意味がわかると怖い話:「オカダくんへの手紙」(1/2 ページ)
これは、友人のオカダくんの体験談。
普通に読んでいればなんてことないお話。だけどひとたび気づくと、全く違う光景が見えてくる……「意味がわかると怖い話」を紹介する連載です。
「オカダくんへの手紙」
これは、友人のオカダくんの体験談だ。
彼の自宅の郵便受けに、毎月25日になると奇妙な手紙が投函されるという。
切手の貼られていない白い封筒の中に、赤色の折り紙が小さく畳まれて入っている。開くとそこには子どものような崩れた字で「私に会いに来て」とだけ書かれているというのだ。
オカダくんのマンションはオートロックだが、集合ポストで郵便受けは1階にあり、外部の人間も立ち入ることは可能だ。
「もう4カ月続いているんだ」
久しぶりに飲みに誘われた居酒屋で、彼はその手紙を見せてきた。
気味が悪いが、実害がない現状で警察に届けても対応は望めないだろうと彼は言う。マンションの管理会社には「ポストに妙なイタズラをされる」と電話し、巡回を強化すると言われたそうだが、管理人も通いで常駐している訳ではなく、そちらもアテにはならないとため息をついた。
「どう思う? 大学じゃミステリクラブだったんだろ、犯人を推理してくれよ」
冗談めかした口調も、どこか空元気に聞こえる。
「うーん……封筒にも折り紙にも別に特徴はないし。文面は女っぽい感じだけど、昔の彼女とかじゃないの?」
普通の便せんではなく、「折り紙」を選んでいることが差出人の正体のヒントなんじゃないか、と私は振ってみた。だがオカダくんは、頭を掻くばかりだった。
「25日って日付には何か心当たりはないの? 例えば、元カノが君のことを忘れられなくてこういうことをしてて、25日はふたりの何かの記念日だったとか」
「別れた女との記念日なんて覚えてないからなぁ」
そう言ってオカダくんは、半ば困ったように、半ば自身の女性遍歴を誇るように笑った。
その月の25日の夜、オカダくんから電話がかかってきた。
私が、「手紙の主が25日に来ることは分かってるんだから、今月はその日は会社を休んで1日中、郵便受けを見てたら?」と言ったのを真に受けた彼は、有休をとって日付が変わる直前からずっと、エントランスで集合ポストを見張っていたという。
『でも、今日はそれらしいやつは現れなくてさ。日付も変わるからと思って部屋に戻ったら……』
オカダくんの声は震えていた。今度は部屋の玄関の隙間に、先回りするように例の手紙が刺さっていたという。
『もしかしたら、相手は人間じゃないのかもしれない……』
「そんな訳ないじゃん」
彼がことのほか、怯えているので私は明るく言ってみせる。
「キミが見張ってるのに気づいて、郵便受けに入れるのをやめただけじゃないの?」
『じゃあ、犯人はマンションに住んでるやつってことかよ? それはそれでヤバいだろ』
「オートロックのマンションって言っても、住んでる人についていって中に入ることはできるしさ。オカダくんも、ポストは見てても入ってくる人までいちいちチェックはしてないでしょ? ……それとも、相手がこの世のモノじゃないとして、誰か死んだ人に恨まれる覚えでもあるの?」
『……それは、ないけどさ』
話しているうちに落ち着いてきたらしい。来月も様子を見て、手口がエスカレートするようならまた警察に行った方が良いと私が言って、通話は終わった。
その翌月の25日のことだ。仕事が遅くなったオカダくんは、家路を急いでいた。
彼の自宅マンションは大通りから一本入ったところにあるのだが、その、マンションのすぐ前の路地に黒いワンボックスカーが道を塞ぐように停まっていた。
オカダくんは舌打ちして、体を斜めにして車の脇をすり抜けようとする。
その瞬間、車のスライドドアが開いて、オカダくんの体は中に引きずり込まれた。
ドアが閉められ、オカダくんの背後で声がした。
「あの子に会いに行こうね」
それきりオカダくんは失踪した。ご両親が上京してきて尋ね人のビラを配ったり、友人知人に話を聞きに回っていたようだが、彼が見つかったという話は聞こえてこない。
これでオカダくんの話は終わりだ。尻切れトンボだが、現実なんてこんなものだ。
関連記事
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
【追記あり】夫に「油買ってきて」と頼んだのに、手ぶらで帰宅した理由はまさかの…… とんでもないオチに「やめてww」「久しぶりに大爆笑」
-
1歳息子の“はじめての寝落ち”が140万再生 10歳兄のやさしい行動に「なにこの平和でかわいい世界」「最高に癒やされる」と絶賛の声
-
「予言者いた」「先見の明」 大谷翔平選手&真美子さんの結婚を2021年時点で予言(?)している投稿が発掘され話題に
-
北海道内の移動距離を本州と比較したら…… 感覚がバグるマップ画像に「これが北海道」「大きすぎる」
-
生後1カ月の赤ちゃん「ぼく泣かないもんねっ」 うるうるおめめとへの字口が「はぁ〜たまらん!」「ぐぁぁああああっっ」取り乱すほどかわいい
-
「一番イチャイチャしているように見える」 大谷選手が公開した写真でドジャース山本由伸選手の“手つなぎ”?が話題に 「そっちに目が行く」
-
「妻の服を勝手に着て脱げなくなったムキムキ夫とデカワンコ」に爆笑の嵐 シュールすぎる状況が500万表示突破
-
“おしりが5日で変わる”トレーニング! 「明日からやるか」「1日1回だけなら続けられる」と累計3000万再生突破
-
大好きなボールを100個プレゼントされたときのワンコの表情に「放心ww」「引いてない?」 直視できない姿がSNSで話題
-
赤ちゃんが妙に静かだと思ったら…… 思わぬものへの“真剣モード”に笑顔になる人続出「たれたもちもちほっぺたまらん!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- 昭和時代に“無かった物”が写っている……? 細かすぎて伝わらない「未来から来たことがバレた写真」に6万いいね
- 「マジで汚い」「こんなもんです」 辻希美、“大散乱”のリビングと“新”キッチンの差を公開し共感の声集まる
- 双子の赤ちゃん、姉が全力でくしゃみして…… 被害にあった妹の反応に「生後3ヶ月でドリフのコントw」「めちゃどっちもカワイイ」と絶賛の声
- 「よくも病院に連れてきたな……」とにらむ猫、先生が来た瞬間 驚きの変貌に爆笑の声「これがほんとの猫かぶり」
- 急に片耳がたれたワンコ、慌てて病院にいった結果…… 「こんな可愛い診断結果初めて見たよw」「笑っちゃった」と反響
- 「何羽いる?」一見普通の“草むら”、よく見ると……? 思わず絶叫まちがいなしの1枚に「どっさりいるw」「まさに迷彩!」
- 店員に「この子は懐きませんよ」と言われたチンチラ、家に来て3日後…… 人を信じる姿に「愛が伝わったんですね」
- 元SDN48光上せあら、目を離した隙に……子どもが商品を触り“全買取” 「子連れママに厳しすぎないか?」
- 柴犬を子どものように育てた結果、人間みたいな行動をするようになった 何気ない幸せな日常に「完全に家族の一員」「全部が愛くるしい」
- 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
- パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
- “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
- 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
- 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
- 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
- 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
- “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
- 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」