヤクザに殺されかける愛ちゃんが不憫…… なかよし連載、エクストリーム小学生漫画『秘密のチャイハロ』を読みましたマシーナリーともコラム

雪江さんのキャラが濃い。

» 2019年12月28日 11時00分 公開
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 バーチャルYouTuber、マシーナリーとも子による不定期コラム第21回(連載一覧)です。今回は講談社のなかよし編集部から「令和の家なき子として推したい作品がある」と連絡がありました(※)。少女漫画を読むのは久しぶりというとも子。果たしてその反応は――?

※ステマではありません。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ

ライター:マシーナリーとも子

マシーナリーとも子 プロフィール

徳で動くバーチャルYouTuber(サイボーグ)。「アイドルマスター シンデレラガールズ」の池袋晶葉ちゃんのファンやプロデューサーを増やして投票してもらうために2018年4月に活動開始。前世はプラモ雑誌の編集をしていたとも言われているが定かではない。現在はBOOTHでグッズを売ったりLINEスタンプを売ったりしている。

YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/barzam154
新しいテーマ曲ができたから聞いて!:https://youtu.be/tEdayh6oEXg
ポータルサイト:https://www.machinery-tomoko.com/


 ああ、それにしても金が欲しいッ……! マシーナリーとも子よ。先日急に漫画を読んでみてほしいと言われました。やったぜ少女漫画! 『なかよし』でマシーナリーとも子のコミカライズお待ちしてます。少女たちにシンギュラリティの素晴らしさと池袋晶葉ちゃんのカワイさを布教していきたいね。


 というわけで本題へ。

 お題はこちら、『秘密のチャイハロ』(原作:鈴木おさむ、まんが:桜倉メグ)。ってコレ前に委員長もレコメンドしてたやつじゃん! 万札が舞うなか泣き腫らす小学生というビジュアルがもうすさまじいな。

 表紙だけ見るとカワイソ系の話に見えるので大丈夫かな〜っ。私カワイソ系苦手なんだよなぁ〜っ! ってちょっと心配になったけど、まあ万札がたくさん描かれてるしもしかしたら『銀と金』みたいな話かもしれない。そんなわけで読んでみたわよ。

あらすじ

 家が貧乏で学校で引くほど虐められている主人公の愛川愛ちゃんはイケメン教師から「悔しいなら環境を変えろ」と言われ子ども専用のハローワーク「チャイハロ」で働くことになるが、チャイハロには危険な仕事がいっぱいで……?


チャイハロのゆかいななかまたち

愛川愛(あいかわあい)

マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ

 主人公の小学4年生。家がどん引きするほど貧乏。右足が動かない病弱な母親と、親戚の金持ちの家の物置に身を寄せている(家賃は払っている)。基本的に万人に優しいめちゃめちゃないい子なのだが、周囲の人間がことごとく異常なために主人公である彼女も異常なサバイバリティを自然と身に付けていく


.jpg いじめをはじめとして、結構ストレスシーンが多い本作ですがそれを被る愛ちゃんもやたらと強靭なメンタルを持って切り抜けていくので意外とスルスル読めるみたいなところがあります(第5巻)

山沢雪江(やまざわゆきえ)

マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ

 愛ちゃんの大家。当初は「貧乏な親戚の世話を見ている自分」を客人に見せることで、周囲からの自分の評価をageるという目的で愛ちゃんたちを物置に住まわせていたが、物語のテンションがアップしていくにつれ「現金を燃やす」「犬をけしかける」「生肉を食わせる」「おろしたてのコートを着させたまま切断する」など謎の方向に暴力性を発揮し始める本作のメインヴィラン


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ 愛ちゃんを空腹の犬とともに物置に閉じ込めてこのセリフ。もはやスパロボのトドメ演出みたいで「かっこいい……」とすら思わされてしまう圧倒的魅力を誇る悪役(第1巻)

華嵐聡(からんさとし)

マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ

 やさしい新任教師で、数少ない愛ちゃんの理解者。優しい憧れのお兄さん枠ではあるのだが、そもそも愛ちゃんが貧乏でいじめられてることに気付きながら「いじめられてるのは環境が悪いんじゃないかな?」と言い出した揚げ句にチャイハロに引き込むという、ある意味今作最大の黒幕。実はこいつがいちばん邪悪なんじゃないか? って気もしてる。「結局誰もたすけてくれない」じゃなくてイジメっ子は裁いて、愛ちゃんには金を稼がせるんじゃなくて生活保護の申請を薦めたほうがいいんじゃないですか教師として!?


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ タチの悪い天然ジゴロみたいなところがありますね(第2巻)

強(つよし)

マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ

 仮面ライダーバース。チャイハロの稼ぎ頭ですでに5000万円の貯金があるが、家はバキの家みたいになってしまっている。割とマジ気味に愛ちゃんを殺しかけたこともあるが、それはそれとして本作の本当に貴重な良心。作中いちばんかわいいと思う。かわいい。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ バキの家みたいな強ん家(第2巻)

龍羽努(りゅうばつとむ)

マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ

 チャイハロの社長。繰り返し呼ばれるので愛称とかじゃなくて本当に社長っぽいんだけど、そもそもこのチャイハロとかいう組織が会社組織ということに一定の驚きがあります。いわゆる「おもしれー女……」タイプのイケメンなんだけど、なんかめちゃめちゃ子どもたちの仕事からピンハネしてそう(後述)だしあまり経営者として有能そうに見えないという難点がある。サディストとしても「ゴーヤを生で食べさせる」「焼却死させようとする」「ワニで脅す」など、どうも雪江さんに比べると工夫が足りず、インパクトで大きく劣るので今後に期待。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ 「貧乏人のくせに好き嫌いがあるのか!!」のパンチライン好きです(第1巻)

 ……と、攻撃力の高い仲間たちから取っ替え引っ替えイジめられたり、ときには一緒にお金を稼いだりしながら愛ちゃんは強く生きていきます

学びすら得られる気がする強烈な作風

 原作を人気放送作家・鈴木おさむ氏が務めていることもあってか、読んでると「“勝ち”に来てるのお……!」という圧倒的な「闘気」を感じることができる本作。読んでいてとくに感じるのは引きの強さというかクリフハンガー展開のうまさだね。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第1巻)

 第1巻からいきなり愛ちゃんが焼却炉に突き落とされるというドラマ版バットマンみたいな引きで「死ぬじゃん!?!?!?!?!?!?」って思わされてしまうし……。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第3巻)

 その後も殺人を告白するゲストキャラの父親。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第4巻)

 いきなりうなじをブッ刺される愛ちゃん、といった抜群の引きで「エエエエエエこのあとどうすんの!?」と思わされてしまう。

 人類の上位種たる殺人サイボーグの私ですら「エエエエエエ」ってなってしまうんだから『なかよし』の読者である小中学生の少女たちにはどんなふうに刺さるのか想像すると……いやはや、辣腕と言わざるを得ない。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第5巻)

マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第3巻)

 引き以外にも「凄んでみせるためだけに偶然飛んできた蝶を裏拳で潰す市長」とか「小学生に怒られたので泣きながら小学生にすがるオッサン」とか「これシリアスなのかギャグなのかわかんなくなってくるんだけどいいの!?!?!?!?」ってなるシーンがめじろ押しでマジで「なんなのこれ!?」ってなります。いやマジでなかなかここまで極端なキャラ描写って結構難しいと思うんだよね……。だって我々には理性があるから……

 普通は「ここまでやっちゃうとショッキングっていうよりギャグになっちゃうな」って思ってしまうはずなんだよマトモな感性の持ち主なら……。なんだろう、原作と漫画の2人体制なのもこの「やってしまえる感」にひと役買っているような気がします。すごい。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第1巻)

 その極端描写の権化が大家さんの雪江さんであり、それゆえに我々は彼女の一挙一動に目が離せないというわけだな……。

 彼女はわざわざ作った豪華な弁当を犬に食わせてから食べさせようとする、お母さんが着た服を脱がせず伐採する、肉を生で食わせるといった血も涙もない行為をすさまじいオーバーリアクションで魅せてくれる。作中もっともワクワクさせられる存在です。

 雪江さんは物語が一段落すると愛ちゃんに襲い掛かっては「お金が必要だ!」と再認識させるためのトリガーとなるキャラなので、だんだん「早く新しい雪江さんを見たいから早くお話を畳んでくれ」とすら思うようになってしまう。本稿執筆段階での最新巻、第5巻ではちょっと長めのシリーズが進行中なので、私なんかはちょっぴり雪江さんロスになってしまっていたりする。多分6巻では会えると思うんだけどな……。早く私たちにそのバイタリティあふれる虐待を見せてくれ! 雪江さん……!

愛ちゃんは転職したほうがいいと思う

 というわけでいろいろうならせられる『秘密のチャイハロ』なんだけど疑問点もあることはあって……


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第1巻)

 それは報酬の安さだ。

 例えば愛ちゃんが最初に受けた仕事「愛犬を処分して10万円」は、まあ文字面だけ見ればそんなもんかもな……って気もするけど実際のミッション内容は「親子の関係にヒビが入らないように犬を処分する」というもの。「犬を飼っている家族と仲良くなって娘に気付かれないうちに犬を奪取してこっそり焼却炉で燃やす」となかなかの工数で……いやキッツくね??


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第3巻)

 その後も第3巻ではかなり厄介な性格と立ち位置の子役女優と友達になってくれという仕事を請け負う愛ちゃん。なんとか関係性を育んでいくぞ! って思ってたら、後からアイツ殺してくれって言われたり、父親探しが始まったり(これは依頼外の半自主的なものなんだけど)、なんだかめちゃめちゃ有機的かつ、結構な長期に渡って仕事をこなし、最終的には心からの友人になれたんだけど成功報酬は10万……10万!? 


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第5巻)

 第4巻からは窃盗団に潜入し、政治家やヤクザと取引を交わしつつ窃盗団を潰すというあまりにも重いミッションがスタート! 報酬は50万……50万ンンンン!?!?

 や、安い! あまりに安すぎる……安いってかリスクとリターンがまったく合ってないよ! どうなってんだよ! 銃で撃たれとるんやぞ! 「危険な仕事に見合う高額な報酬が得られる」のがチャイハロなんじゃないのかよ! 50万ってお前……。

 私が流しのバーチャルYouTuberというめちゃめちゃ不安定なフリーランスで食ってるからなのか、イヤに愛ちゃんの報酬の低さが気になってしまう。私は悲しいよ。まあでも読者層の金銭感覚にスケールするとこうなるのかな? って気はするけどね。あるいはめちゃめちゃこの国が不景気なのかどちらかだなッ!


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (第1巻)

 多分社長がめちゃめちゃ中抜きしてるんだろうな。許せん。人材派遣会社がこの野郎……!

 うーーーん愛ちゃん……チャイハロ辞めてアイドルかYouTuberでもやろう! その会社は愛ちゃんをやりがい搾取してるぞ!!


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ (『銀と金』電子版 P71)

 愛ちゃんには『銀と金』の銀さんみたいな人と出会って、チャイハロから逃げてほしいなあと思いました。もしくはアレだな……マンション麻雀やるとか……ロボット操縦する傭兵になるとか……たぶんもっと……命張るに値する割がいい仕事あると思うから……ガンバれ! 愛ちゃん!

 愛ちゃんが「名前は愛川愛……背景は無い!」って言うところみたいなあ。

 まあそんなわけでめちゃめちゃつよつよメンタルに育っていってしまっている愛ちゃんは将来独立できるのかどうか!? そんなところも気にしつつ読むと楽しいと思います『秘密のチャイハロ』。まあタイトルからして独立はしねえと思うけど、金銭以上に仕事を通して愛ちゃんがめちゃめちゃ「強く」なっていく様は素直に楽しく、カッコいいです。ヒーロー感あるわ。そういった意味では彼女はいまとても素晴らしい経験をしているのかもしれんな……。ちょっとエクストリームすぎるけど……。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ そうだ強くなれ、愛ちゃん。もっと……そもそもチャイハロがまったく法律守ってねえけど……!(第4巻)

 というわけで『秘密のチャイハロ』は現在単行本5巻まで発売中! 「マシーナリーとも子がオススメしてるから買っちゃった?!」って言いながら、買おうね! それじゃあな。


マシーナリーとも子 秘密のチャイハロ


(C)鈴木おさむ 桜倉メグ/講談社




Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/05/news022.jpg 「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
  2. /nl/articles/2410/05/news040.jpg 伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
  3. /nl/articles/2410/02/news116.jpg 余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
  4. /nl/articles/2410/05/news023.jpg 七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
  5. /nl/articles/2410/05/news018.jpg 野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
  6. /nl/articles/2410/05/news012.jpg 「あのお客さんに幸あれっ!」 小銭の出し方が完璧な“神客”にレジ店員感激 会計がスムーズになる配慮が参考になる
  7. /nl/articles/2410/04/news048.jpg 「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
  8. /nl/articles/2410/04/news040.jpg 50代女性「モンチッチみたいにしてほしい」→美容師がプロのワザを見せ…… 別人級の変身に「めっちゃお洒落」「すごい!」
  9. /nl/articles/2410/04/news025.jpg 「これが免許証の写真???」 コスプレイヤーが公開した“信じられない”免許証が話題 コスプレ姿との比較に「両方とも可愛いすぎる」
  10. /nl/articles/2410/05/news032.jpg 大型犬が18年間、ドアを開け続けた結果……そうはならんやろな驚きの末路に「どうしたらこんな風になるのよ」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
  2. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  3. トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
  4. 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
  5. そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
  6. 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
  7. 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
  8. “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
  9. 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
  10. 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声