意味がわかると怖い話:「忌子の森」(1/2 ページ)
あのとき、あそこにいたのは……?
普通に読んでいればなんてことないお話。だけどひとたび気づくと、全く違う光景が見えてくる……「意味がわかると怖い話」を紹介する連載です。
忌子の森
僕が住む町のはずれにある住宅地には、一辺100メートルほどにわたって、そこだけこんもりとケヤキの木が生い茂る小さな森が残されていて、「忌子さまの森」と呼ばれていた。「忌子」はそのままイミゴ、と読む。
小学校の授業で、被葬者不明の古墳なのだと教えられたが、古くから町に住む人たちには、そこは一種の聖域と扱われていた。昔、死んだ祖母から「あそこに入っちゃいかんよ」と、何度も言い聞かせられたものだ。
休校が長引く退屈の中で、「森に肝試しに行こう」と言い出したのは確かAだったはずだ。
B、C、そして僕。同じ中学でいつもつるんでいる男4人で集まることになった。
鬱蒼(うっそう)と茂る森は昼間でも薄暗く(夜に行かないあたりが僕たちの限界だ)、気温も周りより幾分、ひんやりして感じられた。
森のどこかに小さな祠(ほこら)があり、そこに向かって「忌子さま、遊びましょう」と呼びかけると返事がかえって来るらしい。Aはそんな、怪談とも言えないような話を嬉々として語った。
A「何か聞こえたら録音できるように、レコーダーも持ってきたんだ。とりあえず祠を目的地にしよう」
B「みんな、ここに来るのは初めてだよね」
C「祠があるなんて聞いたことないな。俺が知ってるのは『子どもだけで森に入ると悪いモノに魅入られる』って話で。森から出られなくなるとか」
B「ついてきちゃうとかね」
A「俺たちってまだ『子ども』ってカウントか?」
僕「少なくとも、うちのばあちゃんは許してくれなかったろうな」
小さな森だ。それらしきものは、すぐに見つかった。ひび割れ苔むした、石造りの小さな祠。その周りだけ、ぽっかりと草木が生えていなかった。
僕たちは祠を囲んで、口々に「忌子さま、遊びましょう」と声を上げた。
……もちろん、何も起こらない。互いに顔を見合わせ、Aはつまらなそうな、少しホッとしたような顔でICレコーダーを切った。
そのまま森を一周してみたが、みんな拍子抜けしたのか会話も盛り上がらないまま、30分ほどで元の入り口に戻ってきてしまった。
C「正直、来るまでけっこうビビってたんだけど、なんてことなかったな」
僕「でも実際、子どもの失踪事件はあったらしいよ。何十年も前だけど。木で目隠しになるから、小さい子を狙う変質者が出てもおかしくはないかも」
B「でも、楽しかったよ」
A「お前のばあちゃんが子どもだけで行くなって言ってたのも、その辺が真相かもな」
そのまま誰かの家でダベる流れかと思ったが、Cが腕時計を見て「帰らなきゃ」と言ったのを合図にするように、なんとなく解散になった。
Aが思いつめたような顔をして僕の家にやって来たのは、その翌日だった。
A「やっぱり録れてたんだよ、声」
彼は震える声でそう言うと、レコーダーを再生した。
耳を澄ませたが、僕には「忌子さま、遊びましょう」「遊びましょう」「遊びましょう」「遊びましょう」という自分たちの声、そしてざああっ、という風の音しか聞こえなかった。
僕「僕たちの声しか入ってないじゃないか」
A「ちゃんと聞けよ。……4人分なんだよ、声が」
要領を得ないAの言葉に困惑していると、それに苛立ったのか彼は声を荒げた。
A「あそこには俺たち3人しかいなかったのに、誰の声なんだよこれ!」
関連記事
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
-
「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
-
“ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
-
高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
-
「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
-
「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
-
「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
-
“歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
-
黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
-
走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
- 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
- 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
- ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
- 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた