家事や育児ができていない「とるだけ育休」が発生? 国や企業は推進、男性育児休暇取得微増も

育休満足度をあげる7つの法則、5つの準備が必要。

» 2020年01月27日 17時00分 公開
[谷町邦子ねとらぼ]

 小泉進次郎環境大臣の育休取得で注目が集まった男性の育児休暇取得。一般の職場でも育児休暇(以下、育休)の取得が勧められるようになり、改正育児・介護休業法が施行された2017年から男性の育児休暇取得率の上昇に弾みがつきました。さらに、男性に育休の取得を義務化も検討され始めています。


とるだけ育休 男性の育休取得を政府・与党も促進

 一方で、夫に育休を取ってほしいと思わない女性の存在も少なくありません。その背景には、夫婦で育休期間中の過ごし方についての話し合いや、準備がされることのないまま、ただ休暇を取っただけという質の低い育休「とるだけ育休」があるのではないか――子育てに役立つ情報を発信するアプリママリが、3992人の女性ユーザーに対して調査を実施。妻の視点から「とるだけ育休」の実態に迫りました。

※公益財団法人 日本財団とママリを運営するコネヒト株式会社が共同で調査

「とるだけ育休」に女性たちの不満続出

 夫が育休を取得した508人の女性に対し、育休中の夫が1日のうちに家事や育児をした時間をたずねたところ、「約3人に1人が2時間以下」という結果がでました。この家庭では夫が育休中にも関わらず、女性が1日のうちのほとんどの時間を家事や育児に費やしていたということになります。一方で8時間以上家事・育児に関わったという家庭も2割ほどあり、男性が育児にかかわる度合いに大きな差があるということがわかります。


とるだけ育休 育休中の夫の家事および育児時間

 さらに、自由記述では自発的に家事や育児に参加しない、家事の経験やスキル、新生児や産後の身体的負担に関する知識の不足などよって、新生児がいる家庭のなかで、家事や育児ができていない夫の姿が浮かびあがります。すでに発生している「とるだけ育休」。今後男性が職場で勧められ育休を取得するケースが増えると、「とるだけ育休」もさらに増加することも予想されます。


とるだけ育休 「指示待ち」「家でだらだら」と積極性に欠ける態度、「産後の身体的負担をもっと勉強してほしかった」「子どもができる前に(家事などを)できるようにすればよかった」など知識やスキルの不足により戦力にならないなど

「とるだけ育休」の先にあるもの

 夫が育休をとったことがない女性に「今後、夫(パートナー)に育休を取得してほしいと思いますか」と質問すると、「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と47.5%が消極的に回答。「とるだけ育休」が多発している現状を踏まえてこの結果を見ると、育休の意義や活用の仕方が理解されていないことが、多く男性が育児休暇を取ることに対しての期待を低くさせ、約半数の女性が夫の育児休暇を望んでいないという状況につながっているのかもしれません。


とるだけ育休 「今後、夫に育休を取得してほしいと思いますか」という問いに、半数近くが消極的な回答

 そして、育休についての理解が進まないまま「とるだけ育休」が増加していくと、育休についてネガティブな経験談が広がり、育休期待値も低下していくという「負のループ」が発生していくと考えられます。一方、過ごし方が夫婦で練られた「質の高い育休」が増えると、男性の育休取得についてポジティブな経験談やノウハウが広まり、育休への期待値が上がり、さらに「質の高い育休」が増える、という「正のループ」が生まれることになります。


とるだけ育休 育休についての「正のループ」「負のループ」の境目となるのは……

 より充実した育休のあり方が社会に広がっていく「正のループ」が展開するか、そうでないかは、「夫婦に男性育休の意義と活用法が浸透するかどうかが分岐点になる」と述べています。

「質の高い育休」は夫にもメリットが

 さて、育休の質が、夫婦関係を左右するという調査結果もあります。夫の育休に満足していると答えた妻のほうが、育児や子育てで孤立感や負担感を感じにくいと回答する傾向がみられるのです。「とるだけ」でない、充実した育休期間を過ごすことは夫側にとっても良好な夫婦関係につながると考えられます。


とるだけ育休 育休の質と「身体的」負担感の関係


とるだけ育休 育休の質と「心理的」負担感の関係


とるだけ育休 育休の質と孤立感の関係


とるだけ育休 出産直後に夫への愛情が急降下!?

「質の高い育休」を実現するために

 では、一体、どのような過ごし方が、「質の高い育休」を実現するのでしょうか。妻に夫の育休の過ごし方について満足した理由と不満だった理由について自由に書いてもらった結果を分析。


とるだけ育休 育休の満足理由や不満理由について、自由に書いてもらった答えの中から似た意味のものでまとめ、集計

 すると、育休の質を高める過ごし方について、「量的に(家事・育児を)担当する」「(家事・育児に)必要なスキルを習得する」「(妻を)精神的に支える」「(家事・育児に)主体的な姿勢で取り組む」「(妻に)休息をとらせる」「十分な期間取得する」「家族との時間を楽しむ」といった「7つの法則」があることが明らかになりました。


とるだけ育休 育児という経験の共有ができたこと、時間的余裕が生まれた、休暇からの復帰後も夫が育児に継続して関わったなど、育休に満足できた理由


とるだけ育休 分析の結果明らかになった、育休の過ごし方「7つの法則」

 質の高い育休に重要な「7つの法則」を実現するために、ママリは育休に入る前に育休準備を提案しています。育休準備のポイントは「ママの心身を理解する」「パパのメリットを理解する」「家事育児タスクを理解する」「育休の過ごし方7つの法則を確認する」「夫婦で話し合う」の5点。


とるだけ育休 「7つの法則」を実現するために必要な5つの育休準備

 育休準備を促すためには、母子手帳を配布する時に自治体窓口から夫婦に情報提供をするなど自治体や企業などによる周知が必要だと考えています。ママリでは夫婦で育休について考えるための冊子を作成。自治体窓口での10万部配布を目指し取り組んでいるとのことです。


とるだけ育休 子どもとの良好な関係、妻との子育てという経験の共有、自分ひとりでも育児ができる手ごたえなど。それぞれが感じる男性育休の意義

 調査から「とるだけ育休」に対する女性側から不満や、男性育児休暇への期待などがダイレクトに伝わってきます。それゆえ、男性が育休を取得する前に、夫婦で共有すると困らないことがよくわかります。

(谷町邦子 FacebookTwitter

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた