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» 2019年08月13日 20時00分 公開

ねとらぼ読者の怪談傑作選―病院、お盆の川、夜の海辺― (1/2)

ねとらぼ読者から寄せられた怪談を、選り抜きでお届けします。

[不義浦,ねとらぼ]

 ねとらぼ真夏の怖い話特集、第4夜は「ねとらぼ読者の恐怖体験」です。ねとらぼ編集部では読者から怪談を募集し、全部で57本もの怖い話をお寄せいただきました。今回はその中から、5本をより抜いてお届けします。当直の夜に起きた奇妙な体験から、夜の港町で遭遇した「何か」まで……怖い話が苦手な方はお気をつけてご覧ください。

ねとらぼ怖い話特集

病棟のざわめき(匿名希望さん)

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 長期入院患者が多数入院している病院の1階病棟に勤めていたときのことです。

 夜勤で見回りをするとき、深夜1時半頃に1階エレベーターホールの方から、大勢の人が話す声がザワザワと聞こえてきました。おそるおそるエレベーターホールに向かうと、消灯されているはずのエレベーター前の電気がついていて、ざわめきはその周囲から聞こえてきます。が、人影は一切ありません。

 何が起きているのか理解できずに立ちつくしていると、エレベーターが2Fから降りてきて扉が開きました。もちろん、誰も乗っていません。しかし、エレベーターから誰かが降りてきたような感じで、ざわめいていた集団はその人を迎え入れ、一団となって玄関の方に離れていき、そして聞こえなくなりました。

 聞こえなくなってからエレベーターホールの電気が消え、いつもの静けさに戻りました。 ナースステーションに戻ると、2階病棟から「患者が急変したからヘルプに来てくれ」と連絡がありました。夜勤の相方を起こしてヘルプに行きましたが、患者さんはすでに旅立っていたようで、処置の甲斐なく死亡退院されました。 30年以上入院されていた方だったので、以前の入院仲間が迎えに来ていたのかもしれません。

 (編集部より)霊の姿が見えるわけではなく、音だけだというのが興味深い怪談です。病院勤務のプロセスが詳細に書いてあるのも生々しくてすばらしいと感じました。怪談はオチをつけるとわざとらしくなってしまいがちですが、この方の「以前の入院仲間が迎えに来ていたのかもしれない」という想像は、なんとなく暖かく、するっと腑に落ちる気がします。

なにかの中指(匿名希望さん)

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 大学生の頃、夏の暑い時期に友達と西伊豆に行きました。そこは小さな港町で、浜辺があり、民宿が立ち並んでいました。浜辺の脇から小さな歩道を通っていくと、岩壁の先まで行くことができ、そこからは広大な海が望めます。

 僕たちは階段を上った所にある小さな祠にお参りして、自動販売機の前で集合するプチ肝試しをすることにしました。二人一組になり、順にスタートします。肩幅ほどの濡れた階段は足を滑らせそうで、前かがみになってライトで照らしながら上りました。

 しかしその上り方だとなかなか上まで着かないので、少しだけ体を起こしてからライトで先を照らそうとした瞬間、何かにおでこを強く押されてのけぞりました。後ろの子が慌てて支えてくれて事なきを得たのですが、そのまま何もなかったかのようにお参りしてそそくさと自販機の前まで退散しました。

 家に帰って蛾? コウモリ? などと色々考えたのですが、70キロのガタイがいい男をのけ反らせることができるほどの重い生き物が思い浮かびません。ふと中指をおでこに当ててゾッとしました。グッと押さえた時の皮膚が上にずれる感じが、あのときと全く同じだったのです。幽霊は信じませんし、こんな話をしたところで嘘だろうと言われるのがオチなのでほとんど話したことがありません。同じような経験は後にも先にもありません。無事で良かったです。

 (編集部より)思わず読みながら自分でも中指でおでこを押してしまいました。暗闇の向こうで、何かが投稿者さんを拒んだのでしょうか。何より景色の語りが非常に具体的である点が魅力的な怪談です。

鮎の川(犬野肉球さん)

ねとらぼ怖い話特集

 8月13日の、盆入りの頃の話です。

 お墓参りに行く前、当時小学校1年生だった私は、鮎(あゆ)を見に川へ1人で行きました。すると、河原に知らない浴衣のおじいさんがいました。じっとお爺さんを見ていたら、どこか不思議と懐かしいような感じがしたので、近づいてみました。

 「鮎、好きか?」

 おじいさんがそう尋ねてきたので、私は返事をしました。

 「うん。川も好き」

 「川が好きか。そうか」

 そう言うと、私の手を繋ぎ、「さぁ、行こうか」と 向こう岸を目指して川の中に入って行きました。冷たくてとても気持ちよかったです。

 腰まで浸かった頃、兄が迎えに来ました。兄が「何やってんだ! 川から上がれ! 早く!」と怒鳴り、私は驚いて上がろうとしましたが、手をつかんだおじいさんの力は強く、川へ引き込まれました。首まで浸かったころ、おじいさんが「もうすぐだよ」と言うので、必死にもがきましたが、私は流されてしまいました。

 気付いたら私は家にいました。親には全てを正直に話し、兄も見たままを伝えました。しかし、兄には私が勝手に川遊びをしていたと言われました。「違う! どっかのおじいさんが……」と言ったとき、仏壇にある遺影が倒れた音がしました。見に行くと、遺影の顔はさっきのおじいさんでした。

 空爆で1人で死んだからさびしかったのかな……と祖母が言って、みんなでお祈りをしました。

 (編集部より)何より「鮎、好きか?」という問いから始まるのが奇妙で面白いと思いました。亡くなった身内が三途の川の向こうから「まだこっちに来るな!」と言ってくれたおかげで命が助かった、という話はよくありますが、このお話のおじいさんは連れて行こうとする……。生前のおじいさんはどのような人だったのか、非常に気になります。

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